
「Getty Images」より
「タウンワーク」(リクルートジョブズ/10月28日配布)の「東京2020オリンピック・パラリンピックを支える仕事特集」で、パソナがボランティアと似た仕事領域のアルバイトを募集していた問題について、前号で記載した組織委への質問状に対する回答が12月5日に届いたので公開する。
オリンピック組織委はなぜ無償ボランティアと同じ業務の高額アルバイトを雇うのか?
10月28日に配布された「タウンワーク」(リクルートジョブズ)の表紙に「東京2020オリンピック・パラリンピックを支える仕事特集」の文字が踊っていた。…
最初に質問文とあわせて回答文を掲載しよう。
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ご質問いただいた5点について、下記にて回答いたします。
(1)今回のパソナの募集人数は何人でしょうか
大会スタッフ(職員)として、約2,000人の募集です。
(2)今回の人材募集に関する、組織委からパソナへの業務委託費を開示してください
事業全体としての発注ではなく、個別案件ごとの派遣契約となりますので、開示は差し控えさせていただきます。パソナは、他のパートナー同様に人材サービスカテゴリースポンサーとして、商品・サービスの提供の機会を有しています。
(3)8万人の大会ボランティアを無償で集めながら、なぜほぼ同じ業務内容の有償アルバイトを募集するのでしょうか。ボランティアの人数が足りないのでしょうか
元々職員は準備フェーズと大会時フェーズで「長期」と「短期」に分けて確保する計画です。長期間準備フェーズを支える職員は、これまでもそれぞれの専門性に応じこれまでも採用してきております。一方、即戦力として大会時に必要となる短期かつ大規模な人員については、採用計画に基づいてその多くをパートナーであるパソナ社の選考を経た方々を派遣いただき各会場に配置する予定です。選考にかかる時間、各会場に配置する時間等を考慮したうえで、この時期から募集を開始いたしました。
(4)ボランティアとアルバイトは同じフィールド(職場)で勤務するのでしょうか
(6)無償のボランティアが有償アルバイトと一緒に仕事しても待遇が違いすぎ、ボランティアから不満が出ることが予想されます。ボランティアにはどのように説明するのでしょうか。もしくは、すでに説明したのであれば、その内容を教えてください。
自主的に参加いただくボランティアと、組織委の職員として勤務いただく派遣社員では、活動期間や、役割や職務(活動)に対する責任の有無など、大きく異なります。
ボランティアは、どなたでも参加いただけるように(移動サポートを除き)資格などを要件としておらず、オリエンテーション・研修などを経て、8万人規模の方に大会時にそれぞれの活動分野で役割を担っていただくものです。
一方、大会時を担う短期の職員については、組織委の即戦力として、派遣会社の選考を経て採用され、派遣されます。なお、両者は役割や職務(活動)に対する責任の有無など、スタッフとしての性質が大きく異なり、代替の関係にはないと考えております。
職員は運営計画における企画調整、関係各所との連絡調整、業務の進行管理など大会運営全般に責任を持って関っていただくことに対して、ボランティアは、本人の自由意志のもとで大会運営に携わっていただくことになります。両者の役割や責任の所在等は異なり、代替の関係にはないと考えております。
(5)ボランティアとアルバイトの制服は違うのでしょうか
ボランティアも今回募集の大会スタッフも、今年7月に発表した同じユニフォームとなります。競技会場の装飾と調和しながらも、観客からの識別性を保ち、様々な年代、性別、国籍の方々が着やすいデザインです。
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以上、何とぞよろしくお願いいたします。
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
戦略広報課
組織委の姿勢は「アスリート」ではなく「スポンサーファースト」
結論から言うと、今回も要領を得ない回答が大半を占めた。
募集人数は2000人ということは分かった。
今回の募集に関するパソナへの発注額は明かされなかったが、通常の同社のマージンが約30%だと考えると、一人当たりの組織委からパソナへの支払額は時給にして約2200円、日給にして約18000円程度ということになるだろう。
派遣業務の中ではかなりの高給であるし、同じ現場で働く無償ボランティアからすれば、誰しも不公平感を抱くのではないか。
(3)の質問は、「8万人の大会ボランティアを無償で集めながら、なぜほぼ同じ業務内容の有償アルバイトを募集するのか」だが、これに対して「もともと職員は〜」と回答しているのはおかしい。私は職員の採用計画など尋ねていないのだ。
組織委は「長期と短期職員を募集しているだけだ」と強弁するが、長期と短期採用の人数割合は明かさない。「タウンワーク」で募集されている職種は大会ボランティアとほぼ同じであり、もし短期フェーズの職員がボランティアと同じ仕事を、同様の期間でするのであれば、やはり非常に不公平感が生じるのではないか。
同じことは質問(6)に対しても言える。私は不満を持つであろうボランティアにどう説明するのか、もう説明したのかと質しているのに、それには全く答えていない。私の知る限り、組織委はまだ全ボランティアに対して説明していない。
また、ボランティアには資格要件がないと言っているが、外国人要人や選手アテンドには語学力が必須であり、さらに医療スタッフに関しては医学的知識が求められるのは当然であるから、この回答もおかしい。
募集時に資格要件を書いていなくても、職種によって資格(または能力)が必要なのは自明である。それを、まるでボランティアには専門知識を求めていないと言うのは、高度な専門知識を有しながら無償を承知で応募した人を愚弄しているのではないか。
さらに「両者は役割や職務(活動)に対する責任の有無など、スタッフとしての性質が大きく異なり、代替の関係にはないと考えております」などと言っているが、パソナの広告には「社会人経験があればOK!」「アルバイトの場合はリーダー経験ある方」などと書かれていて、組織委が言うほど集めている人員の質が高いとは思えない。
さらに、語学や専門知識、資格の有無さえ応募条件になっていないのだから、高給に惹かれて集まった人材と、無償精神で集まった人々が同じ職場で仕事をした時、果たして組織委が唱える「ワンチーム」になれるのか、はなはだ疑問である。
最後に、今回のアルバイト募集は、わざわざスポンサーであるパソナに仕事を作ってやったように見える。8万人以上の大所帯を運営するために中核となるリーダーが必要なのは理解できる。しかし、たとえ有償でもそういう人材が必要なら、なぜ20万人が応募したボランティア募集時に、その中から有償で選抜しなかったのか。
最初から有償で長期間採用の職種があることを明示していれば、そういう人材も集まったはずである。そうすれば、わざわざパソナを噛ませて中間マージンを稼がせる必要はなかったはずだ。
「ボランティアはTOKYO2020を動かす力だ」(組織委HP)などと言って善意の人々を無償で集めながら、パソナにマージンを稼がせるために有償アルバイトを集める組織委の「スポンサーファースト」の姿勢は、もっと厳しく糾弾されるべきである。