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「#KuToo」は女性優遇でもハイヒール禁止でも男性差別でもない

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石川優実さんTwitterより

 12月2日、その年の話題になった言葉に贈られる「2019ユーキャン新語・流行語大賞」の表彰式が都内で行われ、年間大賞をラグビー日本代表のスローガン「ONE TEAM」が受賞した。

 トップテンには「計画運休」「軽減税率」「スマイリングシンデレラ/しぶこ」「タピる」「#KuToo」「○○ペイ」「免許返納」「闇営業」「令和」が選出され、表彰式では受賞者たちが登壇して思いを述べた。その中で特に印象深かったのは、「#KuToo」発起人で受賞者の石川優実さんのスピーチだ。

「#KuToo」への誤解

 「#KuToo」とは、「靴」「苦痛」「#MeToo」をかけ合わせた造語。ホテルや葬儀場などの職種で、女性だけパンプス着用を義務付けられて靴擦れや腰痛など健康を損なわれることをなくし、男女同じフラットな靴を履ける(ハイヒールを禁止するわけではない)よう改善を求めている運動だ。

 石川優実さんが今年1月、Twitterで「私はいつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたいと思ってる」という思いをツイートしたところ、多くの女性たちから共感の声と「いいね!」を集めた。職場において女性のみヒールやパンプスを強いる服装規定をなくし、男女によって選択肢に違いがある状況を正す「#KuToo」のムーブメントはネットを中心に話題となった。

 今年6月、石川さんは約1万8800万筆の署名とともに「職場における女性に対するヒール・パンプスの着用指示に関する要望書」を厚生労働省へ提出。さらに10月には、石川さんが英BBCが選ぶ世界の人々に影響を与えた女性を選ぶ今年の「100人の女性」に選出されている。

 厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会はハラスメントに関する企業向けの指針を審議中だが、10月21日の審議会で出された「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上高ずべき措置等に関する指針の素案」には、パンプス強制など服装規定についての記載がなかった。石川さんら「女性へのパンプス・ヒール強制を考える会」は表彰式の翌3日、厚労省に素案の改善について要望書を提出。その後の記者会見で、石川さんは「足の痛い思いをしている労働者のことを考えるなら、指針に入れるべきだ」と訴えている。

 「#KuToo」は流行語にノミネートされるほどネット上で大きなムーブメントとなったと言えるが、ネットユーザーであってもこうしたトレンドに興味がなく「聞いたことがない」「知らない」という人もまだ多いだろう。同時に、残念ながら「#KuToo」の目的を誤解して反発する声も少なからずある。男性からも、女性からもだ。

 たとえば「ヒールを履きたい人の邪魔をしないで」という声。「#KuToo」は女性を代表して「パンプスを履かせるな!」と主張しているものではなく、選択の自由を求めるものだが、正確に伝わっていない部分もあるようだ。

 また、なかには「“女尊男卑”の世の中になることが目的なのか」という極端な批判意見も見られるが、「#KuToo」は男性を責めているわけでも、女性に男性より強い特権を与えろと要求しているわけでもない。性別によって異なる職務上の制限がかかり、健康さえ損なう現状を変えようという運動だ。男女の選択肢が等しくなることを“女尊男卑”とは呼ばない。

 男性がスーツやネクタイの着用が強いられる一方で、女性はオフィスカジュアルが許容されているという職場もある。そのために困っている男性もいるだろうし、男女の別なく勤務中の服装のカジュアル化が認められてもいいはずだ。その苦痛を改善すべく当事者が発信することも可能だろう。ただし、それは足元の平等についての話をしている「#KuToo」とはまた別の問題提起や議論になる。

 「#KuToo」運動の本質が広く伝わるよう、石川さんの表彰式でのスピーチを書き起こす。

「優遇してほしいわけではありません」

 「2019ユーキャン新語・流行語大賞」の表彰式に臨んだ石川さんは、ドレス姿に黒のレースアップシューズを合わせた装いで登場。約3分間のスピーチに登壇し、改めて「#KuToo」の目的や思いについて言葉を尽くした。

 こんばんは。「#KuToo」の署名の発信者、石川優実と申します。
 本日はこのような賞をいただき、本当に嬉しく思います。(「#KuToo」は)インターネットから始まった言葉なので、少しこの運動についてお話しをさせてください。

 まず、この「#KuToo」は私がつくった言葉ではありません。運動が進んでいく中で、センスのある賛同中のひとりの方が作ってくださった言葉です。
 昨年ノミネートした「#MeToo」の受賞者が、声をあげた全ての人々だったように、この「#KuToo」の受賞者も私個人ではなく、アクションを起こしてくださった全ての方々が受賞者だと思っています。

 ひとつよく勘違いされるんですけれど、この運動はヒールの否定運動ではありません。職場で、女性のみにヒールやパンプスを義務づけたり、マナーだとする風潮に対して異を唱える運動です。ヒールが好きな方は、ぜひ引き続き履いてください。

 そしてもうひとつ、この運動は、女性も男性と同じ靴を履いて仕事をすることを許してもらうための運動ではありません。女性も、同じ職場ならば、男性と同じ靴を履いて仕事をする権利があるということをお知らせする運動です。同じ労働者ならば、当然の権利のはずです。今まで、それに気が付くことができなかっただけだと思います。

 (女性を)優遇してほしいわけではありません。同じ労働環境、同じ労働条件で仕事にチャレンジする機会をくださいという運動です。女性はすぐに仕事を辞めるとか、女性は能力や体力がないとか、それらはまず、ヒールのあるパンプスのように女性のみに負担があるものをなくし、すべてフラットにした状態で判断してください。話はそれからだと思います。

 ヒールのある靴を履いて足を痛め、仕事を諦めざるを得なかった人たちがいます。就職活動ができなかった人たちもいます。始めからその仕事を選ぶことを諦めた人たちもいます。靴を履くことを止めた後も足の痛みと戦っている人もいます。そして、それらの人々はみんな女性だったということをなかったことにしないでください。こんな運動をしなくて済むような社会になることを願っています。

 そして最後に、この運動に対して、バッシングも含めてアクションしてくださったすべての方々に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

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