セブンは残業代未払いに対応も…なぜ未払賃金には請求期間が設けられているのか

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「Getty Images」より

 コンビニ大手のセブン‐イレブン・ジャパンは12月10日、最短7年間最長40年間にも渡り、従業員に対する未払賃金がおよそ4億9000万円にも上っていたことを発表した。

 今年9月に労基署から、時間給で働くバイトやパート従業員が休まずに出勤した場合などに払う「精勤手当」、職務の責任に対して払う「職責手当」から算出する残業手当の計算式が、労働基準法で定められたものと異なっていると指摘を受けたことが発覚の経緯である。

 セブン‐イレブン・ジャパンは対象者に未払賃金を支払う方針を示しているが、大手企業による悪質かつ大胆な今回の事件を鑑みると、日本企業の未払賃金問題の根深さが伺える。

 未払賃金といえば、厚生労働省が10月に行った発表に留意する必要がある。それは、従業員が企業に未払賃金を請求できる期間を現行の2年から3年に延長する検討に入ったというもの。企業側の負担を考慮しつつ、将来的には5年への延長を視野に入れ、段階的に延長していくようだ。

 厚生労働省によると、労働基準監督署が平成30年に賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った数は1768。この数字は10年前の平成20年(1553企業)よりも増加している。

 しかしそもそも、労働に応じた賃金は払われてしかるべきもの。なぜ未払賃金には請求期間が設けられているのだろうか。請求期間を5年にしない理由も「企業側の負担に配慮する」とされており、労働者側にとっては理不尽に感じるだろう。労働問題に精通する渡辺輝人弁護士に話を伺った。

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渡辺 輝人(わたなべ・てるひと)/弁護士
日本労働弁護団常任幹事。過労死問題や残業代請求など労働時間関係の労働問題に取り組む。著作に『残業代請求の理論と実務』(2018年 旬報社)など。

労働者を守っていない労働基準法

 未払賃金にはなぜ個別の請求期限(消滅時効)が設けられているのか。そこには労働基準法の特例がある。

渡辺弁護士「これまで民法の“債権”の消滅時効は原則10年とされていましたが、医師等の報酬債権が3年、弁護士の報酬債権が2年、労働者の賃金請求権が1年など、中には消滅時効の短い“短期消滅時効”が存在しました。労基法はこれを2年に延長するものだったのです。

 ただ、2017年に民法が大幅に改正され、債権の消滅時効はほぼ一律で『債権があることを知った時から5年(主観的時効期間)』、または『債権があることを知らなくても、客観的に権利を行使することができる時から10年(客観的時効期間)』とする“5年10年ルール”になりました。そうなのに、労基法の『未払賃金などの消滅時効は2年間。退職金の消滅時効は5年間』だけは、残されてしまいそうなのです」

 労働基準法は本来、労働者の権利を守るための法律だ。しかし現状、未払賃金の請求権が短期消滅時効として残されるという、労働者が不利になる法制度が2020年4月から施行されようとしている。

 未払賃金の請求期間の段階的な延長について、厚生労働省が「企業側の負担に配慮する」と説明していることに、「企業を優遇するな」と反発の声が上がっているが、渡辺弁護士はこれを「優遇」とすべきではないという。

渡辺弁護士「”優遇”というと従業員と企業のバランスが企業側に傾いているイメージです。ただ、これは憲法14条で定められている『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない』という法の前提を覆しているため、優遇という言葉さえ当てはまらない。もはやクーデターに近いです」

 未払賃金の請求期間見直しについては、本来、政府が厳格な姿勢を見せる必要があるが……。

渡辺弁護士「政府は高らかに働き方改革を掲げ、長時間労働の抑制に着手するなどして、従業員の働き方を見直す流れを作りました。『長時間労働を許さない』とするのと同様に、『未払賃金を許さない』という姿勢を見せていかなければいけません。しかし現政権は桜を見る会に地元の後援会を呼ぶような人たちですから、“味方”にはいくらでも肩入れする、という印象です」

 ゆえに、現政権が経済界に厳しい姿勢を示すことは期待できない。

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