
「GettyImages」より
サッカー元日本代表の本田圭佑氏のTwitter投稿が、波紋を呼んでいる。今月25日、本田氏は以下の文章をTwitterにアップした。
<どうやったら生活が豊かになるか?その答えは僕らの先祖が手本として見せてくれたんではないんですか?
先祖が築いた元々ある信用と富で、周囲と比べ、悩み、文句だけを言っても何も変わらないことは皆さんが分かってるでしょう?
自分を変えて行動することでしか状況を良くする方法はないんです>
本田氏の投稿は抽象的であり、「豊かになる」が具体的にどのような状況を指しているのかわからない。
しかし「お金を稼ぐためには自分で行動するしかない」と読み取り、「貧困は自己責任」だと解釈した人々の間で賛否が分かれている。
投資家として巨万の富を得る本田圭佑
本田圭佑氏は、サッカー選手や指導者としてだけでなく、エンジェル投資家として積極的に活動している。
本田氏は2016年に「KSK ANGEL FUND」を設立し、2018年には、ハリウッドスター・ウィル・スミスと共に、スタートアップ投資をする組織「ドリーマーズファンド」も結成。
「KSK」では、クラウドファンディングサイト「Makuake」などを展開する会社「マクアケ」に2016年から投資をしている。同社が今年11月にマザーズ上場した際、「KSK」は一部の株を売却し約3億9000万円の投資利益を得たと、今月19日に「文春オンライン」が報じている。同誌によれば、現在の持ち株の資産価値は約50億円に上るというからすさまじい。
本田氏は「行動して稼いでいる富裕層」だ。たったひとつのツイートから真意は読み取れないが、彼自身の歩んだ道のりが「自分を変えて行動すれば状況が好転する」のひとつの根拠なのだろう。
富裕層に同調したがる一般ユーザー
さて、本田氏と同じく富裕層といえる実業家の堀江貴文氏が、「日本終わってる」と嘆く声を「お前が終わっている」と一刀両断したことを覚えているだろうか。
今年10月、堀江氏はあるネット掲示板の「手取りはわずか14万円で何も贅沢出来ない生活。日本終わってますよね?」と嘆く投稿を取り上げたネットニュースを見たといい、感想として以下のつぶやきをした。
<日本がおわってんじゃなくて「お前」がおわってんだよwww>
この投稿は炎上し、堀江氏は後日、自身のYouTubeチャンネルで意図を説明している。
堀江氏は、インターネットが発展し情報が民衆化した今の時代、ビジネスはいくらべでも転がっており、簡単に稼ぎを増やすことは可能なのだから、それをやらない方がおかしいという。
動画の最後は、<僕の発言に対して批判しているやつらは、お前がやっぱり終わってるんだよ!>と締め括られていた。
こうした主張に賛同する一般ユーザーは、実のところ少なくない。
堀江氏の<お前が終わってる>ツイートのリプライ欄には、「その通りだ!」という返信が多数ついていた。
<さっさと転職すればいいだけのこと>
<努力をしてもっと会社から求められる存在になるべき>
<自分の給料の安さを国のせいにするな>
このように、彼らの理論をそのまま譲り受けて貧困者を叩く浅薄さが目につく。しかし、本田氏や堀江氏の生活は、日本の“一般”とはフィールドが違いすぎる。
時間あたりでみた日本人の賃金は1997年と比較すると、7%強減っている(経済協力開発機構の調査結果より)。そして消費税は10%に増加した。消費は冷え込んでいるが、大企業の内部留保は膨れ上がり、賃金は上昇しない。低賃金で働く人々は、良き消費者にはなり得ない。一部の富裕層はより豊かになるが、そうでない人々はどんどん貧しくなるという悪循環が続いている。
真面目に働いているつもりでも企業に使い捨てられ、投資や起業はおろか貯蓄すら満足にできず、将来への不安を募らせる人々にとって「手取りはわずか14万円。日本終わってる」という認識は事実だろう。この貧しさは個人の努力の問題に到底回収できない、社会構造の問題である。
今の日本は、「個人の行動や努力次第で貧困から抜け出せる」といえる、機会の均等な社会だろうか。