2020年も続くリストラと建設業の圧倒的な人手不足

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「Getty Images」より

 2019年1-11月の早期退職者数が1万1,300人を超えた。

 東京商工リサーチによると、早期退職者を募集した上場企業は36社になり、11月時点で2014年以降、実施企業・人数が過去最多である。

 昨年と比較すると、企業・人数ともに約3倍増になった。24社が減収減益を含めた業績悪化を理由にしている。

 一方で、業績が悪化していないのに早期退職を実施した企業が存在する。これらの企業では、将来の市場環境を見据えるという理由で早期退職募集をかけた。

 この流れは、2020年も続くようだ。すでに判明している時点で、7社が計1,500人の早期退職を実施予定である。

 そのうちの6社が業績堅調な業界大手だ。業績が堅調だからといって、早期退職の波が来ないとは言い切れない時代になってきた。

人手不足に悩まされる建設業

 リストラの嵐が吹き荒れる一方で、人手不足にあえいでいる業界もある。

 その中のひとつが「きつい・汚い・危険」の「3K」といわれ敬遠されてきた、建設業界だ。その中でも、特に技術が必要な大工は、人手不足が深刻である。

 木造住宅の担い手である大工就業者数は、1980年のピーク時に約94万人だった。

 しかし2010年には半分以下の約40万人まで減少している。しかも高齢化率(60才以上)は、他の建設業に比べて高い。

 1980年は60才以上の割合が7%、30才未満の割合が26%だったのが、2010年では60才以上の割合が28%、30才以下の割合が8%と逆転してしまっている。

 2010年時点で40万人いる大工の中で、30才未満の若手は3.4万人しかいないのだ。

 このままでは、熟練大工からの技術継承ができなくなってしまう。

人口減少しているが住宅需要はある

 少子高齢化の影響もあって新設住宅着工件数は減少傾向にあるが、景気が良くなれば住宅需要は高くなる。

 現に、リーマンショック後の数年は80万件台まで落ちたが、2018年度の新設住宅着工戸数は約95万件である。この年の新設住宅の約6割が木造だ。 

 すでに職人不足のしわ寄せは来ており、資材不足もあるが工期が伸びることが見られるようになってきた。

 このまま大工が減少していけば、人口減少による住宅需要の悪化よりも先に、住宅生産体制が逼迫する可能性がある。

なぜ入職する若者が減少しているのか

 なぜ大工のみならず、建設業界に従事する若者が減少しているのだろうか。主な理由は3つ考えられる。

1・少子化 

2・「3K」の根強い価値観 

3・大学進学率が上がった

 少子化で就業人口が減っているのは、どの業界でも共通している。

 しかし建設業界、特に技術を要する大工などの職種に若年層が入職しないのは、「3K」のわりに見習い期間が長すぎることが理由のひとつとして考えられる。

 加えて、バブル崩壊やリーマンショックをきっかけに深刻化した、多重下請け構造からくる処遇悪化もシビアな問題だ。

 一番の理由は、大学進学率が上がってホワイトカラー職を希望する人が増えたことだろう。

 これらを鑑みると、建設業界の人手不足を解消させるには、職人・技術者の地位向上が必要不可欠ではないだろうか。

日本と似ているドイツでは?

 ここで日本と同じような国土面積を持ち、製造業が主な産業であるドイツを見てみよう。

 ドイツでは、職人・技術者の地位が高い。なぜなら、技術者育成のための教育システムが確立されているからだ。

 職人・技術者の地位が高い証拠に、最高峰の国家資格である「マイスター」というものがある。「マイスター」を取得すると、大学の学士と同等として扱われる。

 一般的にドイツの教育システムでは、10才前後で大学に行くか、技術者になるか進路を決める。早いうちから職人・技術者になるための道が開かれているのだ。

学士と同等の国家資格「マイスター[3] 」

 「マイスター」を取得できる業種は400種近くある。もちろん建設業界の「マイスター」も存在する。

 日本でいう左官職人や大工、断熱・防音職人、配管工など多岐にわたる。「マイスター」の資格を持っていると、開業資格を与えられ、処遇は手厚くなる。

 また、「マイスター」を保持していなくても職業教育で得た資格は、大学のカリキュラムに加算される制度がある。職人・技術者への道を選んでも、大学教育を受けられるのだ。

 一方で、大学進学を選んだ子も「マイスター」を目指せるようになっており、流動的な仕組みが構築されている。

日本では大学全入時代が到来

 日本は大学全入時代を迎えて、金銭面さえクリアすれば誰もが大学に入れる時代になった。

 2018年度の短大・大学進学率は過去最高の57.9%を記録している。ただ、世界の大学進学率と比べると、実はそこまで良いわけではない。

 大学進学率の向上は悪いことではないが、問題なのは、大学に進学したほとんどの人がホワイトカラー職に流れ込んでしまうことと、一度職人の道を目指すと他の進路への潰しがきかないことである。

ホワイトカラー職は人が余り始めている

 ホワイトカラー、サラリーマン職で、安定して定年まで勤め上げられるようなモデルは崩れてきている。

 今は、就業人口が突出している団塊ジュニア世代を狙った早期退職の募集が多い。しかし今後、早期退職募集の形がどうなっていくか不透明である。

 業界によっては、内需で食べていた企業も人口減少で外(海外)に目を向けなくてはいけなくなる時期がくる。その時には、世界の優秀な人・企業との戦いになってしまうだろう。

 ホワイトカラーにとって、ますます厳しい労働環境になる未来が見えてくる。

機械化でもブルーカラーの仕事はなくならない

 市場経済も急速に変化しているが、機械技術も急速に進化している。

 10年前までの肌感覚では、「脳」を使う仕事よりも「肉体労働」が先に仕事を奪われてしまうという考えが主流だった。

 しかし蓋を開けてみると、「機械にとっては、知的労働の方が得意らしいぞ?」と見方が変わってきている。

 長期的に見ると、ブルーカラーにも大なり小なり影響はあるだろう。しかし今のところ、「安定していて良い職」と言われていた、ホワイトカラーの仕事の方が先に食われてしまう可能性が高い。

 現に、2019年の夏には損保ジャパンが4000人削減計画を発表。希望退職は募集しないものの、IT効率化で余った人員は介護事業に転籍というニュースが駆け巡った。

建設業界の今

 現在、建設業界に入職する若者は少ない。「3K」の悪いイメージがついたまま地位向上もされず、処遇も悪化したままでは若い人も入ってこない。

 近年、若い外国人労働者が建築業界の土台を支えている側面がある。しかし、技術の継承において、言葉・文化の壁があることも事実だ。そもそも、外国人労働者はそのまま日本に定着して働いてくれるのだろうか?

慢性的人手不足を解消するには

 「とりあえず選択肢を多くするために大学進学」の状態が続けば、今と変わらず多くの学生がホワイトカラーの職を求めるだろう。

 しかし日本が今の環境を維持していくには、優秀な専門人材が適切に配置されることが大切だ。現在の状況は、ホワイトカラー職に人が集中しており、適切に配置されているとは言い難い。

 業界内で培われた技術を維持していくには、若者に「この業界で挑戦したい!」と思わせることが必要である。一例として、ドイツの「マイスター」制度と、ある程度進路を修正できる流動的な環境があることを挙げた。

 急速なIT化でホワイトカラー職が安定した職とは言えなくなった今が、職人・技術職に対する地位・処遇改善のタイミングではないだろうか。

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