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笑う呼吸の効能「ラフター・ヨガ」 健康を促進する笑いヨガとは

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「GettyImages」より

 日本でもすっかり浸透したエクササイズとしての「ヨガ」。様々な流派があるが、では「ラフター・ヨガ(笑いヨガ)」はご存じだろうか。

 11月25日、内科医のおおたわ史絵氏が刑務所内で受刑者たちと笑いヨガを実践した。おおたわ氏は法務省矯正局の非常勤医師として、刑務所や少年院など受刑者矯正施設の矯正医官を務めている。健康体操である笑いヨガの実践は、矯正医療を始めてからずっとやりたかった試みだったという。

 おおたわ氏のブログによれば、刑務所内の復帰支援教育の授業として、6人の対象受刑者と一緒に笑いヨガを行った。彼らの笑い顔、笑い声、顔色と表情に明らかな変化が見られ、手応えのある試みになったという。今後はしっかりと心理学的にもデータを取り、学会にも発表していくそうだ。

 おおたわ氏が笑いヨガを知ったのは、出席した抗加齢学会の場だった。医学的にも笑いの効能は認められているという。2018年、おおたわ氏は笑いヨガのリーダー養成の講習を受け、自身の講演会開催時に実践するなど積極的に取り組んでいる。

 後述するが、体操として笑っても、楽しいと感じて笑っても、人間の体は区別できないことは科学的に証明されている。

 笑いヨガは誰にでもできる体操で、楽しくなくとも、面白くなくとも、たとえ悲しくたって人は笑えるとおおたわ氏はいう。

インド人医師が考案した笑いヨガ

 健康と幸せのための体操である笑いヨガは、1995年にインド人の内科医マダン・カタリア氏により考案された。ある日、天からのお告げのようにアイデアがひらめいたという。インドのムンバイの公園で5人で始めた笑いヨガは、現在、100カ国以上の国で実践されている。

 笑いヨガは、ヨガとプラナヤマと呼ばれるインドの呼吸法を組み合わせたものだ。カタリア氏は、呼吸の重要さをこう述べている。

 呼吸は生活の基本であり、水や食べ物は数日なくとも生きられるが、酸素を吸わないと数分で死んでしまう。酸素は代謝に必要な細胞内のすべての酵素にとって、最も大事な要素だ。肺に多くの酸素を取り込むと、体と脳に酸素が十分に行き渡る。

 肺は、意識的に最大限に息を吸い込んだ後、吐き出すことが可能だ。エクササイズをしない人や、座りがちな生活を送っている人は、酸素を十分に体内に供給できず、十分なエネルギー補給ができない。

 息を吸うための筋肉は横隔膜と外肋間筋で、これらを使って息を最大限に吸えるが、吐き出すための筋肉は存在しない。息の吐き出しは受動的であり、肺を伸縮させることにより起こる。

 ヨガではより多くの酸素を得るために、吸うよりも2倍の量を吐き出すよう教えられる。肺の中には、必要であれば吐き出すことが可能な余分な空気が残っており、より吐き出すのは大変である。

 ここで、笑う時にどうしているかを考えてみて欲しい。実は笑う時には、息を吐き出すのは簡単なのだ。長く笑うと、肺の中の残気を吐き出してしまえる。そうすることで、より多くの新鮮な酸素を取り入れられるのだ。

 長く笑って息を吐き出し、多くの酸素を取り込む笑いヨガにより、体と脳に酸素を行き渡らせ、活性化ができる。

笑いヨガで健康と幸せを

 笑いヨガの目的は、笑いにより肉体的には健康、精神的には幸せを得ることにある。病気の7〜8割は、適切な呼吸の欠如とストレスによるものだという説もある。

 肉体的な健康は、笑いが息を吐き出しやすくする手助けになり、その結果、多くの酸素の取り込みが可能になり、エネルギー補給できることがわかった。

 それでは、精神的な幸せのほうはどうだろうか。

 インドのバンガロールとアメリカで行われた臨床研究では、笑いにより血液中のストレスホルモンが減少したという。この研究では、本当の笑いと作り笑いの両方を検証した。両方において、ストレスホルモンが減少し、体は本当の笑いと作り笑いの区別はできないという結果となった。

 ストレスを減らし、精神的な幸せを得るためには、体操としての笑いでも良い。それが笑いヨガである。

 笑いヨガは伝統的なヨガではないが、ヨガセッションの最後に10分から15分ほど追加しても、単独で行ってもよい。

ビジネスの場で笑いヨガ導入

 笑いヨガは、GoogleやBBCなどの企業でも取り入れられている。意識的に長く笑い続ける笑いヨガは、二酸化炭素を多く吐き出せる。それにより多くの酸素を脳と体に行き渡らせ、集中力を高めるのに役に立つ。

 マダン・カタリア氏の公式サイトであるLaughter Yoga Universityによると、職場における笑いヨガは、以下のような効果があったという。

 2007年、アメリカで笑いヨガをするグループと笑いヨガをしないグループの調査をした。調査項目は積極性、楽観性、やる気・熱意、適応性、自己抑制力、自己実現力、自己受容力、自己認識力。

 笑いヨガをするグループでは、すべての項目で顕著な改善が見られた。

 グループでエクササイズとして笑う笑いヨガを職場で実践すると、ポジティブな感情を高め、ネガティブな感情を手放す手助けになる。情緒的なバランスが取れていない状況においては、スキルが高い人物でも、その能力を十分に発揮できないのだ。

 スタンフォード大学のウイリアム・フライ博士は、10分間の力強い笑いは、30分間のローイングマシン(ジムにあるカヌーを漕ぐように引く・押す動作をするマシン)運動と同様の効果があることを証明した。笑いヨガは有酸素運動であり、脈拍を上げ、血流を促し、酸素を供給する。

 笑いヨガをすると、数分で幸福を感じるホルモンであるエンドルフィンが脳から分泌される。精神状態が良いと頭が冴えて、活力がみなぎり、仕事のパフォーマンスも上がる。

病院でも笑いヨガを導入

 精神科医師である枝廣篤昌(えだひろあつまさ)氏は、笑いヨガを治療に取り入れている。自身が病院長を務める愛媛県の豊岡台病院で、2010年から看護師や臨床心理士を中心に笑いヨガを行っている。枝廣氏は日本笑い学会の四国支部長を務め、社会人落語家としても活動している。

 笑いヨガは、統合失調症、うつ病、不眠症、アルコール依存症などの患者に対して行われている。笑いヨガにより、自律神経のバランスが良くなり、睡眠の質が良くなる効果が見られた。また、孤独感の改善にも役に立ち、多くの患者がリラックスして穏やかになったという。

 同病院には認知症の患者もいて、ユーモアで笑ってもらうのは難しくても、体操として一緒にやると笑ってもらえるようになるという。笑いは脳内のガンマ波の発生の頻度を高め、記憶力を高める手助けをする。ストレスによる記憶力の悪化、学習能力の低下を防ぐのにも、笑いは有効なのだ。

 また、現代のストレス社会において辛い状況を笑い飛ばせるよう、違う観点を持つのも有効だ。「笑いヨガや落語などで笑うのは、ストレス耐性を強くする」と、枝廣氏は言う。

 筆者がネパールに在住していた際、ネパール人の友人が乳がんになり手術を受けた後、再発して非常に落ち込んでいた。気分を変えるためにヨガ教室へ行ったら、そこでは笑いヨガも取り入れられていたそうだ。

 彼女はずっと笑っているうちになんだか楽しくなってきて、悩みもどうでも良くなってきたと言っていた。それからの彼女は本来の明るさを取り戻し、前向きに今も元気に生活している。

 筆者もこの記事を書きながら、カタリア氏が笑いヨガを実践しているYouTubeを観てやってみた。カタリア氏がいろいろな動作をしながら、たくさんの人たちと笑っているのを見たら、なんだか笑いが伝染してきた。筆者もたくさん笑って、頭もスッキリしたように思う。

 YouTubeを観ながら笑うのは、お金もかからないし手軽にできるので、今後も時々、実践するつもりだ。

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