就活セクハラ加害者は、採用権を持たない社員が多い。身を守る3つのポイント

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「Getty Images」より

 就活セクハラが横行する背景には、「公権力すら介入しにくい会社という閉鎖的な空間」「弱い立場の労働者がさらに弱い立場の就活生を隷属させる心理」がある。

 もちろん、こういった状態から就活生を保護するには、法的な規制は絶対に必要だ。しかしそれと並行して、就職活動を行う前に就活生に対して労働市場での自分の価値を意識させることも重要ではなかろうか。

 就活生は当然のことながら社会人経験がない。それがゆえに、大企業から内定をとることだけに注力しがちだが、就職活動は、自分が会社に労働力を提供することで、自分が納得できる待遇を得られるか交渉する場である。そのことをどれだけの学生が理解しているだろうか。

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就活セクハラ加害者は、採用権を持たない社員が多い。身を守る3つのポイントの画像3 ウェジー 2019.12.24

脱大企業を意識することで就活セクハラのリスクは減る

 自分が納得できる条件というのは、給与面だけではない。働きやすさなども条件に含まれる。就活生はステレオタイプな企業の評価だけではなく、生活の糧を得られて、自分を尊重してくれる働きやすい職場を見つける一つの指標を持つべきだ。

 新卒で就職活動をする学生に対し、そういったことを熟考するように学校側は指導しているだろうか。

 企業のネームバリューや年収だけで就職先を判断せず、自分の適性やライフスタイルを加味した上で就職先を探せるようになるスキルが身に付けば、就職先の選択枝は格段に広がる。

 内定が得られるであろう企業の候補数が多ければ多くなるほど、必然的に就活セクハラにつながる理不尽な要求をされても、毅然とした態度を取れるようになるだろう。

 すべての就活生が安定した終身雇用を求めているわけではないだろうが、そもそも、今は大企業でも倒産する時代だ。また、ネームバリューこそないものの、経営が極めて安定していて、終身雇用に等しい形で働ける企業も少なからずある。

就活セクハラから身を守るポイント

 厚生労働省も就活セクハラの対策に身を乗り出したが、とはいえ、残念ながら社会がすぐに就活セクハラを撲滅できるかといえば難しい。苦々しい思いではあるが、就活セクハラ身を守る方法、被害に遭った際の対応について、個々人が知っておいたほうがいいだろう。

 以下に私が実際に相談を受けたケースについて例証したい。

・OB訪問 インターンは特に気をつける

 私が相談を受けた中で、もっとも被害が多かったのはOB訪問やインターン中のセクハラ被害である。

 実は、採用権を持っている人間や役職者による加害は少ない。したがってセクハラに対して毅然とした対応を取っても、採用の可否に影響しないケースが全体として多いと言える。

 セクハラ被害に遭遇した際、すぐに行動に移すことは心理的に難しいかもしれないが、まずは室外に出たりするなどして身の安全を確保し、インターンの場合は次の会社訪問日には会社に出向かず、親や学校関係者に急いで相談してほしい。

・証拠の保存を意識してもらう

 多くの就活生が、就活セクハラにあった会社から内定をもらっても辞退している。しかし、就活セクハラを受けたものの、採用担当者個人の加害であり、会社自体には入社を希望したいと考えるケースもあるだろう。

 そのような場合は、証拠の保全が必要になることを意識してほしい。たとえば、メールやLINEなら必ず保存し、いやがらせの発言なら録音しておくとよい。

 会社は閉鎖的な空間であり、相手に謝罪を求めるにしても加害の事実を客観的に立証する必要がある。

 そのような事態に遭遇した就活生から相談を受けたことがあるが、証拠を保全してもらい、弁護士を通じて会社側に申し入れをしてもらったところ、採用担当者を懲戒解雇にするので内定を出したいという回答をもらったと連絡を受けた。

 実際にその会社に就職するかはさておいて、被害の示談を行う場合にも証拠は必要になるので、保存しておくことをオススメする。

・回答にいったん間を置き第三者に相談する

 メールやLINE、電話でのいやがらせが発生している場合、就活生にはタイムリーに応答せず、いったん間をおいて親や学校関係者などに相談してほしい。

 就活生がタイムリーに応答しないと、加害者が採用をちらつかせたメッセージを送ってきたりするケースもまま見受けられる。これは、先に述べた弱者を隷属させる心理的な関係が破綻する焦りからくる脅しである。したがって、間を置いたほうが決定的な証拠が生まれるケースが多い。

 そもそも、仮に相手が人事権を持っていたとしても、いいなりになったからといって内定をもらえる保証はない。また先に述べたように、就活セクハラを受けて内定をもらっても、ほとんどの女子学生が内定を辞退している。このような実態を念頭に置いておけば、冷静な対応が可能になるのではないだろうか。

 就活生に自衛の方法を教えることは健全ではないし、また最良の方法でもない。しかしながら、先に述べたように(※前編のURLを貼る)、会社は公権力すら介入しにくい閉鎖的な空間となっており、その中で起きた違法行為について、社会全体が「犯罪」として糾弾しないのが現状だ。

 弱い立場であるはずの労働者同士が分断を起こし、さらに弱い立場である就活生に矛先を向けている。この現状を鑑みれば、就活生に自衛の方法を教えることは、これから社会に出ていく若者を守るためのひとつの方法だろう。

 もちろん、大学をはじめとした就活の支援者は、相談窓口を設けるなど、対策を練る必要がある。就活セクハラの撲滅をはじめ、全ての人が健全な状態で働ける社会を構築するには、我々全員が法と倫理を遵守する意識を高め、根本的な問題の解決について行動していくことが重要なのは、言うまでもない。

(監修/山岸純)
(執筆/松沢直樹)

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