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サンフランシスコで観たLGBTQコミュニティと「トイレは人権」最前線

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トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

 空港から駅に移動し、地上に出ると早速トランス女性とおぼしき人が大声で電話をかけていた。安宿に向かうためにGoogleマップで経路を表示すると、事前に「サンフランシスコはそのエリアを歩かなければ安全だから」と言われていたドンピシャの地域に誘導されていたのだった。

 危険エリアことテンダーロイン地区は小便くさく、バスが来ると「They」バッジ(どのような三人称で呼ばれたいのかを現したもの。theyは性別を問わない呼称)をつけたホームレスも乗ってきて、結局冒頭の彼女とthey氏と私の少なくとも3人のクィアが海のほうへ揺られていった。

 サンフランシスコと言えば、近年家賃がとんでもなく上昇し、ホームレスがどんどん増えていることが問題となっている。薬物依存や精神疾患を抱える人も多いが十分なサポートに繋がれていない。路上でのいさかいや注射器のポイ捨て、夜中に空いている公衆トイレがないことによる野外排泄が多く、夜中のちょっとした移動にも旅行者にはUberを使うことが推奨される。

 でも、家賃が向上したのも元はと言えばUberなどのテック系企業が進出して街全体の物価を釣り上げているからで、私が払うUberへの2000円は状況をむしろ悪化させる。コミュニティへの不安をUberや警察(差別的かつ暴力的である)で解消しようとする街は、あらたな差別や暴力を生み出してしまう。

 テンダーロイン地区はもともとトランスが集まる街としても知られ、50年前にニューヨークで起きたストーンウォールの反乱より前にトランスたちが警察と戦っていた歴史も持つ。病院でまともにみてもらえず4-50歳そこらで死んでしまう路上のトランスたちを対象にした診療サービスが全米で最も初期に始まったのもこのエリアだ。

 かつてハーヴェイ・ミルクが闘った街にはあちこちにレインボーフラッグがはためいているが、ミルクが「犬の糞問題」に取り組んでから40年後、この街は「人間の糞問題」に取り組んでいる。状況は文字通りクソである。

 帰国後、サンフランシスコ市議会ではテンダーロイン地区に24時間の公衆トイレを設けて人員も配置し、そこに使用済みの注射器も廃棄できるようにしたらどうかとの議論をしていた。トイレへのアクセスは基本的人権だ、という議論はよく性別区分ゆえにトイレへのアクセスを制限されたトランスの状況を世に問うために使われるスローガンだが、ここでは路上生活者のための標語でもあった。ちなみに路上生活者の3割はLGBTQという説もあるらしい。

 巨大なレインボーフラッグがはためくカストロ通りで缶バッジのお土産を買い、テンダーロインで活動する仲間からは「警察や資本主義をたたきだせ」というステッカーをもらい、そのどちらもがLGBTQコミュニティなのだと思いながら帰国した。まだ目の前がくらくらしている。

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