男と女の恋愛じゃなくても全部肯定する「これが私の恋愛です」イベントレポ

【この記事のキーワード】

 ”恋愛””結婚”と、どう向き合えばいいのか。

 この問いに正解はない。あるのは各人の選び方だけだ。

 平成元年生まれの女性4人によるサークル「劇団雌猫」が11月に発売したエッセイ集『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』(双葉社)には、15人の女性たちそれぞれの恋愛について語った匿名エッセイが収録されている。

 目次から、その中身を少し見てみよう。

「アラサーになっても若手俳優に出会いたい女」
「高齢処女に思い悩んだ女」
「性欲を『シン・ゴジラ』で断ち切っていた女」
「女オタ同士の恋愛を見守る女」
「ドルオタ同士で結婚した女」
「40歳を過ぎて独身の女」……

 本人の恋愛・結婚のストーリーや向き合い方を書いているんだろうな、とわかるものから、「なんだそれは」と思うタイトルまで幅広い。それらをまとめて「誰になんと言われようと」と、この本は肯定している。

 昨年11月7日には、本の刊行を記念したトークイベントが開催された。劇団雌猫メンバー3人(ひらりささん、もぐもぐさん、ユッケさん)と、ゲスト2名を招いた内容盛りだくさんのイベントの一部をお伝えする。

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劇団雌猫
インターネットで知り合い意気投合したもぐもぐさん、ひらりささん、ユッケさん、かんさんの4人が、「インターネットでは言えない話」をテーマに2016年冬に同人誌『悪友』シリーズを創刊。これまでに『浪費図鑑 悪友たちのないしょ話』『シン・浪費図鑑 悪友たちのないしょ話2』『まんが浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』(柏書房)、『一生楽しく浪費するためのお金の話』(イースト・プレス)、『本業はオタクです-シュミも楽しむあの人の仕事術』(中央公論新社)を刊行。〈http://mesuneko.hatenablog.com/

●もぐもぐさん:宝塚沼で浪費中

●ひらりささん:BLと韓国映画沼で浪費中

●かんさん:K-POP沼で浪費中

●ユッケさん:ジャニーズ沼で浪費中

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左から、もぐもぐさん、ひらりささん、ユッケさん

 イベント冒頭では、『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』の制作過程について劇団雌猫の3人が語った。

 ちなみにステージ上にはオタクの現場でおなじみの「プレボ」(プレゼントボックス)のような「浪費の勲章ボックス」が設置され、イベント参加者たちが今年のオタ活で余分に購入したものや布教したいものを自由に入れてヨシという趣向がこらされていた。

ユッケさん「この本のもとになった同人誌『悪友vol2 恋愛』は2017年の刊行だから、それから約2年が経ってるんですよね。2年前は『オタクが婚活してみた』系エッセイがはやってた時期で、私自身も『そろそろ婚活するべきか〜?』って思いながらpixivでエッセイを読み漁ってました。今は結構婚活市場も変わってきてるよね」

もぐもぐさん「2年経った今は『結婚しなくても楽しくない?』っていう意見も増えてるよね」

 2年前の2017年は、結婚情報誌「ゼクシィ」の「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」というキャッチコピーが話題をさらった。

 「ゼクシィ」ですらそんなことを言い出すだけあって、当時からすでに「そんなに結婚しなきゃいけないのか?」という気分は醸成されていたように思う。この2年の間に、社会では「多様性」という言葉がよく使われるようにもなった(もちろん空疎なお題目と化している場面も多々あるが)。

 恋愛してもしなくても、結婚してもしなくても、それは個人の自由であって強制されることではないし、旧来の価値観を内面化する必要はない――そんな考え方をSNS等を通じて共有し、発信する人は増えているように感じる。

 価値観の多様化だけでなく、日本では労働者の経済状況が向上しないために、恋愛およびその先にある結婚まで考える経済的余裕がない、という事情もあるだろう。さまざまなレイヤーにおいて、恋愛・結婚と距離をとる理由は育まれ続けている。

 イベントに話を戻そう。収録されたエッセイの中で、劇団雌猫メンバーそれぞれがイチオシの1本について語った後、当日会場には不在のもうひとりのメンバー、かんさんからのメッセージが読み上げられた。

「個人的に、同人誌『悪友』のコンセプト『インターネットで言えない話』というテーマに一番合ってるのが『恋愛』だと思います。私自身が何より恋愛の話に苦手意識があり、触れるのを避けてきたからです。制作中は、どういう構成や言い回しなら自分にも抵抗感なく読めるかをよく考えていました。この本を通じて『恋愛の定義は自分自身が決めればいい』という前提をみんなと共有できるのであれば、友達とコイバナするのも悪くないなって思えそうです!」

 壇上スクリーンにも表示されたこのメッセージに、参加者たちもうなずいていた。

オタク趣味は婚活プロフに書いたほうがいい!

 今回のイベントは3部構成。ゲストとして、結婚相談所パートナーエージェントの公式アンバサダー・大道枝里さんと、フリーライターの藤谷千明さんが登壇した。

 大道さんは婚活の現場で働くプロとして「オタク女子に向けた婚活基礎知識」をレクチャーする一方で、現在オタク友達と4人でルームシェア生活を送る藤谷さんが、その暮らしの内容を紹介する。

 大道さんは、生涯未婚率や「趣味と結婚に関するアンケート調査」(QOM総研調べ)などデータを用いて現在の婚活市場について説明。「結婚する相手の趣味について、どこまでOKか」というアンケート調査で、「夢女子」が最下位にランクインしている結果には会場から笑いと悲鳴が上がった。

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人は他人に厳しい

大道さん「『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』収録のエッセイ『ドルオタ同士で結婚した女』で『確かにアイドルの話をするのは楽しい相手だけど、異性としてのドキドキ感がない』と書かれていましたが、これはオタクに限らずあてはまる話です。

 異性としてのドキドキとは何か、私もよくお客様と話しますが、結婚につながるところでいうと結局日々の生活の中での“刺激”のことなんですね。見た目でも趣味でも、ドキドキできる刺激が多少は必要なんです」

ひらりささん「結婚後に刺激をつくるのは難しいんですか?」

大道さん「コミュニケーションをどれだけとれるかによりますね。趣味が合致しているからといって、うまくいくわけではありません。

 理想の相手を見つけ出すために、自分の“ピント”がどこで合うのかを分析する必要があります。どこを好きになるのか、絶対に譲れないところはどこなのかがわかっていないと、相手に望むものが明確にならないんです。

 それから、さじ加減も大事です。恋愛でも結婚でも、押し引きが重要になります」

ひらりささん「オタクはこれが苦手ですよね。押すしかない」

ユッケさん「接触イベントあるオタクだと、イベントでループしすぎて推しが塩対応になるときがあるけど、そういうのも押し引きなのかな……?」

大道さん「オタク趣味があるなら、プロフィールには書いたほうがいいです。『引かれるんじゃないか』と思ってあまり書きたくない人も多いと思いますが、趣味でのマッチングは結婚生活のときめきにつながる可能性があるので、大事なんですよ。でもそこでも押し引きが必要で、なんでも書いてしまうのはNG。どんな趣味でも、『なぜそれが好きなのか』という理由の部分にその人の人柄が現れます」

もぐもぐさん「それが難しいですよね。オタクは聞かれたら全部しゃべりたいから……」

ひらりささん「理由が大事なんですね。たとえば手塚国光(『テニスの王子様』)が好きなら、『手塚国光の包容力のある人間性が好きです』と書く……みたいな」

(会場笑い)

 ここで大道さんから、実際にオタク趣味でマッチングした成婚事例が紹介される。「交際期間27日で成婚」という事例に、「ミュージカル刀剣乱舞の公演期間より短い!」(もぐもぐさん)と感心の声が。

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趣味が合うことで「刺激」「ドキドキ」になる!

大道さん「このカップルは、男性が『価値観が同じ人がいいけど、それが無理でもせめて否定しない関係がいい』というプロフィールを書いていたんですね。女性は『なるべく個々の趣味を制限しないでいきたい』と書いていて、そこがマッチしたんだと思われます。完璧な人間はいないし、それぞれ育ってきた環境も違えば個性も違う。それを理解し合って歩み寄って尊重できるかどうか。結婚に至るにはそれが重要だと思います」

ひらりささん「自分を開示しつつ、相手のことも受け入れられるような姿勢を持つということですね」

年に2〜3回会うくらいだった友人たちとのルームシェア

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オタクルームシェア実践者に聞きたいことは多い。

 第2部では、藤谷さんがオタクルームシェア生活に至った経緯やその中身を紹介。

藤谷さん「肩を痛めて生活に支障が出たり、そのせいで夜中につらい気持ちになることがあったので、インターネットで知り合って長いこと親しくしている友人に『一緒に暮らさないか』と声をかけました。今は4人で5LDKの物件に住んでます。基本的には各自がそれぞれに生活していて、共有部分のルールや家事についてはTODOアプリで管理してます」

 1人1部屋+全員のオタクグッズを置く部屋、という間取りに会場からは「いいなぁ」という声が漏れた。

藤谷さん「大親友! という感じではなくて、年に2〜3回会うくらいの関係だった友人たちなんです。でもネットで何年も見ていると、どういう人かはわかるじゃないですか。貞操観念、金銭感覚、衛生観念が近そうな人に声をかけました」

大道さん「それはまさに結婚と一緒ですね」

藤谷さん「ただ、恋愛関係と違って、愛情の比重を逐一気にしなくていいというか。そこは、より楽かもしれません。4人揃ってご飯を食べるのも月に1回あるかないか、というくらいの距離感でやってますが、ツイッターじゃないSNSがリビングにもう一個あるような感じがして、人恋しさは満たされる部分がありますね。

 それと、結婚と違うのは、一生一緒に暮らすことを前提に考えなくていいところだと思います。なるべくなら長くこの生活をしたいですが、絶対一生一緒! とは思っていない。良い意味で他人行儀、そのほうが結果的に長く続くんじゃないかな、と感じてます。」

 最近の出来事として「『鬼滅の刃』全巻を共有費で買うかどうかの相談をしている」というエピソードに、会場からは笑いが起きていた。

 その後、来場者への事前アンケートをもとに「恋愛の悩み」「最近あった恋愛エピソード」などが語られた。ここでも「恋愛」には推しへの思いやオタ活と恋愛の両立についてなどが含まれており、書籍のタイトル通り「誰になんと言われようと、これが私の恋愛です」というオタク女性の強い気持ちがあふれていた。

 ひらりささんとユッケさんは、ゲスト登壇前にこんな話をしていた。

ひらりささん「『実際婚活するならどうしたらいいのか』という話と、『結婚じゃない道を考えるなら、オタクとシェアハウスはどうなのか』という話を、同時に聞けると面白いと思って2人に来てもらいました」

ユッケさん「どっちかを選ぶべき、っていうことではなくて、選択肢としてどっちも聞いておくと世界が広がるんじゃないかと思ってます」

 結婚したい人のための考え方と、そうではない生活の実践例が並列で語られることで、「恋愛」や「結婚」への向き合い方のヒントを数多くもたらして、イベントは幕を閉じた。

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