「他人」との共同生活に必要な、察するコミュニケーションの排除 アラフォーが女同士でルームシェアをしてみた結果

文=藤谷千明
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「Getty Images」より

 1年前から同年代で似たような趣味を持つ女性4人でルームシェアを始めた。理由は、身体を痛めて心細い、オタクなのでモノが多いのをなんとかしたい、家が会社から遠い……など様々だが、「面白そうだから」と、なんとなく集まったオタクのアラフォー・アラサー4人で物件探し、賃貸契約を結ぶに至った。

アラフォー女性4人のルームシェアは「家族でなくても共生しやすい社会」の実践

 1年前からアラサー・アラフォーの女性4人(なお全員なにかのオタク)で、ルームシェアをしている。 ルームシェアというと、期間限定で若い人がや…

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「他人」との共同生活に必要な、察するコミュニケーションの排除 アラフォーが女同士でルームシェアをしてみた結果の画像2 ウェジー 2020.01.01

 紆余曲折はあったものの、はれてルームシェアをスタートさせることになった我々。まずは、最初に家賃分担と共有費の使い先を決めることにした。本音をいえば、全員バラバラで賃貸契約を結びたかったが、これを書類の上で認めてしまうと、誰か1人欠けてしまった場合でも、残りの3人は同じ額しか支払わなくていいことになってしまうため、家主にとっては損しかない契約になってしまう。なので私が代表として契約を結び、他の3人から徴収するという方式になった。

 家賃の21万円を4等分する案もあったが、会社員で家にいることが少ない者と、在宅時間が長いフリーランスで均等にわけるのは、不平等な気がしたため、部屋の広さや在宅時間を加味して分けることにした。

 ちなみに私は現在6万円を負担している。毎月15,000円ほど共有費として積み立てており、そこから米や野菜などの食料、日用品購入や光熱費などの必要経費を捻出している。クレジットカードや口座は私名義のもので一本化しており、今の所とくに不便は感じていない。

共同生活

 家事は「Wonderlist」というTODOアプリでルーティン化するように管理し、誰がどれをやるなどは特に決めず、それぞれが掃除を済ませて、アプリで共有している。

 また、朝のゴミ出しは会社員、毎日の水回りの掃除や宅配便の受け取りは、おのずとフリーランスがやることになっているが、「キッチリ決めすぎると負担になりそう」という理由で、明確な分担はない。それでなんとなく1年間家事が回っているので、きっと我々にはこのやり方があっているのだろう。

 これまで、自衛隊の寮生活(あ、私、元自衛官です)、姉妹とのルームシェア、異性との二人暮らしなどを経験してきたものの、どの関係においてもやっぱり「察する」コミュニケーションはできるだけ排除したほうがよいのだと思う。

 「察する」コミュニケーションがメインになると、相手のためによかれと思って家事などをやると、相手には「見えない」ことも多いので、「私はこんなにやってるのになあ」と不満を抱えてしまい、双方の機嫌が悪くなったりすることもある。

 「やってほしいこと」「やったこと」は可視化したほうがスムーズに行くのは、恋人でも夫婦でも同じことだけれど、4人もいるので、なおさらそこには気をつけたいと考えている。そのため、記録の残るアプリや、LINEグループでの文字ベースコミュニケーションで報告することで、「言った言わない」問題をできるだけ回避した方が快適だ。これは我々全員がテキストベースのコミュニケーションのほうが得意なオタク気質であることも関係あるのかもしれない。

個人的な見解だが、共同生活において必要なのは、

・衛生観念
例えば、タオルを毎日変えるか、調味料は冷蔵庫に入れるべきかなど、小さなことで積もったらトラブルになりがちなのが衛生観念。共有の場所、ものに関しては、「それが気になる人にできるだけ準拠する」をモットーとしており、今の所均衡は保たれている模様。

・経済観念
共有の食料品を毎回成城石井で買われても困るし、待機電源全部殺す人間がいても、逆になんでもつけっぱなし人間がいても揉めると思う。あまりケチケチせず、しかし共有で買うものは、まず相談しようというスタンスになっている。「スーパーのPBブランドのラップはとても安いが使いにくいから、値は張るがサランラップにしよう」とか。

・貞操観念
誰か一人がものすごい頻度でパートナーを連れ込んだりすると多分揉めると思う。これは聞いた話だが、「どっちも恋人を連れ込んでいたので、お互い様だったからトラブルはなかった」というケースもある。

 この3点がそこそこ一致していることが大事なのかと考えている。「そこそこ」なので、ズレた部分はその都度話し合えばいいのではないだろうか。

人間関係

 貞操観念で思い出したのだが、「女4人で暮らしていて、誰かが結婚したりして出ていったらどうするの?」という質問はよくいただく。

 どうするもこうするも、アラフォーともなれば、結婚のような大きなイベントを行う場合、一般的に準備に半年くらいはかかるだろうし、その間に新しい同居人の募集をかければいいと思っている。「明日にでも出ていく! ハワイで挙式する!」くらいの恋ならば、それはそれで「運命じゃ〜ん!」と応援したいので(だって〜、そんな事が起きたら絶対おもしろいじゃないですか〜)、当面の家賃くらいは負担する心づもりだ。

 21万円を3人で割ったところで1人あたり7万円、そこまでコストパフォーマンスが悪いわけではないし。ある程度流動性があるということは、一応想定はしている。できれば長く住みたいけれど。

 友人同士のルームシェアの場合、全員のパワーバランスが、そこそこ対等だと思っているので人間関係は安定しているように感じる。4人で暮らしはじめて1年近く経過し、ふりかえってみると様々な事件が……ない。マジで人間関係においてなにかしらネットコラム映えする(なんだそれ)ドラマが起こった記憶がない。

 「いい意味で他人行儀」なことが、この生活の継続には必要なのかもしれない。ほかには、リビングが広いこともあり、共通の友人を自宅に招待することが多く、それも風通しのよさにつながっているのだろう。

 また、いきなり表札が4つもある集団が引っ越してきたとなれば、近隣住民が警戒するのではないかと、入居時に「ご近所」に対しての挨拶は行った。現在隣のご家族とは、適度におすそ分けしたり、挨拶する仲になっている。

 この「適度」が大事というか、過去に住んでいた家のご近所の老夫婦と懇意なったところ、気がついたら彼らの血縁にあたる独身男性に自分の写真を送られていたという状況になったことがあり、こちらが「家族ではないが、ゆるやかな関係」と思っていたものが、「マジで家族にさせられる」フラグになってしまうこともある……。人間関係、色んな思惑があるのだなあと痛感させられた出来事であった。

シスターフッド?

 「よく4人もいて生活が続くね」といわれることもある。そもそも、全員何かしらのオタク趣味を持っているので、休日は観劇やらライブやら同人イベントやら何かしらのために出かけている。つまり「あんまり顔を合わせない」のだ。

 もちろん一緒にイベントに出かけたりすることもあるが、全員ジャンル違いなので、それも頻繁におこるわけではない。「今日はライブだから夜遅くなります。お風呂はお先にどうぞ」「冷蔵庫の中の牛乳が切れているので、誰か帰りに買ってきてください」といった具合に、淡々とLINEで連絡をとるというコミュニケーションが大半だ。

 仲が悪いというよりは、「元々そういう距離感」というだけの話というか。個別に独立した人間たちが、様々なメリット(部屋が広いとか)によって「手を組んでいる」状態なので、これはこれで、わりと快適だ。

 思うに、家族愛や恋愛感情などの、関係性によるクソデカ感情が挟まらないので、そこに快適さを感じているのかもしれない。要するに「家族だからこうしなきゃ!」といった、思い込みの重力から開放されているように感じる。もちろん、そういった重力のないご家庭も多数あるだろうが、私はわりと関係性に思い込みを重ねてしまう面倒なタイプなのだ。逆に家族や恋人よる関係性からの承認がほしい(近くにいてほしい)タイプだと、こうした生活は難しいのかもしれない。

 そんなこんなで、わりとアッサリとした関係やっている我々だが、例外として、趣味に関して何か事件が起きた時は、リビングで「聞いてよ〜」ということは発生する。なお、「ポジティブなこと」はSNSでも共有できるが、「ネガティブなこと」は共有しにくいため、虚無感しか残らない映画や舞台を見た日の夜は「聞いてよ〜」が盛り上がってしまいがちだ。そういう意味では、リビングに「もうひとつのSNS」が偏在しているような感覚がある。

 ほかになんとなく決まっているルールは、同居人の誕生日を祝うのは、誰がはじめたわけでもなく、なんとなくやることになっている。その時は全員集合し、近所の友人なども招いて「お誕生会」を行ったりもする。小学生か。ただ、小学生レベルのことを大人が全力でやるのは、わりと楽しい。次の「お誕生会」は、バカでかいくす玉を用意してやろうと思っている。

 よくこういう暮らしをしていると、「シスターフッドだね」と言われることは多い。バカでかいくす玉を用意することを含めて、そう呼ぶのかはわからないが(多分呼ばない)、とりあえずは、このまましばらく暮らしていくつもりではある。

本記事の筆者・藤谷千明さんの連載「他人暮らしはどうですか?」をスタートしました!

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