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「こういう女は嫌われる!」女同士の対立を煽るコンテンツの違和感

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日テレ公式@宣伝部のTwitterより

 「女の敵は女」だとして、女性同士の争いを見世物にするコンテンツは、人気の高い娯楽のようだ。今月2日に放送された特別番組『女が女に怒る夜 令和元年愚痴納めSP』(日本テレビ系)も、好評を得ているからこそ不定期ながら何度も制作・放送されているのだろう。

 『女が女に怒る夜』は、スタジオに集まった女性タレントたちが、自分の嫌いなタイプの女性に対して愚痴を言い合いという番組で、女性陣が不満を爆発させている様子を楽しむ。ゲストの男性タレントとMCの上田晋也が時折口を挟みつつ、彼女たちの愚痴を傍観するという内容だ。

 こういったコンテンツは、「女の敵は女」説を補強し再生産する。女性には「いるいる、こういう女!」と共感を呼び、男性には「女って怖い」と嘲笑のネタを与える。ただの娯楽といえばそれまでなのだが、面白いと手放しに享受してよいものなのだろうか。番組を振り返りながら、考えてみたい。

「女性」をステレオタイプに分類

 番組で取り上げた嫌いな女のタイプのひとつが、「マイペースすぎる女」。いとうあさこは、マイペースな女性の中でも、「電車にゆっくり乗る女」が嫌いだといい、理由は、焦っていないことをアピールしているからだそうだ。MEGUMIは「野良猫としゃべる女」が苦手だという。

 また若槻千夏は、「#で彼氏の存在を匂わす女」が嫌い。「#で彼氏の存在を匂わす女」の例としては、生姜焼きの写真をSNSにアップし「#今日はリクエストに応えて豚の生姜焼き」とつける、コーディネートを紹介する写真に「#今日はTシャツを借りちゃった」とつける、などがあるという。

 その他にも、「自分だけ盛れるアプリで撮影する女」「お金をかけていないアピールをする女」が槍玉に上がった。男性に好かれようとしていてムカつく、という理由で、「男性にねっとりと触る女」「男女の飲み会でサラダを取り分けた女を不必要に褒める女」「スプーンを全部口に入れる女」などが、嫌いなタイプの女として紹介された。

 いとうあさこ、MEGUMI、若槻千夏、大久保佳代子ら出演者は、どんな事例にも「わかる〜」と頷く役回り。唯一、田中みな実だけ「女から嫌われる女」という立ち位置で登場していた。

 田中が、化粧品や洋服に敬意を払い「この子」と表現すると言うと、周囲からは「呼ばねーよ」「金払って買ってんだろ」と怒号が飛ぶ。しかし、そんな田中に上田晋也やゲストの山田裕貴、清原翔、眞栄田郷敦はメロメロであり、それに対しても田中以外の女性陣が、「騙されるな」「しっかりしろ」と嫉妬交じりに怒るのであった。

 実に古典的なやり取りが繰り広げられていたように思う。しかし実際のところ田中みな実が女性から嫌われているかといえば、そうではないだろう。田中みな実から「あざとい」とか「ぶりっ子」のレッテルはすでに剥がれており、現在の彼女は多くの女性にとって、豊富な美容の知識と実践から「憧れの美しいお姉さん」だ。また、重い恋愛観と真面目な仕事観が混在し揺れ動くさまが「共感」を呼んでもいる。

 つまり今の田中みな実を「女に嫌われる女」のポジションに置くのは違和感が強く、時代遅れでさえある。

 また、こうした「女vs女」コンテンツは嘲笑まじりに消費可能だが、男性間の憎悪や嫉妬心はそうはいかない。重厚な人間ドラマ……と評されるような映画やテレビドラマで男同士の確執が描かれることはあるが、バラエティで男同士の軽薄なバトルを見る機会はほとんどないのではないか。男性タレントは常に「女の小競り合いを眺める立ち位置」にいる。女とはこう、男とはこう、というイメージをテレビが再生産していては、多様性を認め合える社会の実現は夢のまた夢だろう。

セクハラ被害をモテ自慢と解釈するなら…

 何も、「女同士もっと仲良くしたほうがいい」なんて言うわけではない。女も男も関係なく、価値観の違いや分かり合えなさはあるものだ。嫌いな相手がいるのはごく自然なことである。非常識な女性がいるのも当たり前だし、相手にとっては出演女性たちの方が「意地悪な女」である可能性もある。誰でも嫌なところをいっぱい持っているもので、人間は多面的。上辺の付き合いはほどほどに、信頼できる相手と仲良くすれば別にいいだろう。それを「こういう女は嫌われる!」というやり方で見せるのがおかしい、という話だ。

 出演者たちもあくまで番組の趣旨に沿って、演出意図を汲んだ話をしているのだろう。彼女たちはテレビのプロであり、本音をいちいち披露しているとは考えにくい。けれどもう少し「それは違うのでは」といった異論、そこからの議論があったっていい。

 たとえばセクハラ被害の相談をモテ自慢と解釈するエピソードは、誰も違和感を覚えなかったのか不思議だった。

 「男性に口説かれて困っている」と相談してくる女性が苦手だと話したのは、ミスiD2019で詩人・ナレーターの髙橋あやな。友達から「おじさんにしつこく口説かれている」と相談を受けたことがあり、おじさんから届いたLINEを見せられたところ確かに「地獄絵図」のようだったというが、その友達は自分がおじさんに送った返信を髙橋には見せなかった。そのことから友達はおじさんに可愛く返信をしているのだろうと推測し、「困っている」と言いながらも結局“モテ自慢”をしたいだけだと結論付けたという。

 その女性が実際にはどう捉えていたのかわからないが、このエピソードはただでさえ複雑な「好意」と「セクハラ」の境界線問題をさらに混乱させる。深刻な苦痛を受けているセクハラ被害者が悩みを打ち明けにくくなり、より追い詰められてしまうことも危惧されるし、また「セクハラをされても女は嬉しがっている」と誤解を与えもするだろう。

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