
「GettyImages」より
トランプ大統領はサンタクロースのように、米国の農民ばかりか、株式市場にも大きな「クリスマス・プレゼント」を運んできました。米中通商交渉の第一段階の合意です。
クリスマス・ホリデーに向けて盛り上がる12月13日のことでした。トランプ大統領は「米国の農家にはビッグ・プレゼントだ」と言いましたが、これを機に、米国株式市場では連日のように株価は最高値を更新しています。
実際、それまで株式市場には最大のリスク要因となっていた米中摩擦が、この日の「第一段階の合意」によって、不安から融和期待に変わりました。これまで株式市場で圧迫されていた分、期待によってこれが解放された喜びは大きくなり、株価の反発も大きくなります。
しかも、このところ中国経済の指標には、いくつか「景気の底入れ」を期待させるものが散見されるようになっていました。それだけに、この「プレゼント」が相乗効果を持ったようです。
たとえば、市場が注目する製造業のPMI(購買担当者景気指数)のうち、国家統計局が作成する分が11月になって景気の上昇・下降の分岐点となる50を上回りました。
これと呼応するように、11月の中国の生産も前年比6.2%増と、久々に高い伸びを示し、これまで減少を続けていた輸入も11月にはプラスに転じました。国内の需要が回復して原材料などの輸入が増えたと見られます。
これらが中国景気の底入れを期待させる中で、米中間で懸案となっていた通商交渉に、第一段階とはいえ、合意に至ったことが、中国経済には支援材料になるととられたからです。
プラス・マイナスで見れば中国側が大きな負担
実際、中国経済にとって大きな負担となっている米国の関税については、12月15日予定されていた1600億ドル弱の中国製品に対する追加関税が回避され、9月に1200億ドル分に課せられた15%の関税が7.5%に引き下げられました。
これまでの関税が中国経済の減速、悪化の大きな原因となっていただけに、追加関税の回避や一部の軽減措置は助かることは事実ですが、これまでかけられた関税の太宗は残ります。
中国としては、この負担となっている関税をすべて撤廃する方向で交渉していただけに、米国に押し切られた形になります。
米国にしてみれば、交渉で合意せずに12月に追加関税を課すこともできたのですが、それでは中国経済が持たないとの判断があり、キッシンジャー元国務長官を中国に派遣し、「死刑宣告」は回避して、中国に時間の猶予を与えることにしたと見られます。
もちろん、ただで中国を救済するわけではありません。トランプ大統領としても、支持母体の米国農家が米中摩擦の影響で破綻するケースが増えているだけに、彼らを救済し、選挙にプラスとなる「ディール」が必要でした。
このため、中国に関税軽減措置を与える見返りに、中国は米国の農産物を大量に購入するなど、大きな負担を強いられることになり、プラス・マイナスで考えれば、中国側が大きな「持ち出し」になりました。