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5Gの次「6G」開発にもう着手した中国、ファーウェイの野心

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「GettyImages」より

 9月3日、中国の中央に位置する四川省の成都で、華為技術(ファーウェイ)主催のフォーラムが開催された。ここは三国志の時代には劉備が打ち立てた蜀の都だったところだ。温暖で水運が発達したため、唐の時代にも栄えたという。

 この成都で、最先端の通信事業で世界市場を狙うファーウェイが発表したのは、ジャイアントパンダの繁育施設の通信設備だった。

5Gインフラの先端都市成都

 フォーラムが行われたのは「成都ジャイアントパンダ繁育研究基地」。この約100ヘクタールの敷地では170頭以上のパンダが育成されている。

 ここに、5G対応の繁育施設を建設しているというのだ。

 ファーウェイのブログによると、この成都にはすでに1,800もの5G基地局が設置されていることが明らかにされている。このインフラが成都の人たちのモバイル端末に毎秒1ギガビットのダウンロード速度を提供しているのだ。

 このことが、ファーウェイがこの地をフォーラム(Huawei Asia Pacific Innovation Day 2019)の開催地に選んだ理由だった。

 このイベントにはインド、シンガポール、オーストラリア、韓国、タイ、インドネシア、中国から参加者が集まった。日本からも参加している。そして、これらの参加者がヘッドセットを装着すると、この世界的に有名なパンダの繁育基地を360度のバーチャルビューとして体験することができた。

5Gのインパクトとは

 成都の5Gインフラとパンダの繁育施設を5G対応にしたことは、大きなインパクトだ。まず、5Gについて簡単に復習しておきたい。

 2019年12月現在、日本の私たちがスマートフォンなどのモバイル端末で利用している通信規格は4G(LTE)だが、5Gはこの4Gの100倍の通信速度になるといわれている。

 たとえば、2時間の映画をダウンロードするのに5分程度かかっていたとすれば、5Gになることでわずか3秒で済んでしまう。

 このインパクトは大きい。

 たとえば、現在ウェブカメラを通して外出中にペットの様子を確認したり、ウェブ会議を行ったりすると、通信速度による映像の遅延を感じる。

 これが5Gになれば、そのタイムラグはわずか1000分の1秒以下となるため、ほぼ遅延を感じなくなるだろう。また、1平方キロメートルあたりで100万台もの端末を接続でき、しかもこれまでより少ない消費電力で賄えるというから驚く。

 日本でも来年には5Gが実用段階に入る予定で、レスポンスの速さが必須の遠隔医療や自動運転への導入が期待されている。

 また、接続できる端末の数が爆発的に増やせることから、5Gは物流などへのIoTの導入にも欠かせないとされている。

 ただ、5Gにも弱点はある。高周波数帯を使うため、障害物に弱いのだ。そのため、通信基地をあらゆる方角に設置しておく必要がある。また、通信の高速化と端末の増加は、その分セキュリティ上のリスクが高くなることも懸念されている。

なぜ、パンダの繁育施設に5Gなのか

 話をパンダに戻す。なぜ、パンダの繁育施設に5Gなのか?

 パンダは繁殖が難しい動物だ。それは、雌が受胎できる期間が1年間のうちわずか数日しかないことと、雄の発情期もごく短いということにある。しかも、単独行動を好むパンダは、繁殖期以外に引き合わせてしまうと、ケンカになってしまうのだという。

 そこで、両者が繁殖に適したわずか数日のマッチング期間を見つけ出して引き合わせる必要がある。このわずかな繁殖期間を見つけるために、5G通信対応のカメラとマイクでパンダの状態を常時捉え、繁殖期特有の鳴き声を発するとAIが自動的に検出して知らせる施設を作ることになった。

 この5Gのインフラをファーウェイが提供するのだが、同社がフォーラムで見せたかったのはパンダではあるまい。

 確かに、パンダのレンタルは「パンダ外交」と呼ばれ、中国の外交では重要な動物である。また、パンダは以前国際自然保護連合(IUCN)において「絶滅危惧種(endangered)」だったが、中国政府が国家的な保護活動を行ったことで生息数が増え、現在では「危急種(vulnerable)」に格下げされている。

 その意味からも、ファーウェイは動物保護活動にも協力しているという好感度アップを狙える。しかし、それ以上に示したかったのは、この成都をはじめとして、同社が5Gのインフラ実績を着々と積み上げてきている事実だったのではないか。

5Gの次へ

 ファーウェイは安全保障上の理由から米国による制裁を受けているが、5Gに関する技術力では世界トップクラスにある。それに加えて、成都をはじめとする商用サービスの実績でも飛び抜けている。

 前述のファーウェイのブログによれば、今年(2019年)末までに、北京、上海、広州、深圳などの都市を含む中国全土での商用5Gサービスをサポートするために約100,000の5G基地局が設置される予定としている。また、5G対応のスマートフォンとルーターも、多くのサプライヤー経由で入手できるようにしてある。

 さて、日本では2020年春頃に5Gがスタートする。通信インフラや技術にかかわらず、デフレ期に緊縮財政に固執するという亡国的な政策を採る日本が、あらゆる分野で世界に後れを取ることは当然だ。

 こうして日本がもたついている中、さらに驚くべきニュースが届いた。

 11月7日、中国の科学技術省が発行する科学技術日報が、次々世代通信技術である「6G」の調査研究を開始したと報じたのだ。

 まだ5Gが始まったばかりだというのに、中国は既に次の世代に着手したということになる。

パンダの向こうに日本の衰退が見えてきた

 6Gとはいったいどのような通信速度なのだろうか。5Gの通信速度は商用で20Gbps程度であり、NTTの試験では100Gbpsまで出せた例もあるという。これが6Gになると約1Tbps(1TBは1,000GB)になると言われている。また、接続できる端末数も5Gの平方キロメートルあたり100万台から1,000万台になるという。

 もはや通信による遅延も体感できないため、6Gを利用したサービスでは、その背後で通信が行われていることすら忘れてしまうはずだ。

 もっとも、科学技術省も「6Gは初期段階にあり、技術ルートはまだ明確ではなく、主要な指標と適用シナリオは標準化および定義されていない」と述べている。

 つまり、まだ6G時代の世界を想像することは難しい。

 経済産業省の資料によれば、主要国の研究開発費における政府負担割合は高い順にこうなっている。

フランス34.59%

英国27.98%

ドイツ27.89%

米国24.04%

韓国23.66%

中国21.26%、

台湾21.07%

 日本は15.41%と際だって低い。自国通貨の発行権を持っている国が、財政破綻という都市伝説に踊らされて、緊縮財政というなんとも貧乏くさい国に成り下がっているのだ。この貧乏くささは、社会保障にも、食糧自給率にも、教育にも、公共投資にも悪影響を与えており、デフレ悪化に貢献している。既に衰退国へ向かっているといえる。

 ファーウェイがパンダの繁育施設に最新技術を投入し、早々に6Gへの開発に着手している中国を見て、日本の衰退を予感することになってしまった。

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