中国が切れるカードがなくなる
米国からの輸入増だけで中国にはこれだけの問題が引き起こされますが、「第一段階の合意」のなかには、これ以外に知的財産権侵害の防止、海外企業への技術移転の強要禁止、金融サービス分野で外国資本に市場を開放、人権問題への関与、まで入り込んでいます。1月に文書化しますが、中国がどこまでこれを書き込むのか、逃げ道を残せるかが大きなポイントになります。
具体的に書き込まれ、これを定期的に米国がチェックするとなると、中国政府には「余計な内政干渉」となり、そのまま受け入れれば習近平政権には国内から「弱腰」との批判も出かねません。
情報を隠蔽し続ければ別ですが、米国からの情報まで封印できるかどうか。少なくとも、香港や新疆ウイグル問題は、一般国民の耳には入れないと言っているので、これらを含んだ合意文書の公開もできなくなります。
さらに、米国は次の「第二段階」「第三段階」の交渉に入ると言っていますが、その際に中国が切れるカードがありません。米国が求める「中国政府による国有企業への補助金禁止」は、今回の合意には入っておらず、いずれ取り上げられる可能性がありますが、中国はこれを受け入れることはできません。体制崩壊にもつながりかねないからです。
そこで新たに米中交渉となれば、中国は不利な条件での交渉となり、改めて上乗せ関税の危機に直面します。
新年の株式市場は晴れのち雨
現在の世界の株式市場は、米中協議の合意を歓迎し、リスク投資を刺激する形になっています。
中国政府も当面は何もないかのように情報を隠蔽し、トランプ大統領が再選されないことを祈ることになるでしょうが、どこかで米国のチェックが入り、履行状況が確認されます。そこで約束不履行となれば、米国から追加関税をかけられ、一気に市場の雲行きが怪しくなります。
米中合意をはやして祝賀ムードが盛り上がると、その宴が華やかなほど、その「宴の後」の相場反落も大きくなります。株式市場参加者にとっては、合意の実態を理解し、その隠蔽がどこまで可能かの見極めも重要になります。2020年の株式市場では、突然の雷雨に要注意です。