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アナログレコードは“デジタル”な若者にも人気、じわじわブームも定着の予感?

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「GettyImages」より

 サブスクリプションの音楽ストリーミングサービスが主流化し、CD不況が叫ばれる昨今だが、CDよりも以前の主要メディアであったアナログレコードが今、再注目されている。

 1976年には約2億枚あったとされる国内のレコード生産数は、CDなどの後発メディアの台頭に押され、減少の一途を辿ってきた。日本レコード協会によれば、2009年には約10万枚にまで落ち込んでいたとのことだが、そこからは徐々に数字をV字回復させており、2017年には約106万枚を記録。16年ぶりとなる生産数100万枚超えを果たしたという。

 レコードにまつわる新たな動きも出てきている。CDショップチェーンのタワーレコードは今年3月、主たる商品をレコードからCDに変えて以来、およそ初めてとなるレコード専門店「TOWER VINYL」(タワー・ヴァイナル)をタワーレコード新宿店の10階にオープンさせた。同店では“最新”のアナログレコードも販売されている。新曲をリリースするメディアとして、CDではなくレコードを選ぶアーティストも増えているのだ。

 こうしたレコードブームを象徴するように、今年10月にはクラウドファンディングサービス「Kickstarter」の米国サイトにて、「Phonocut」(価格は日本円で約12万円)というホーム・ビニール・レコーダーを生産・販売するプロジェクトが登場。これは自宅でレコードのカッティングができる機械で、CD音源、デジタル音源、自身の演奏などを自由にアナログレコード化できるという代物。目標額を大幅に上回ってプロジェクトは成功し、話題を集めた。

――今や、さまざまな音楽配信サービスが展開され、気軽に音楽を楽しめる環境が整備されている。それにもかかわらず、昔からのレコードファンである中高年ばかりでなく、若者たちの間にもレコード人気は浸透しつつある。その人気の秘密は何か。

 レコードのオンラインショッピングモール「SOUND FINDER」を運営するマッチファインダーの代表取締役であり、自身も屈指のレコードマニアとして知られる新川宰久氏に、レコードブームについて話を聞いた。

新川 宰久(しんかわ・ただひさ)
株式会社マッチファインダー代表取締役。早稲田大学教育学部卒業後、数々の企業でサラリーマンとして働き、2005年に独立。株式会社マッチファインダーの代表取締役として、日本初となるアナログレコードショップの集合インターネットショッピングモール「SOUND FINDER」や、阪急メンズ東京7階のレコード&オーディオショップ「ギンザレコード」を手掛けるなど、精力的に活動している。 「SOUND FINDER」

デジタル・ネイティブの若者も夢中にさせるレコードの魅力

 阪急メンズ東京7階のレコード&オーディオショップ「ギンザレコード」も手掛けている新川氏は、店頭を訪れる人々と接するなかで、若い世代のレコードファンが増えていることを実感しているという。

「若い世代に関して言えば、自分の好きなアーティストがレコードをリリースしたことをきっかけに興味を持ったという方が少なくありません。なかには、レコードプレーヤーも持っていないのに、とりあえずレコードを買ってしまったという方もいらっしゃいました。『レコードってどうやって聞いたらいいんですか?』と、店頭で尋ねられるケースも増えています」(新川氏)

 デジタル・ネイティブ世代にもレコードを手に取る人々が増えているのは、なぜなのだろうか。

「レコードは、トータルアートだと言えます。音楽を聞くことはもちろん、ジャケットのグラフィックを楽しんだり、付随しているライナーノーツを読んだりという要素がとても大きいんですね。また、五感で楽しめるというのも一つのポイントだと思います。手に取ったときの匂いや触覚など、すべての感覚を使って楽しむものなのです。レコードは単純に音を聞くというだけではなく、じっくりと時間をかけて、しっかり向き合いながら音楽を楽しめるところが大きな魅力でしょう。

 『Apple music』や『Spotify』などの音楽配信サービス、『YouTube』の動画サービスなどは、音楽を聞くものとして確かに便利です。私も『Apple music』を使っていますが、私自身のスタンスとしては、CDショップにある試聴機のように利用しています。そこで試し聞きをして、気にいったものをレコードで購入するのです。お客様と実際に話していても、同じように音楽と付き合っている方が増えているという印象です」(新川氏)

人気のあるレコードジャンルは「シティ・ポップ」

 レコード販売の現場を知る新川氏に、人気のレコードのジャンルを尋ねたところ、意外なことに「歌謡曲」との答えが返ってきた。

「山下達郎の『For you』(1982年)や、竹内まりやの『Plastic love』(1984年)といった、70~80年代に流行った歌謡曲(シティ・ポップ)の需要が増していますね。シティ・ポップブームの当初、歌謡曲のレコードを探していたのは海外のお客様でした。そのきっかけは『YouTube』にあったようです。
 『YouTube』には、自動で動画を再生してくれる機能がありますよね。そこでは、海外の音楽に混ざって、日本の音楽も流れています。そこで日本の歌謡曲に触れた海外の方々が『面白い』といって当時のレコードを買い求めるようになり、それに煽られる形で、日本の方々もシティ・ポップと呼ばれるジャンルもブームになり始めたようです」(新川氏)

 最後に、音楽を巡る環境が急速に変化しているなかで、レコードはこれからどういった役割を果たしていくのか。新川氏の考えを伺った。

「音楽を聞くものとしてのレコードは、CDなどの他のメディアに比べてかさばりますし、邪魔だと思われても仕方がありません。ただし、物としての魅力も大きいですし、レコードで聞く音楽には、CDやストリーミングなどとは違った味があります。

 私の感覚では、これまではレコードを売りたいメーカー側がブームを主導してきたという印象がありました。ですが今は、ユーザー側がレコードを聴く環境を楽しみ始めているという実感があります。これからは、『レコード』が趣味のジャンルとしてさらに普及し、定着していくのではないでしょうか」(新川氏)
 
 CD全盛の平成に廃れたと思われたアナログレコードだが、他のメディアにはない独自の魅力が再評価されつつある。手軽に音楽に触れられる配信サービスはこれからも普及するだろうが、その一方でアナログレコードに魅了される人もまた、増えていくのだろう。

(文・取材=後藤拓也[A4studio])

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