暴力を受けたのはあなたが悪いからじゃない、私たちは誰にも支配されない。DV・虐待・性暴力の被害者たちがシュプレヒコールを上げる「むらさきロード」

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11月3日に東京・表参道で行われた「むらさきロード」パレードの様子

 11月3日、東京・表参道の街中で、DVや虐待、性暴力の被害者たちが社会に思いを届けるパレード「あるこうよ むらさきロード2019」(以下、むらさきロード)が開催された。

 むらさきロードは2009年から毎年開催しており、今年で11回目を迎える。この日も、DV(ドメスティック・バイオレンス)や虐待、性暴力被害の当事者や支援者、賛同者など男女約150人が参加した。

 本記事では、その様子を一部レポートする。

サバイバーの声を社会に伝えるパレード

 「むらさきロードには女性や子どもの被害の声を社会に伝える、なかったことにされないようにするという意味があります」と、実行委員長の波多野律子さんは話す。

 むらさきロードを始めたのは、被害を受けて生き延びてきた人=サバイバーたちに、仲間がいる、ひとりじゃないという実感を持ってもらった上で、自分の思いについて声をあげ、非暴力を訴えられるような機会や場が必要だと考えたからという。

 参加者には、深刻な被害体験を持つサバイバーもいる。ただし、波多野さんたちは、被害者をエンパワメントするためにも、なるべく楽しい雰囲気で開催することを心がけているそうだ。

 この日も、オープニングイベントでスタッフたちによる「ブレイク・ザ・チェーン」というダンスが披露されたり、参加者が自由に利用できるアロママッサージコーナーが設けられたりと、気軽に参加できるような工夫がされていた。

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華やかな仮想グッズで気分を盛り上げる

 パレードでは、参加者たちが紫やオレンジを基調としたグッズで仮装をして街を歩く。パレードの名前に「むらさき」を冠しているのは、「女性への暴力根絶」の象徴であるパープルリボンに由来しているからだ。また、紫とともにオレンジが使われているのは、「児童虐待防止」の象徴がオレンジリボンだからという。

 参加者が仮装をするのは、パレードに参加していることが知られると危ない(加害者から身を隠さなければならない)被害の当事者もいるので、安心して声をあげられるように環境を整えるためだという。仮装や特殊メイクを施した後は、写真撮影をして楽しむ参加者の姿も見られた。

 パレードは東京・渋谷区表参道の「東京ウィメンズプラザ」前からスタートし、表参道から原宿方面へ、約1時間ほどかけて行進した。

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声を挙げながら行進する

「『お前のためだ』は愛なのか?」「いや、暴力だ!」
「体罰・暴言はしつけじゃない!」
「抵抗しないのは、合意しているからじゃない!」

 女性や子どもへの非暴力を訴えるシュプレヒコールのほか、ガンビアやセネガルの太鼓や琉球太鼓による演奏で、パレードは賑やかに行われた。

 沿道からは外国人を中心に好意的に写真撮影をしたり、手を振ったりして応援する人の様子が見られた。

 一方で、不思議そうにパレードを眺める人の姿も印象に残っている。
 
 この取材の前に、筆者は同世代(20代後半)の友人女性たちに「#MeToo運動を知っている?」と聞いてみた。すると、6人中4人から「知らない」という答えが返ってきた。パレードを不思議そうに眺めていた人の中には、むらさきロードのような活動も、「#MeToo」も、全く知らない人もいたかもしれない。

 だからこそ、こうした被害や性差別が存在することを知らない人たちへ、地道に伝えていく必要があるのではないかと感じた瞬間であった。

暴力を受けた、あなたは悪くない

 パレードの後の交流会では、スタッフや参加者からの語りの場が設けられた。

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「むらさきロード」実行委員の須藤延恵さん

 実行委員の須藤延恵さんからは、「女性や子どもへの暴力、DVやセクハラなどは個人の問題ではなく社会の問題です。みんなと繋がっていきたい」という挨拶があった。

 実行委員の松本和子さんは、今年のパレードを総括し、「助けを求められていないDV・虐待の被害者はまだまだ多くいると思っています。パレードで歩いてみて興味を持ってくれたり応援してくれたりした人もいましたが、関心の薄さを感じました。社会を変えていくためには日本人の無関心を変えていかなくてはいけないと感じています」と話した。

 また、来年についても「一人ひとりが集まると大きなうねりを紡ぎだします。今年は例年より多くの人が集まり、若い人の参加もあり日本には希望があると感じました。来年は今年の参加者が一人ずつ連れてきて、倍の参加者でパレードを歩きたいです」との前向きな抱負が語られた。

 交流会では、シンガーソングライターの志万田さをりさんによる歌とギターの演奏もあった。

 志万田さんの曲には、「あなたは悪くない」というメッセージが込められており、会場には涙を流す参加者の姿も見られた。被害を受けた側には落ち度はなく悪いのは加害者の方なのだが、被害者は第三者から「あなたがこうしないのが悪かった」と言われたり、本人が「私が悪かったんだ」と思い込んで自分を責めてしまったりすることはよくあることだという。そうして何度も傷ついてきた被害者に「あなたは悪くない」とメッセージを送ることは、大きな意味のあることだと感じた。

参加した女子生徒「同世代が言うことで自分ごとのように感じてもらえる」

 むらさきロード参加者の一人で、都内の高校に通う女子生徒に話を聞いた。

――むらさきロードに参加した理由を教えてください。

「元々男女平等の問題が気になっていましたが、母がむらさきロードのスタッフであったことと、野田市のDV・虐待事件(※)をきっかけに、何もせずにはいられないという気持ちになりました。
 中学生の頃、友達カップルの間でデートDVがありました。男子から女子へのデートDVだったのですが、私は『早く別れた方がいいよ』と友達に声をかけつつも、それが適切な対応なのかわからなかったんです。子どもは大人に正しいことを言われても『大人の言うことだから子どもの気持ちを理解しているわけではない』と思ってしまうこともありますが、同世代同士で問題提起をすると、自分ごとのように感じてもらえると思うので、同世代の啓発のためにも活動をしています」

(※)野田市DV・虐待事件=2019年1月、千葉県野田市の小学四年生の栗原心愛さん(当時10歳)が、父親と母親から暴行を受けて虐待死した事件。心愛さんは小学校のアンケートで父親からの暴力を訴えており、児童相談所に一時保護されていたがのちに自宅に帰され、事件が起こった。事件後、母親は夫からDV被害を受けていたことが判明している。父親は傷害致死罪と傷害罪で逮捕された。また、母親は夫の暴力を制止しなかったなどの傷害ほう助罪に問われ、千葉地裁は6月、母親に懲役2年6カ月、保護観察付き執行猶予5年の判決を言い渡している。

――「むらさきロード」のパレードを通して、どんなことを伝えたいですか?

「被害者を責めないでほしいなと思います。野田の虐待事件では、加害者である母親もまたDVの被害者でもありました。ニュースを見る時は、事件の本質を考えることが重要だと思うようになりました。
 また、日本では『泣かないで強くなれ』という空気が強いですが、辛ければ泣いてもいいと私は思います。助けを求めた時、もし一か所で助けてもらえなくても、他にも手を差し伸べてくれる場所はあります」

――同世代へのメッセージはありますか?

「学校の友人にむらさきロードの活動に参加していることを話しても、『そういう活動をしていてすごいね』で終わってしまって、内容に興味を持ってもらえないことは残念です。友人の中には通学中に痴漢被害に遭っている人もいるのですが、『うざい』『気持ち悪い』で終わってしまっているんです。そこで、私が痴漢抑止バッジの話をすると、痴漢は犯罪なんだと気づいてくれます。
 また、都立高校の入試で男女別に募集が行われていて、同じ点数でも男女で合否が変わってしまうことにも問題意識を持っています。私の世代だからこそ気づく問題を伝えていきたいと思います」

 取材を通して、むらさきロードは暴力に対して声をあげるイベントでありながら、辛い体験をしてきた被害者たちが安心し、ともに明るい気持ちになって楽しむことのできる場所でもあると感じた。

 むらさきロードは2020年も開催を予定している。

 この記事を読んでいるあなたが、もし一人で悩んでいて、似た体験をした人と一緒に声をあげたいと思うなら、ぜひ参加を検討してみてほしい。

 性暴力の問題を相談する際には、第三者の悪意のない言葉に傷つき、二次被害を被ってしまうケースもある。同じ体験をした人が集まって、自分の気持ちをわかってもらえる、安心していられるという空間は、きっとあなたの気持ちを楽にしてくれるはずだ。

〇「むらさきロード」実行委員会
公式Twitter<@purpleroadjapan
公式Facebook<@purpleroadjapan

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