2020大統領選:候補者最前線〜人種・ジェンダー・性的指向

文=堂本かおる
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「オバマの副大統領」ジョー・バイデン

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 ジョー・バイデン元副大統領はの支持層は圧倒的に黒人だ。 理由は、「オバマ大統領」への思慕と信頼だ。オバマ大統領の「ブラザー(親友)」として8年を共にし、明るく外交的な人柄で有権者を魅了したバイデンは、今もその人気を維持しているのである。加えて上院議員、副大統領としての長年の経験がある。トランプ政権の不安定さに疲れた人々が、若く未知数な候補者よりも、安定のバイデンを支持しているのだ。

「プログレッシブ」バーニー・サンダース

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バーニー・サンダース

 中道のバイデンでは満足できない層は、極度に左寄りでプログレッシブなバーニー・サンダース、もしくはエリザベス・ウォーレンを支持している。アメリカの最も重要な問題である医療保険を、ついに皆保険制に変えようとしている候補者たちだ。

 ただし、バイデン(77)、サンダース(78)には「高齢」の不安がある。仮にどちらかが当選すると、大統領就任時にすでに78, 79歳であり、そこから4年もしくは8年の任期となる。サンダースは先日、軽い心臓発作を起こしている。バイデンはディベート中に言葉を失う、もしくは言い間違えることがしばしばあり、実際の原因は不明ながら、高齢によるものではないかと囁かれている。

「心身共にシャープ」エリザベス・ウォーレン

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エリザベス・ウォーレン

 この2人に比べるとエリザベス・ウォーレン(70)は身体的にも精神的にも極めて「シャープ」であり、年齢による不安は一切見られない。ただし、前回の大統領選でのヒラリーへの有権者の態度で明らかになったミソジニー(女性嫌悪)が懸念される。

「アメリカの新星」ピート・ブティジェッジ

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ピート・ブーティジェッジ

 ピート・ブティジェッジの躍進は驚くべきものといえる。インディアナ州の小都市サウスベンドの市長であり、国政経験はない。37歳と非常に若く、オープンリー・ゲイの同性婚者だ。

 このブティジェッジが今、全米では第4位、アイオワ州に限ると首位の支持率を得ている。

 愛称ピート市長がどれほど頭脳明晰かつ落ち着いた人物であるかはインタビューやディベートを見ればたちどころに分かる。ハーヴァード大学出身、極めて優秀な学生に与えられるローズ奨学制度によって英国のオックスフォード大学院に留学している。7言語を話し、本来は文学者になりたかったと言うが、弱冠30歳で市長となって斜陽した都市を立て直し、兵役もこなしている。この経歴を知るだけで常人ではないことは十分に分かる。

 ちなみにアイヴィーリーグなど有名一流大学出身であることは、単なる肩書きではない。一国の大統領となり、国際舞台でも牽引役として活動するには政治能力や人格だけでなく、人並み以上の頭脳がまず必要となる。今回の出馬者の中ではコーリー・ブッカー(上院議員)もローズ奨学生だが、同じ選挙で2人のローズ奨学生が競い合うのはさすがに異例のことだ。

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コーリー・ブッカー

 ただし、超高学歴は有権者の反感を買うケースもある。ラストベルトと呼ばれる中西部の寂れた工業都市で苦労している労働者や農業従事者の中には「東海岸のエスタブリッシュメントには自分たちのことは理解できない」と感じる人々がいる。国土面積の広さに基づくライフスタイルや文化、受けられる教育の違いが非常に大きく、相互理解が難しい面がアメリカにはあるのである。

 ブティジェッジは他にも大きな問題を抱えている。アメリカにはキリスト教に基づくアンチ・ゲイが多く存在する。同性婚はオバマ政権時代に全州で合法となったが、今は信仰の自由を理由に「ケーキ屋がゲイにウエディング・ケーキを売らない」といった抗議が為されている。そうした人々は当然だが、ブティジェッジには投票しない。今以上に支持率が上がれば、ブティジェッジには警護が必要になってくると思われる。

 また、ブティジェッジは市長として黒人市民との間に問題を抱えており、世論調査でも黒人有権者からの指示はほぼゼロに近い。

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