ビリー・アイリッシュにウィニー・ハーロゥ 既成の美への挑戦が行われた2019年のアメリカ

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ウィニー・ハーロゥ

 白斑症のファッション・モデル、ウィニー・ハーロゥの活躍が、もはや止まる気配を見せない。昨年はついにスポーツ・イラストレイテッド誌恒例の水着モデルに選定された。

白斑のスーパーモデル、ウィニー・ハーロウ〜新たな「美」を突きつける

 アメリカのコスメ・ブランド、カヴァーガールが「白斑」のモデルをCMに起用した。 CMに登場するエイミー・ディーナは白斑の症状を持つ黒人のモデル…

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ビリー・アイリッシュにウィニー・ハーロゥ 既成の美への挑戦が行われた2019年のアメリカの画像2 ウェジー 2018.05.03

 ウィニーは胴と手足に白班が多く、もはやボディ・ペイントを施しているようにすら見える。同時にそれが他の誰にも真似のできない独特の美しさともなっている。

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ビリー・ポーター

 ビリー・ポーターはブロードウェイ・ミュージカル『キンキー・ブーツ』のローラ役で知られるミュージカル俳優だが、映画、テレビ、スペシャル・イヴェントなどで幅広く活躍し、昨年はファッション・シーンのアイコンともなった。

 「私は黒人で、ゲイで、アメリカでのキリスト教徒で、常にアウトサイダーだと感じます」と語るビリーは、2月のアカデミー賞レッドカーペットに品格のある見事な黒いタキシード・ドレスを纏って現れ、観る者に息を呑ませた。

 続いてMETガラでは光り輝く黄金の不死鳥コスチューム、トニー賞では赤いゴージャスなロングドレス、プライド・パレードではレインボー・カラーのドレスと、一年を通してファンション・シーンに刺激を与え続けた。

ダッパー・ダン

 ダッパー・ダンは、ニューヨークの黒人地区ハーレムにアトリエを構えるファッション・デザイナーだ。1980年代にルイ・ヴィトンなどヨーロッパの高級ブランドが流行した際、高級品に手がない顧客のためにフェイクのブランド品を作った。

 印刷機とインクを買い込み、ヴィトンのモノグラムをプリントして奇抜なコスチュームをデザインした。当時の人気ラッパーやアスリートに愛用されたが、やがてブランド側から訴えられ、ダッパー・ダンは露店でTシャツを売らなければならないまでに落ちぶれる。

 ところが2年前、グッチがダッパー・ダンのフェイク・デザインを模倣し、ランウエイで発表するという事態が起こった。伝説のデザイナー、ダッパー・ダンを今も愛するファンたちが「ダッパー・ダンへの敬意を示せ」と声をあげた。その結果、グッチとダッパー・ダンがコラボし、ハーレムに新たなアトリエが設けられた。

ダッパー・ダンによるフェイクのルイ・ヴィトン・デザイン(左)
グッチがダッパー・ダンを模倣したデザイン(右)

 以後、ダッパー・ダンは数多くのセレブの衣装を手掛け、書籍の出版、各種イベントへの出席など多忙を極めている。上記のリゾの衣装、下記のビリー・アイリッシュの衣装もダッパー・ダンによる。

美醜の常識・過去・未来

 昨年はヒジャブ姿のファッション・モデルの活躍、ナイキによるスポーツ用のヒジャブ、ムスリム女性用の水着ラインの発売もあった。

 こうした一連の事象はどう捉えるべきなのか。というのも、もし、あなたが標準体型であれば「肥満になりたい」とは、まず思わないだろう。「白斑症になりたい」とも思わないはずだ。

 だが、リゾにもウィニー・ハーロゥにも独自の美しさがある。それは彼女たちの才能、人格ともリンクするものであり、体型も含めて全てが一つになっての美しさなのだろう。リゾの体型やウィニーの肌のコンディションは確かに目を引く。だが、そこには彼女たちの人として、アーティストとしての美しさがあり、だから私たちは惹かれるのではないだろうか。

 ゲイのビリー・ポーターがドレスを纏うのも、ムスリム女性がヒジャブでファッションを楽しみ、スポーツを行うのも、当人たちにとっては当然のことだ。だが、(女装を好む)ゲイも、アメリカでのムスリムも少数派であり、かつキリスト教が土台のアメリカでは共に偏見の対象でもある。そのアメリカ社会でセレブが堂々とドレスやヒジャブをまとい、大手ブランドが販売を行うことには大きな意味がある。

 ところで、ビリー・ポーターのドレスは”女装”と呼ぶべきなのだろうか?

 一方、外観で判断されたくないという理由で、体型が全くわからない衣装を着るビリー・アイリッシュがいる。スリム・ティックやヒップの大きさで甲乙をつけられるのは女性だ。ビリーはそうした女性の置かれ方に異議を唱えているのだ。

 ファッション界において他のデザイナーの模倣がタブーであるのは、今も昔も変わらない。しかし、ダッパー・ダンはファッションと社会階層(貧富の差)の関係を嗅ぎ取り、フェイクのヴィトンを生み出した。それがのちにグッチという一大ブランドに模倣され、今は押しも押されぬファッション界のアイコンとなった。そして、時代の落し子であるリゾやビリー・アイリッシュの衣装を手掛けている。

 たかがファッション、されどファッション。2020年も時代は変化を続ける。私たちはそれに追い付いていかねばならないのだ。
(堂本かおる)

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