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「新しいお母さん」に向けられる期待と重圧 ステップファミリーで「実母のように」なる必要はない

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「Getty Images」より

 別々の家族がひとつになって生活するステップファミリー。再婚は、新たなスタートであると同時に、継親と継子の関係など、ステップファミリーならではの葛藤も存在する。特に、継母は継子との関係にストレスを抱えやすい。

 ステップファミリーを支援する団体・ステップファミリー・アソシエーション・オーブ・ジャパン(以下、SAJ)と、家族社会学を研究する明治学院大学社会学部の野沢慎司教授によってまとめられた『ステップファミリーのきほんをまなぶ 離婚・再婚と子どもたち』(金剛出版)では、ステップファミリーにおける継母の戸惑いや難しさについて触れている。継母は、夫や社会から継子の「実の母親」になることを期待されるがゆえに、苦悩や疎外感を抱きやすいという。

 SAJで代表を務める緒倉珠巳氏に、継母はどうすれば継子と良好な関係を築けるのか伺った。

 

緒倉珠巳
2001年のSAJ設立時からメンバーとして活動。ステップファミリーの親・継親当事者のための自助グループのファシリテーターなどを長年務める。2005年から副代表、2010年から現職。研究者などと協働し、ステップファミリー教育プログラムの開発、セミナー開催、家族支援機関における研修講師、ファシリテーターの養成など行なっている。日本離婚・再婚家族と子ども研究学会理事。シングルマザーを6年経験後、再婚。2児の母。ステップファミリー歴は15年。『ステップファミリーのきほんをまなぶ 離婚・再婚と子どもたち』SAJ・野沢慎司編(金剛出版 2018年) 他

継親をタブー視する社会

――ステップファミリーにおいて、とりわけ「継母」になった人は、継子に実子同様の愛情を持てず、より苦悩を深める傾向にあるとのことですが、それは、なぜなのでしょうか?

緒倉:まず、「ステップファミリー」の構造の問題からくる「継親」という役割の難しさがベースにあります。

――継親の難しさとは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

緒倉:そもそもステップファミリーというのは、これまで別々のグループにいた者同士が一緒になり共同生活を始めるので、当然、生活習慣が違い、暮らしていくうえでのルールを決めるのも大変です。継母だけでなく継父にも共通していえることですが、ステップファミリーという家族形態では、密接な親子関係の中に後から加わった継親が「自分だけがよそ者(アウトサイダー)だ」という感覚を抱くことが多々あります。

――そういったステップファミリーの内情は、外側からは見えづらいように思えます。

緒倉:日本は、血縁関係を伴った「実の親子」のいる家庭こそが「普通の家族」というイメージが強く根づいています。学校で行われる「二分の一成人式」や「命の授業」や「自分史」でも、実の親子関係であることを前提にして、子どもに課題を出すことが多いですよね。

社会的に見て実の親子関係が圧倒的に多いのは事実ですが、継父子関係や継母子関係、里親子関係など、色々な家族形態があるということが認知されていないのは問題だと感じます。

さらに、社会は「継母」「継父」ということをタブー扱いする傾向にあります。SAJでNHKや民放テレビでステップファミリーについての取材を受けたことがありますが、「継母と書くのはダメ」「継親はいけない」と注意をうけ、「お父さん」「お母さん」表記に統一させられたことがあります

シングルマザーやシングルファザーとの結婚では、継親連れ子の「親」になることが当然視される社会認識となっており、実の親のように愛情を注ぎ、実の親のような存在になることが望ましいと思われがちです。

しかしながら、実の親子関係と継親子関係はそもそもの成り立ちが違います。それぞれの立場や思いの違いを踏まえながら関係作りをすることが大切なのであって、継親は必ずしも「本当の親」になる必要はありません。

SAJにいるある継母さんは、「親にならなくていいんだ」「親じゃない、別の存在になる選択肢があるんだ」と気づき、テレビの取材にも「私は実の母親にならなくていいんです」と語ったといいます。するとデスクは、「なに開き直ってんだよ、このお母さん」という呆れた反応をしたそうです。継親をタブーとし、「実の親になるべき」という価値観を押し付けるメディアの責任も大きいと思います。

――ステップファミリーであっても、継親ではなく実の親として接するべきだという考えは、この社会に浸透していると思います。

緒倉:「実の親のような愛情」というと響きは悪くないですが、当事者たちからすると、自由度がなくて苦しいものです。

また、子どもと離れて暮らしているもう1人の実親はまるで部外者のように扱われがちですが、子どもにとっては離れて暮らす親も重要な存在です。そのことも、社会は知っておくべきだと思います。

――そういった問題を踏まえて、とりわけ「継母」がより苦悩を深めやすいのは、なぜなのでしょうか。

緒倉:途中から子育てに参加する継母・継父は「どうしてこの年齢でこれができないのか」といった粗が目につきやすく、最初からその子を育てている実親とは、子どもに向ける温度感や実感が異なります。

特に継母は家庭の中にいる時間が長く、子どもとの接点も多いので、厳しい評価が際立ちやすいのです。しかし、子どもの問題について実父であるパートナーに言えば言うほど、パートナーは自分の今までの教育を批判されているように捉え、継母に対して「厳しすぎるんじゃないか」「母性がないんじゃないか」といった批判を向け、対局構造になってしまうのです。

――子連れ同士の再婚の場合でも、継母は継父よりも苦悩を深めやすいのでしょうか。

緒倉:お互いに子連れであれば、一見、バランスが取れているように思えますよね。しかし、継母には「母親」の役割をこなす期待がパートナーや周囲から向けられ、自分の子どもよりも継子の親になることに力を注ぐ傾向にあるのです。

あるいは、母親のいる自分の子どもに比べ母親のいない継子が不憫に思えて、「継子を優先しなければいけない」気がしてくることもあります。

継子にケアを重ねれば重ねるほど、今度は自分の子どもへのケアが欠けていき、自分の子どもに対して罪悪感を抱いたり、自分に対する虚しさや悔しさが継母の中で蓄積されていきます。

本来、継子に向けられる思いと自分の子どもに向けられる思いが違うのは当然のことで、そこに対する理解やケアがなければ、継母は自分をただただ消耗するだけの係になってしまいます。

「実母のように」という期待とプレッシャー

――育児に関して「母親」は、社会的に多くの期待を背負っていますよね。

緒倉:そうですね。父親よりも母親は、子育てにおいて社会からさまざまな期待が寄せられています。そのことも、継母を苦しめている要因のひとつです。

たとえば継母が継子を病院に連れて行けば、病院のスタッフから「母親は子どものことをわかっている」であろうことを前提に、これまでの予防接種歴について聞かれます。でも継母の場合、母子手帳が手元になければ接種歴はわかりません。父子家庭の期間が長いと予防接種が欠けていることもあるのですが、そうすると、「お母さん何やってたの」と怒られてしまったり……。

子どもたちが通う学校からは「この子にはお母さんがいないから」と、自分の子どもよりも継子のケアを優先するようにアドバイスをされることもあり、「じゃあ自分の子どもはどうしたらいいの?」と、苦しい思いを抱えてしまう継母もいます。

また、先ほどもお話しましたが、社会は継親をタブー視する傾向があり、継母であることを説明しても、「だから何? 母親になったんでしょ」と実親になることを強制し、「母性がない」とまで言う人もいるんです。

――「母性がない」とはひどいですね。

緒倉:また、継母が苦悩を抱えていても「それはどのお母さんも一緒だから」と一般化されてしまい、継母ならではの葛藤は理解されづらくもあります。

「大人と子ども」としての信頼関係を重ねる

――では、継母と継子が良好な関係を築いていくためには、どのような工夫が必要になるのでしょうか。

緒倉:まず、先ほども説明したように、継母は継子と「本当の母と子どもの関係」になる必要はありません。「母と子」というよりは、「大人と子ども」としての信頼関係を重ねていった結果、大人も子どもも「この家族でよかったな」と思えることを目標にするとよいでしょう。

――その最終目標に達するためには、具体的に継母は継子とどのような関わり方をすればよいのでしょうか?

緒倉:継子を否定しない物事の伝え方や、上手なリクエストの仕方など、いわばコミュニケーションの“質”が重要です。

また、子どもは一人ひとり継母に求めるものが異なります。たとえば、パートナーの連れ子が複数いた場合、一般的には上の子の扱いが難しく、下の子が扱いやすいと言われていますが、それがどの家庭でも当てはまるわけではありません。従順な子もいれば活発な子もいます。

実母との関わりが長く愛着関係が安定している子の場合、継母への期待はあまり大きくないこともありますが、逆に、実母との愛着関係が少なかった子は継母に愛着を期待する行動が出てくることがあります。継母が赤ちゃん(セメントベビー)を産んだ時に、赤ちゃん返りする子もいます。

ある家庭では再婚後、子どもが生まれた時に、5、6歳の継子が「おっぱいを飲みたい」と言ったそうです。元々その子は実母との関わりがすごく少なく、愛着に不安定なところがあったのですが、その子の発達課題にどう応え対応していくかは、継母さんにとってすごく難しい問題です。

――継子に「おっぱいを飲みたい」と求められた時、みなさんは実際にどのような対応をされるのでしょうか?

緒倉:飲ませた人もいれば、飲ませなかった人もいます。ただ、飲ませる・飲ませないに正解はなく、その子の求めているものに対して、夫婦がしっかり話し合い、どのようにフォローをしていくかという課題になってきます。

――たとえば、子どもが実母の存在を知らないうちに別れ、ステップファミリーになるということもありますよね。その場合、継母は継子にどのように接するべきなのでしょうか?

緒倉:たとえ実母の存在を知らなかったとしても、いずれは「お母さん」は継母であり実母ではないことを知る時が来ると思います。その時に、その子のルーツたる実母を否定しないことが重要です。

――実の母親ではないことは、継子が小さい時に伝えたほうがよいのでしょうか。

緒倉:私はできるだけ早いうちから伝えるべきだと思います。ただ、小さいときに一度伝えたからOKとはいきません。小さい子は一度の説明では理解が追い付きませんから、その子の年齢や発達に応じた説明を何度か行っていくことになります。

継母という難しい立場から継子と関わっていると、色々な感情のぶつかり合いが起こるのが普通ですが、もし継子がずっと実母だと思いながら過ごし、ある程度成長した時に継母だったと知った場合、継子は裏切られたように感じ「本当のお母さんじゃないからあんまり優しくないのか」「だからあの時ああいう言い方をしたのか」と深読みしたりして、より傷つきが大きくなってしまうことがあります。

実母のようにならなくても、継母と継子が良好な関係を築くことはできます。「実のお母さんではないけど、あなたのことを大事にしたいと思っているんだよ」と、伝えることを積み重ね、土台を固めていく作業をしていってほしいです。

夫は継母と子どもに「過度な期待」を持たないこと

――継母と継子が良好な関係を築くためには、夫はどのようなフォローをしたらよいのでしょうか?

緒倉:まず、家庭内の問題はどの家庭でも起きますし、問題が起きない家庭はありません。問題が起きることを恐れるよりも、問題に対して夫婦でどのように向き合っていくかが一番重要だということを、踏まえておいてほしいと思います。

継母と子どもにトラブルがあった時、まず父親は継母と子どもが何に戸惑い、どんな状況にあるのか、それぞれの言い分をしっかり聞いてください。それぞれの話を聞いた後も、継母に「母性がないからだ」「母親なんだから」と実母になることを求めたり、子どもに「お母さんのいうことを聞かなきゃダメでしょ」と、実母として接しろと言うことは厳禁です。

過度な期待を持ち、双方に「うまくやってくれ」と要求するのではなく、それぞれが困っていることを共感して受け止める作業、それを解決するためには何をすべきなのか、それぞれと話し合い、同じ歩みで工夫していく姿勢が大事だと思います。

――継母・継子両方の話を聞き、橋渡しの役割を担うということですね。

緒倉:たとえば、学校から帰ってきた子どもが宿題もせずにゲームに没頭し、「この子は全然人の言うことを聞かない」と継母が腹を立てることは、よくあるシチュエーションです。そういう時に夫は、継母に対しては「人の話を聞かないでゲームをされては腹が立つのも無理はないよ」と耳を傾け、「でも宿題を忘れたら困るのは本人だよね。宿題をちゃんとやったら自分もスッキリすることを子どもにも学ばせたいんだけど、どうすればいいか一緒に考えてくれないか?」「宿題を済ませたらゲームの時間を追加するというのはどうかな?」と、継母の気持ちに共感しながら次のプランを立ててみる。

子どもに対しても「ゲームが楽しいのは当然だよ」と共感したうえで、「でも宿題を忘れたら困るだろ?」と説明をし、「先に宿題をやったらその後のゲーム時間を追加するのはどうかな?」と提案していく。一緒に考え歩んでいくことを意識してもらいたいです。

――そういった過程を積み重ねていくのは、やはり時間がかかる作業ですよね。

緒倉:そうですね。たくさんの言葉と時間を費やす必要があり、とても手間がかかる作業です。

継母と継子が良い関係を築くには、そういった工夫や作戦がとても大事になるのですが、「子どもは1日1日成長しているのに、母親がそれに応えないのはおかしいだろう」と言って、継母に怒りをぶつける夫もいます。

実親の立場からすると、子どもの満足感を性急に求めたい気持ちもあり、それなのに継母が実親のような振る舞いをすることに抵抗を示していると、苛立ってしまう。そういった実父の苛立ちもわかります。実親にも不安があって当然ですから。

しかし、そこで継母に「母親なんだからこうして当たり前だ」と過度な期待をすることは非現実的であり、どうすれば一歩進めるのかを具体的に考えていかないと、問題は解決しません。メンバーそれぞれの思いが違うということを前提として受け止め、それぞれを労い、フォローしていくことが大切です。

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