「ナウシカ歌舞伎」事故・役者のケガによる公演中断で、松竹の対応が残念すぎる

【この記事のキーワード】

 東京・新橋演舞場で今月6日から上演中の新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」。世界的に評価されハリウッドからのオファーも蹴ったという、スタジオジブリの同名映画の原作漫画を初めて歌舞伎化するということで大きな話題になったが、幕が開いて早々の8日昼の部で、主演のナウシカ役を務める尾上菊之助が本番中の事故で左ひじを亀裂骨折し、その後の公演は中止。同日の夜の部も休演となったが、翌9日から公演は再開した。同作の歌舞伎化を熱望したという菊之助の熱意ゆえの美談として扱われているが、その陰にある主催の松竹の対応は、役者や観客を置き去りにしているとしか思えない。当日の事故の詳細を振り返るとともに、その問題点を考えてみたい。

 アニメ映画「風の谷のナウシカ」は、監督の宮崎駿自身が描いた同名の長編漫画が原作だが、映画の製作時点ではまだ連載途中であり、漫画の序盤を再構成して作られている。歌舞伎は一般的に1日に2回昼の部と夜の部の公演が行われ、演目も別のものだが、今回のナウシカ歌舞伎版では、原作全編が舞台化された通し狂言で、昼の部と夜の部の両方を観て、ひとつの物語になる。

異例の演出による事故

 昼の部は「序幕」「二幕」「三幕」に分かれており、映画版の内容は序幕のみで、二幕は王蟲の命をもてあそぶことを阻止するためにと本水(ほんみず、本物の水のこと)を使った立廻りがあり、そして三幕は映画版でユパが連れていた架空の生き物「トリウマ」に乗ったナウシカらによる合戦と、メーヴェに乗って旅立つ宙乗りが続く予定だった。

 夜の部は「四幕」「五幕」「六幕」「大詰め」に分かれ、再度メーヴェに乗った宙乗り、腐海に寄り添おうとするナウシカの心を表す歌舞伎舞踊、覚醒した巨神兵による立廻りなどがある。映画で使用された音楽が和楽器で演奏され、歌舞伎らしい演出をすべて盛り込んだと菊之助自身も自負しており、歌舞伎の新しい観客層の開拓も期待されていた。

 事故があった公演を、筆者は上手(かみて)の2階席で観劇していた。三幕の終盤、トリウマに乗ったナウシカは花道から現れ、舞台上で複数の仲間とともに戦闘場面になった。歌舞伎は通常、劇中で馬などが出てくる場合、前足役と後ろ足役の2人の人間が馬の着ぐるみの中に入り、その上に役者が乗る。しかしトリウマの中に入っていた黒子役はひとりだけで、肩車のような状態だった。

1 2 3

「「ナウシカ歌舞伎」事故・役者のケガによる公演中断で、松竹の対応が残念すぎる」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。