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タピオカの次はもう決まっている! トレンド誕生の背景にある“法則”

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「GettyImages」より

 昨年末、ユーキャンが主催する「新語・流行語大賞」が発表され、年間大賞はラグビー日本代表のスローガン「ONE TEAM」が受賞。そしてトップテンのひとつには、まさに昨年を象徴するトレンドの「タピる」が入選した。

 もはや説明不要だろうが、念のため。「タピる」とは「タピオカドリンクを飲む(タピオカを食べる)」の意だ。昨年、タピオカドリンクは女子学生を中心とした女性の間で一大ブームとなり、夏には期間限定で東京・原宿に「東京タピオカランド」なるテーマパークまで爆誕したほどだ。

 もっとも、街中には有象無象のタピオカドリンク店が乱立しており、飽和状態になっている感も否めない。令和も2年目に突入し、“ポストタピオカ”にはいったい何のブームが来るのか気になるところだが、そもそもこうしたトレンドは、どのような背景で生まれ、移り変わっていくのだろうか。女性視点のマーケティング&トレンド誌『HERSTORY REVIEW』の発行人である、日野佳恵子氏に話を聞いてみた。

日野 佳恵子(ひの・かえこ)
株式会社ハー・ストーリィ代表取締役。女性マーケティング&トレンド誌『HERSTORY REVIEW』発行人。年間100本以上もの講演をこなしており、女性マーケティング界では「トレンド予言者」と呼ばれている。 株式会社ハー・ストーリィ

女性トレンドは“幸せ感”の積み重ね?

「女性トレンドも男性トレンドも、人は結局“新しい話題が好き”で、“いつかは飽きる”という点に尽きます。人は“新鮮なもの・こと”に刺激を受け、それは恋愛や夫婦の関係においても同じ。男性はキレイな女性に、女性はカッコいい男性にときめくように、“新しい可愛さ”や“見たことのないインパクト”にやられてしまう、というわけですね。

 男性トレンドの場合は、バージョンアップやチューンナップ、最新モデルといった、更新/向上/攻略/征服/戦利品などの意味合いを持つキーワードが特徴といえるでしょう。一方で、女性トレンドは、丸い/ぷにゅ/ほわほわ/きれい/きらきら……などといった、“幸せ感”の積み重ねによってできていると分析できます。

 世の中のトレンドが移行するのは、まさにこれらのキーワードと、新しい刺激が交わった瞬間。キーワードに沿った新鮮なもの・ことに出会うと、人は『見っけ!』とワクワクし、それが太古の昔から連続しているというだけの話なのです。

 諸説ありますが、実は今回のタピオカは第三次ブーム。1990年代初めに第一次、2008年に第二次タピオカブームが起こっているので、私の世代からすれば『前も流行ったじゃん』という感覚なのですが、今の若い世代は過去のブームなど知りませんよね。
 つまり、現在のタピオカドリンクの人気は、当時を知らない若者に古着が好まれる現象と同じであるとも言えるでしょう。古着には、時間経過によって磨耗した独特の“風合い”がありますよね。そういった、今までに見たことのない“新規性”があるものに惹きつけられるのは世界共通の現象で、もはや人間の本能とも言えるのではないでしょうか」(日野氏)

 続けて、日野氏は「女性トレンドのほうが、男性トレンドよりも口コミやシェアによる広がりが速い傾向があります」と指摘する。

「マーケティングの観点から、一般的に女性というのは“共感”したい生き物と言われており、何かを『見っけ!』たら、誰かと一緒に『すごーい』『かわいいー』などと言い合いたいのです。そのため女性は、自分が発見したときめきをすぐに他人に伝えたがりますし、そういう女性が1000人、1万人といれば、あっという間に大ブームの誕生です。

 対して、男性トレンドはすぐに大きなブームにはなりにくい傾向にあります。なぜなら男性は“共感”の生き物ではなく、他人よりも優位でいるための“秘策”を大事にする傾向があるからです。“秘”と言うくらいですから、簡単には人に教えませんよね。『お前も見つけてみろよ』『知ったやつだけが辿り着ける秘境の地だ』……というように、男性にとっては何かを見つけていくこと、探索していくことそのものに価値があると言えるのです。

 要するに、男性の間でブームになりやすいのは“攻略する余地があるもの”であり、さらには人と競うという要素があるとヒットにつながる傾向があります。昨今のトレンドでいうと、eスポーツがいい例ではないでしょうか」(日野氏)

 こう聞くと、トレンド分析や広告マーケティングにおいて、ステレオタイプな男女差が重用されていることがわかる。ターゲットの性別や特性を絞ることがヒット商品の秘訣ということなのだろうか。

「チーズティー」に「バナナジュース」…「羊羹だんごティー」!?

 さて、タピオカは“女性トレンド”に分類される。検索エンジンに「ポストタピオカ」と打ち込んだときに目立つのは、ズバリ「チーズティー」だ。

 チーズティーとは、クリーム状のチーズをお茶に浮かべた飲み物で、タピオカドリンクと同じく台湾が発祥の地だといわれている。都市部には「FORTUNER tea-box(フォーチュナーティーボックス)」や「machi machi(マチマチ)」など、チーズティー専門店が増えてきているようだが……。

「タピオカはその見た目と、先ほど申し上げた“新規性”にプラスして、小腹を満たせることや腹持ちのよさもヒットの要因になっていました。ですが、タピオカドリンクはシロップなどの糖分が大量に加わるため、“ヘルシー”からは外れてしまいます。

 そんな中で、ヘルシーという観点から改めて注目されているのがチーズです。チーズは昔から、その風味や舌触りが親しまれてきましたし、昨年は通常のチーズケーキに比べて焦げ目が印象的なバスクチーズケーキも流行りましたよね。

 チーズティーに関していえば、“チーズ”と“ティー”自体はそれぞれ馴染みのある言葉でしょう。これらを融合して「チーズティー」にすることで、『何それ、聞いたことない!』という“新規性”が演出されており、まさにポストタピオカの座をつかみつつあるのです」(日野氏)

 さらに、昨年の夏頃からは「バナナジュース」にも流行の兆しがあるという。

「バナナは、その丸みを帯びた形が特徴的で、東京土産の定番である『東京ばな奈』のキャラクターのように、リボンをつけてもキュートですよね。まったりした触感、そしてヘルシーさは女性ウケがバッチリです。本物のバナナは時間が経つと変色してしまいますが、ジュースに加工すれば、バナナ好きな女性たちのニーズを見事にキャッチできるというわけですね。

 とはいえ、バナナジュースそのものは王道の飲み物であり、これまでにもスターバックスがバナナを使った限定商品を出せば、瞬時に売り切れていました。今回も、バナナジュースがヒットしているというよりは、やはり“新規性”の力だといえるでしょう。
 というのも、人気のバナナジュース専門店では、味を濃くしたり、サッパリさせたり、豆乳を入れたりと、自由なカスタマイズが可能になっています。アボカドやセロリなどの緑黄色野菜を入れてスムージーのようにできる店もあり、その斬新さが支持されているのですね」(日野氏)

 日野氏は、ヒットするべくしてヒットした商品のわかりやすい例として、「フルーツインティー」を挙げた。これはローソンのカフェブランド「MACHIcafe(マチカフェ)」がリプトンとコラボレーションした商品で、単にフルーツの味や香りがするだけでなく、大きくカットしたフルーツが直接“イン”されていることが特徴。いわゆる“映え”を意識して、見せ方や入れ方が工夫されている(昨年11月からはホット商品が登場)。

 さらに日野氏の口からは、「羊羹だんごティー」「ういろう抹茶ティー」といった驚きのキーワードも飛び出した。これらは日野氏がパッと考案した架空のドリンクで、今のところは実在していないのだが、こうした“ありそうでなかった”キーワードの組み合わせを探っていけば、近い将来のトレンドを予測することも不可能ではなさそうだ。

 タピオカ、チーズティー、バナナジュース……そのときどきのトレンドを美味しく味わうのもいいが、ブームの理由にまで思いを巡らせるのも面白いかも知れない。

(文=森井隆二郎/A4studio)

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