キャリア・仕事

お金がないからといって、日払いのバイトや派遣に走ってはいけない

【この記事のキーワード】

「GettyImages」より

生活資金確保のために日払い・週払いの派遣に飛びついてはいけない

 連載第一回第二回では、ブラック企業から紙一枚でやめる方法を公開した。この方法を選択する人の大多数は、今現在働いている会社の中でパワハラや長時間労働が横行していて、すぐに辞めなければ心身に危険が及ぶなどといった状態の人が大多数だろう。

 そうなると、辞めた後に問題になるのが、次の職場に移るまでの生活資金である。一般的に、自分のスキルと報酬がマッチし、働きやすい会社に移るには、3カ月程度かかるといわれている。それだけの貯金があればよいが、貯金ゼロ世帯が増えている時代だ。アルバイトや派遣労働で当面の生活資金を得ながら、転職活動をしなければならないと考える人が大半だろう。

日払いの派遣やバイトは、「経済状況」を見越して求人をしている

 最近は、日払い・週払い可の派遣やアルバイトを募集しているエージェントも多数存在する。だが、こういった募集には安易に手を出してはいけない。

 なぜなら、こういったエージェントの大多数は、あなたの経済状況を見越した上で募集をかけてくるからだ。そのため、求められる仕事に対して、報酬が相場より著しく安いことがほとんどである。また、こういった派遣やアルバイトの大多数は、交通費が無支給。加えて、週20時間以上の労働契約を結ばなければ、社会保険に加入させる義務もない。

 つまり、今まで会社でやっていた仕事とさほど変わらない労働を求められるにもかかわらず、報酬は少なく、社会保険にも加入させてもらえないケースがほとんどなのだ。また、労働条件が曖昧で、仕事を始めてみたら、実際は個人自営業者として働く「委託」「請負」だった場合はさらに大きなリスクを背負うことになる。報酬を支払ってもらえないばかりか、損害賠償を背負うこともありえる。

 こういった悪条件の中で働いて、労働災害に巻き込まれて紛争に発展したら目も当てられない。仮にそういった紛争に巻き込まれないにしても、賃金未払いなどのトラブルに遭遇したら、それこそ生活を詰んでしまう。こういった理由から、日払い・週払いの派遣・パート・アルバイトをしながらの転職活動は、とてもお勧めできないのだ。

生活資金の捻出は「労働基準監督署」「ハローワーク」「地域の役所」でまかなえる

 しかしそうはいっても、貯金ゼロで無職になれば、その日の食事にも困る。

 失職後の生活資金の捻出といえば、まっさきに思い浮かぶのが雇用保険だろう。正社員、契約社員、派遣・パート・アルバイトいった労働形態に関係なく、一定期間以上働くのであれば、雇用保険に強制的に加入させられている。だが、ブラック企業から緊急避難的に身を守るためだったとはいえ、自分から会社を辞めてしまうと、雇用保険の給付が始まるのは、退職から3カ月後である。そのため、雇用保険の給付が始まる3カ月間の生活資金が捻出できず、日払い・週払いのパート・アルバイトや派遣に飛びつくことを選ぶ人が多いのではないだろうか。

 だが待って欲しい。まず、あなたが会社を辞めた理由を冷静に思い出してほしいのだ。長時間残業がかさんでいた場合、以下の条件に合致するなら、自主退職であっても会社から解雇された扱いになり、7日間程度の期間で雇用保険が給付される。

会社都合退職(雇用保険がすぐに給付される)とみなされる条件

  • ・退職前6カ月以内に3カ月連続で45時間以上残業をした場合
  • ・退職前6カ月以内に2カ月の平均残業時間が80時間を超える場合
  • ・退職前6カ月以内に100時間を超える残業をした月がある場合

 このような条件で働いたことがあるなら、会社の所在地を管轄している労働基準監督署に相談するとよい。タイムカードのコピーがあればなおベストだが、なくても相談はできる。上記の条件の過重労働が認められた場合、雇用保険の給付を即時給付に切り替えてくれるだけでなく、未払賃金がある場合は併せて対応してくれる。

 ただ、雇用保険の給付や管轄は、労働基準監督署ではなく、ハローワークの雇用保険適用課が担当している。法律上、ハローワークの雇用保険適用課の担当者は、雇用保険の給付について独断で執行する権限を与えられている。だが、縦割り行政の弊害で、権限に基づいて強制的に雇用保険の給付を行うケースは極めてまれである。そのため、まずは労働基準監督署に相談し、会社都合退職に等しいことを認めてもらい、ハローワークの雇用保険適用課に即時給付を申請するのがベストだ。

 雇用保険の給付金額や給付期間は、雇用保険の加入期間や、労働者の年齢によって異なり、給付期間は90日から330日。支給額は退職する前の給与の4.5割から8割と決まっている。

 あなたが仮に28歳で月収25万円の場合、支給額は日額で5300円前後(月額15万円弱)で、給付期間は3カ月となる。これだけでは転職期間中の資金繰りは厳しいだろうが、後述する住宅確保給付金や、ハローワークが募集している一般教育訓練給付金制度を利用すれば、日払い・週払いの仕事に手を出さなくても、余裕をもって転職活動に臨める。

雇用保険の延長 もしくは毎月10万円の給付 一般教育訓練給付金制度

 以前の記事で、ハローワークの求人票はブラック企業の温床と述べたが、うまく利用すればとてもいい場所でもある。失職した場合にお金をもらいながら再就職を目指す制度は非常に手厚いからだ。

ハローワークの求人にはなぜブラック企業が多いのか

 日本の労働環境は無法地帯と化している。 遵法意識が高い労働環境を提供してくれる企業で働くことは、単に収入の問題だけではなく、生命にすらかかわる…

ウェジー 2019.11.18

 一般教育訓練給付金制度もその一つだ。一般教育訓練給付金制度とは、失職者が新たな知識や技術を身につけて再就職をすることを後押しする制度である。簿記・情報処理・訪問介護など様々な知識習得や資格取得を教育する民間の学校と提携して、受講者に給付金を支給している。雇用保険を受給している人は、受講終了まで給付期間が延長できるというメリットがある。また、雇用保険の加入期間が短いなどの理由で給付金が受給できない人の場合でも、受講中は毎月10万円の給付金を受給できる。

 さらに、受講にかかった学費も還付が受けられる。受講終了後にハローワークに申請すると、最大10万円まで補助金として還付してもらえるのだ。まさに、至れり尽くせりだ。民間の専門学校などを探すのもよいが、ハローワークの窓口にも一般教育訓練給付金制度対応の講座のパンフレットが置いてある。一度、担当者に相談してみるとよい。

 もちろん、本来は失職者のスキルアップを図るための制度であって、転職期間の生活資金捻出のための制度ではないことを念押ししておきたい。しかしながら、社会人になれば、まとまった時間を作って新たなことを勉強できる機会は、そうそうない。良い機会だと前向きにとらえ、これからの仕事に必要なスキルを身につけながら、再就職をめざしてはどうだろうか。

※毎月10万円の給付は、資産や収入が一定以下の条件を満たしているなどの受給条件がある。他に、高度な専門教育を受けた場合に最大144万円まで学費の補助がでる専門実践教育訓練給付金制度があるが、こちらは半年単位での支給となるため、転職期間中の生活費を捻出する方法としては、あまり実用的ではない。

生活困窮者自立支援制度をフルに利用して家賃をまかなう

 失職してもっとも困ることは、家賃の支払いではないだろうか。食費やその他の生活費はまだ切り詰められるが、家賃だけは固定で出ていってしまう。しかも、大多数の人は、月々の生活費の中で家賃がもっとも大きなパーセンテージを占めているはずだ。そのため、ブラック企業から緊急避難的に辞めた後、「このままではアパートを追い出されてしまう」と焦る人も多いはずだ。

 まずは雇用保険の給付を確保することと、一般教育訓練給付金を利用することを優先すべきだが、併せて生活困窮者自立支援制度のプログラムである住宅確保給付金の申請を行うとよい。

 生活困窮者自立支援制度とは、失職などで住宅を失うか、もしくは失う可能性がある人を支援する制度である。具体的には、仕事を辞めて2年以内の65歳未満で賃貸住宅に居住している人が、最大3カ月の家賃を補助してもらえる制度である。以下に受給できる要件をまとめる。

住宅確保給付金の受給条件

  • ・退職から2年以内、65歳未満
  • ・ハローワークに求職を申し込み、求職活動を行っている
  • ・申請者と同居する家族の収入合計・資産の合計が一定水準以下

※世帯収入の資産や上限については自治体に要確認

 大事なことは、住宅確保給付金を受給するには、ハローワークに求職を申し込んでいることが条件ということだ。まずはハローワークで、求職申し込みのカードを作ってから住民票をおいている自治体の役所に相談しにいくとよい。一般的には、生活支援課という窓口で受け付けているが、自治体によって受付窓口の名称は決まっていない。ちなみに東京都の各自治体の受付窓口はこちらから確認できる。

 もしわからないようなら、最寄りの役所の窓口で生活困窮者自立支援制度について相談したいと尋ねれば、窓口を案内してくれるはずだ。

(監修/山岸純)
(執筆/松沢直樹)

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。