なぜ投資セミナーはタワマンで開催されるのか?

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「GettyImages」より

 前回のwezzyで、人は基準となる金額からの変化で損得を感じるものだと書きました。

 バーゲンにおいて商品がいくらで売られているかよりも、いくら値引きされているか、つまり値引き率が大きければ大きいほどお得に感じるという心理です。 

 値引き率が高いことに満足し、予定よりも高い金額のものをつい買ってしまうというトラップですね。

 今回は、その錯覚とは異なるものの、やはり人の感覚を鈍らせる手法について述べたいと思います。

880円のコーヒーでも「安く感じる」からくり

 私たちが「これは安い」と感じるためには、比較のための価格のイメージが必要です。その基準のもっともベースになるものは、普段買い物をしているお店の売値でしょう。

 しかし、当たり前の話ですが、たとえ同じものであっても店によってつけられている値段は異なります。

 例えば、ドリップコーヒーを例に取れば、コンビニカフェなら1杯100円ですが、スタバで買えば約300円。こだわりのコーヒー専門店やホテルのラウンジだと1000円近くすることだってあります。でも、その店の中ではそれがスタンダードな価格なのです。

 または、ちょっとしたポーチやコスメの場合。

 筆者は飛行機で移動する際に機内販売のカタログを読むのが好きなのですが、掲載されているポーチなどの写真を眺めていると、普段買っている金額よりも高めなのに、だんだん気にならなくなってきます。3000円のハンドクリームでも、まあお手頃じゃないのと見えてくるから不思議です(普段はドラッグストアの1000円くらいの商品で十分なのですが)。

 筆者はこれを勝手に「機内販売効果」と呼んでいます。つまり、飛行機のような閉じられた空間で、一定の金額帯のものを見ていると、自分の基準がそっちへ引きずられてくるのです。

 身近な例で言えば、100円ショップに300円のインテリア小物が置いてあったとすると、「ええっ、これ300円もするの?」と高く感じますが、同じものが300円ショップにあれば違和感はありません。逆に、他の商品が500円から1000円ばかりの雑貨屋に並んでいれば、ずいぶん格安だなと感じるでしょう。

 つまり、売り手側がやや高額の商品をスムーズに売りたいと考えれば、全体的に高めの商品を揃えている店に置いてもらうほうが効果的というわけです。

 先ほどのこだわりのコーヒー店で、メニューの最初に出てくるブレンドが1000円、他の豆だと1300円くらいだとしましょう。そこにもし、880円の「本日のコーヒー」があったら、すごく安いねと感じます。コンビニカフェで満足しているいつもの感覚で言えばバカ高いはずなのですが、この空間では880円が当たり前に感じられるのですね。

タワマンで投資セミナーをする理由

 「それはそうでしょう、コンビニのコーヒーとは豆が違うんだから」という意見はごもっとも。私もこの店に入れば1000円のコーヒーを注文するかもしれません。

 お伝えしたかったのは、“高価格帯の店に入ると、釣られて自分の支払う金額も普段より上がりがち”ということです。

 20万円のブランドバッグを見た後では8万円のバッグが素晴らしくお買い得に見えるということを「参照点からの変化」といいますが、逆に言うと全体的に高額な商品で揃えられた店にしばらくいると、自分が使うお金の単位がだんだん影響されてきてしまいます。

 いつもなら手を出さない金額のものでも、徐々にそれがスタンダードな価格に思えてくるわけです。もちろん高額だけれど、絶対出せないわけでもない、無理すれば払えるような気がしてくるのですね。

 最近は投資セミナーが人気だそうですが、たとえばタワーマンション上階のゲストルームや、予約が取りにくいフレンチレストランを会場にして、クローズドで行われるものもあるようです。

 そうした場は、立地やインテリア、出されるメニューにもセレブ感があるでしょう。お金がかかった上質な空間で紹介される投資金額が1万円から、ということはまずないと思われます。100万円単位の投資話であっても、「とんでもない価格だ」とは感じにくくなってしまうのではないでしょうか。

 値引き率に惑わされて、普段なら手を出さない高い服をうっかり買ってしまってもそれほど実害はないのですが、高額な単位の投資商品を手ごろに感じてしまうのはちょっと危険です。

 普段は行かないセレブなスポットに行くのは気分が上がってワクワクするものですが、お金の話を聞きに行くには注意が必要。思いがけず高額な投資をしてしまわないように、「機内販売効果」いいえ「タワマン効果」には十分気をつけましょう。

ショッピングの順番次第で価格の印象も変わる

 このようにいったん自分の中の価格ゾーンが上がってしまうと、そのあとの高い・安いの判断にも影響が出てしまいます。高い商品を手ごろ価格に感じたまま商品を選んでしまうと、後でカードの請求明細を見てびっくりということにもなりかねないからです。

 それを防ぐには、ショッピングの順番に気をつけることがポイント。

 買い回りの順序を、価格帯が高めの店→低い店ではなく、低い店→高めの店の順で回ることです。

 先に安めの店で買い物すれば、頭の中に低め価格のイメージがまず植え付けられるため、そのあと高めの店に入ったとしても、そっちの価格帯に引きずられず、冷静に判断ができるでしょう。

 ということは、誰かにちょっと高めのプレゼントをねだりたい時には、逆の手を使ったほうがうまくいくという理屈になります。

 本命の商品が少々高めかなと感じた時は、最初からその店に相手を連れて行かず、さらに上級ブランドの店へまず連れて行く。そこで、ハイプライスの値札をたっぷり見せておき、その後、本当に欲しい商品のある店に連れて行くと、わりとスムーズにお目当ての商品を買ってもらえるかもしれません。効果があるか、ぜひ一度試してみてください。

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