「ナウシカ歌舞伎」事故・役者のケガによる公演中断で、松竹の対応が残念すぎる

【この記事のキーワード】

 猿之助と右近ではチケット代金に差があったため、松竹は差額を返金する、それは特別な対応であると大々的にアピールしたが、あくまでも差額のみ。あらかじめ両パターンを観るつもりで複数日程のチケットを購入していた観客の、同じ配役になってしまうなら……という払い戻しには一切応じなかった。

 今回のナウシカ歌舞伎は一部演出を変更し、菊之助は翌9日に復帰。その日の夜の部を観たが、実質は変更ではなく総カットで公演時間も短縮されていた。当然宙乗りはなく、舞踊も満足なものとはいえなかった。とはいえ立廻りでは、敵役の坂東巳之助が菊之助の負担を減らすよう普段以上の存在感を見せていて、垣間見られる彼らの絆に、あらすじだけでない楽しみが得られたのも事実だ。

演者の安全保持を!

 翌日の復帰を強行したことは、もちろん菊之助自身の意欲がいちばん大きいのだろうが、松竹には打算はなかっただろうか。実は9日はプレイガイドなどによる貸切公演で、歌舞伎俳優自身の後援会よりも早く、おそらく最速でチケットの申し込みができた日程のうちの1日だった。つまり、9日の観客は、もともと俳優や歌舞伎に好感情と理解を持っている層だったということ。全力ではない“欠陥品”であっても受け入れるだろうという観客への甘えが、松竹にはあったように思われてならない。

 また、本来ならアピールしたかったであろう、初めて歌舞伎を観る層に対してはどうだろうか。演出をただカットするだけの工夫のなさで、歌舞伎の本来のすごさや魅力が、俳優が熱演さえすれば伝わるとでも考えているのだろうか。

 事故の原因にはなってしまったが、トリウマに乗って駆けるナウシカは疾走感にあふれ、確かに素晴らしい演出だった。危険と隣り合わせであっても、その方がかっこいいと思えば俳優はやりたがるだろう。しかし歌舞伎は興行期間中に休日がないことが特徴でもある。演者の安全と健康を保持できなければ、作品そのものの良さは半減し、既存の観客にさえ見放されかねない。安全対策を徹底するとともに、予期せぬトラブルの際の対応も、再度考えなおしてほしいと切に願う。

(鈴木千春)

1 2 3

「「ナウシカ歌舞伎」事故・役者のケガによる公演中断で、松竹の対応が残念すぎる」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。