社会

生理をオープンにするかしないかの前に「正しい情報」は知られているか

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「Getty Images」より

 大丸梅田店5階フロアに新たにオープンした「ミチカケ(michi kake)」の売り場従業員が任意で“生理バッジ”をつける試みが、中止となった。

 この売り場では「隠すべきこと」「恥ずかしいこと」とタブー視されてきた女性の性と生理をオープンにし、“月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う”をコンセプトに生理用品や下着、セルフプレジャーグッズや漢方など様々な商品を販売していく。

 その取り組みの一環として、「生理バッジをつけて生理中であることを知らせれば、従業員同士の互いを気遣うコミュニケーションにつながるのでは」という意見が社内で上がり、試験的に生理バッジを導入。

 強制ではなく任意だが、「生理にかかわらず体調の悪い人は気遣えばいい」「セクハラを受けるかも」といった懸念から批判も巻き起こり、大丸はバッジ着用の中止を判断したという。「つけなくてはならない」という同調圧力を心配する声や、「生理バッジよりも生理休暇の取得が大切」という指摘もあった。

 生理も性も、隠すべきでも恥ずべきでもないが、同時に個人のプライバシーである。「隠したほうがいい」と言うことと、「隠さずオープンにしたほうがいい」と言うこと、どちらも個人のプライバシーに踏み込みすぎている。

 たとえば、生理用ナプキンを購入した際に紙袋や黒いビニール袋など“中身が隠れる袋”に入れることが“普通”とされているが、「私は透明なビニール袋でいい」という女性もいれば、「紙袋に包んでもらいたい」と希望する女性もいるだろう。ユニ・チャームの生理用品ブランド「ソフィ」は隠さなくて済むようなデザインのパッケージをデザインし、12月3日から全国で限定発売を開始するが、これは選択肢の幅を広げるものであり、「隠さずオープンにすべき」と強要しているわけではない。

 性も生理も、生物としての自然な現象だ。特別な意味を持たせて隠したり、エッチな扱いをしたりという偏見が、個人の選択を狭めてしまう。オープンにするかどうかは個々の判断であり「どちらがいいか」などと議論すること自体おかしいが、まず偏見や誤解をほどく性教育の学び直しが全世代に必要だろう。

「痛み止め飲まずに生理痛我慢」の誤解

 今月27日放送の『あさイチ』(NHK)の特集は生理についてだった。番組では、産婦人科医の・高尾美穂氏を招き、生理についての「正しい知識」を紹介した。

 そこで紹介された生理についての「正しい知識」はたとえばこうだ。一般的に生理中は睡眠の質が悪くなるため、日中に眠気を感じてしまう。そういった場合は、昼寝をとるなどの対策も有効だ。また鎮痛剤の使い方についても誤解が生じている。

 生理がある・あったはずの女性でも、その体感は千差万別で、他者の体調を思いやれないことは多々ある。生理痛で辛い時に痛み止めを飲むか否かについてゲストの坂下千里子は、痛み止めは飲めば飲むほど効果が薄れると考え、極限になるまで飲むことを我慢したこともあるという。また同じくゲストのLiLiCoも、<(痛み止めは)一切飲まない。痛くてもこれは生きている証拠>と話した。

 しかし高尾氏は「それは誤解」と説いた。「痛み止めを飲み過ぎると効かなくなっちゃう」と懸念する患者の声が多いそうだが、用法用量を守れば効果が薄れる等の心配はないという。

 高尾氏<今の考え方としては、生理は病気じゃないです。でも、生理痛は病気なんです。なので、『困っていることには対策をしよう』というのが私たちからのおすすめにはなっています>

 生理の知識は当事者である女性だけが持っていればいいわけではない。男女が共に暮らしていくためには、男性も生理がどういったものなかのか知っておく必要がある。でなければ相手の体調不良を気遣うことも出来ないからだ。

 番組では生理について誤解している男性からの何気ない一言で女性が傷つくなど、具体的なエピソードも紹介された。しかし女性の側にもまた、生理や性への偏見および知識不足がないわけではない。

 MCの博多華丸・大吉は生理用品を「見たことはもちろんある」けれど、「どうやって開けたらいいか、どうやって使ったらいいかは、わかってるようでわかってないですよ」と率直に話した。すると坂下千里子が「すごい詳しかったら、やだ~、逆に」と苦笑する場面があった。坂下の反応は残念だが、珍しいものでもないだろう。

 番組では、男の子に生理を教える活動をしている医師夫婦のプロジェクト「アストロン」を紹介。アストロンは公立学校の保健の授業で4年生を対象に性教育を教えているという。生理用品の使い方、仕組み、個人差まで具体的に教える。番組では生理について扱うにとどまったが、性教育の範囲はその限りではない。

 男女ともに生理の正しい知識を身に着けること、および性教育を受けることは、自分や他者の体を気遣い、大切に扱うことにつながっていくだろう。今の子供だけにすればいいというものでもなく、生殖に関する簡単な知識しか教わらなかった、あるいはそれすら学ばなかった世代も多い。テレビというマスメディアを使い、性にまつわる行動の誤解や偏見をほどく企画は、何度繰り返し放送しても「やりすぎ」ということはないだろう。

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