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少女誘拐事件を「良かれと思って」「足長おじさんかも」としてしまった『とくダネ!』の問題

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『とくダネ!』公式サイトより

 11月に発生した2件の少女誘拐事件。SNSを通じて知り合った成人男性についていった少女たちへのバッシング、容疑者たちの“善意の人助け”を擁護するネット上には渦巻いている。あろうことかテレビというマスメディアでも、情報番組の司会者がそれに近いコメントをしていた。

 栃木県の伊藤仁土容疑者は、SNSを通じて大阪府に住む小学6年生の女児を自宅に誘い込んだ。伊藤容疑者の自宅にはもうひとり、行方不明になっていた女子中学生もいた。

 埼玉県の阪上裕明容疑者は、Twitterに家出願望を書き込んでいた兵庫県とさいたま市の女子中学生を「勉強するなら養ってあげる」と誘い出し、自身の管理する借家に住まわせていた。どちらも未成年者誘拐の容疑で逮捕されている。

 28日放送の『とくダネ!』(フジテレビ系)では埼玉県の少女誘拐事件について、司会者から「容疑者は善意だったのではないか」とする意見があり、議論となった。

小倉智昭氏「親への連絡はできたわけだよね」

 『とくダネ!』では、阪上容疑者が所持していた借家から中継を決行。レポーターの岸本哲也氏は、近所の人の証言や少女は外出も認められていたことから、<(少女たちは)かなり自由には暮らしていたと思われる>とし、誘拐はしてはいけないと言いつつも、<容疑者はどうも良かれと思ってやっていたニュアンスを感じます>と分析した。

 司会の小倉智昭氏は、少女は逃げようと思えば逃げられる状況であったことから、「誘拐」と断言することに戸惑いをみせていた。

<環境も整えられていて、自由も与えられていて、外出も認めていたということになれば、この中学生が親に連絡をして、どういうところにいて、何をやっているという報告はやろうと思えばできるわけだよね>

 しかし未成年の女児が家出を希望していたとして、自宅に誘い出すことは“人助け”とは呼べない。コメンテーターで国際政治学者の三浦瑠麗氏は、表向きは「救済」と言っても、やはり容疑者の“欲望”であると断罪した。

<男性の側の心理が何なのか>
<「自分の影響下に置きたい」という欲望のほうも、表向きは「救済だ」と言ったとしても、やっぱりそこは何か別のものもあるんですよ>

 たとえ少女が家庭問題などを抱え家出を望んでいたとしても、自宅に匿う行為は不適切である。少女の家庭問題に便乗した支配がそこにないと言えるのか、だ。

社会と断絶した児童はどうなるか

 三浦瑠麗氏のコメントを受けても、小倉智昭氏は容疑者が「欲望から少女をかくまっていた」ことに納得できず、こう反論した。

<ただ、100%男性がそうだとも言い切れない部分があるじゃないですか。「足長おじさん」かもわからないしね。そういう意味ではね、その辺って親がどう判断するのかっていうのかと、あと本人がどういう意識で生活していたのか。同型じゃないんですよ、ここが>

 しかし、社会と断絶した環境に置かれた少女たちには住民票がなく、学校に通うこともできない。少女たちが体調不良を訴えても、手元に保険証がなければ病院での診療は全額自費だ。容疑者はそうなったとき、彼女たちに医療を受けさせることができただろうか。

 昨年公開され大きな話題となった映画『万引き家族』では、多くの社会問題を扱っていた。主人公が虐待を受けていた女児を勝手に引き取り、擬似親子関係を築いていく場面も描かれたが、その生活は破綻し、女児は再び虐待親のもとへ戻ることとなった。「救済」とは、何なのか。

 ゲストの山田秀雄弁護士や伊藤利尋アナウンサーは、未成年の少女らのサポートを本当に善意でしようと思ったのなら、親に連絡すべきだったと話したが、小倉氏はそれにも反論した。

<ただ、家出した少女は「お願いだから家に連絡するのはやめてください」っていう、それなりの彼女にとってはきつい条件があるのかもわからない。その辺は難しいけどね>

 では、家出を望む未成年と出会った場合、大人はどのような対応をすべきなのか。Wezzyでは2017年、家出した未成年への対応について記事にし、『警察専門相談電話』#9110を紹介した。『警察専門相談電話』#9110は、発信すれば地域を管轄する各都道府県の警察総合相談室などの相談窓口に直接つながるようになっている。

 しかし家にも警察にも世話になりたくない、と逃げたがる少年少女もいるだろう。家庭環境の問題から家に帰れず夜間に徘徊する子どもが、“非行児童”として補導されるケースもある。もし事情を詳しく調査されず親元に帰されてしまえば、子どもは社会への信頼を失っていくかもしれない。

 番組でもスペシャルキャスターの古市憲寿氏が、家出をしたい少女が頼れる第三者機関について言及していた。

<家出したい理由もあるわけじゃないですか。もしかしたら家に問題があるかもしれない。今の環境からすごい逃げたいと思っているかもしれない。だからその気持ちも無下に否定するということもできないと思うんですよ。ただこうやって誘拐みたいなケースに発展しちゃうケースもあるので、本当はもっと誰か頼れる第三者みたいな機関があればいいのかもしれないですけどね>

 今回の事件で個人の「善意」の有無を議論し、「逮捕されるなら人助けも出来ない」などと嘆くことは見当違いだろう。本当に困っている子どもを「救済」する「善意」があるなら、適切な支援方法を学び、警察や児童相談所の連携やあり方も含め建設的な議論をしたほうがいい。

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ウェジー 2019.11.28

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