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吉本興業のパワハラ恫喝問題は解消されたのか? 背景にある松本人志の権力

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吉本興業ホールディングス株式会社公式ホームページより

 2019年は吉本興業が大きく揺れた年だった。

 6月に「FRIDAY」(講談社)が報じた、入江慎也(カラテカ)、宮迫博之(雨上がり決死隊)、田村亮(ロンドンブーツ1号2号)ら芸人たちの「闇営業」をきっかけに、吉本が抱えていた問題が次々と炙り出された。

 12月20日、一連の問題を受け設置された有識者会議・経営アドバイザリー委員会が中間取りまとめを公表した。

 それによると、「闇営業」については今後、タレントに直接依頼があった仕事でも報酬の有無に関わらず、まずは会社に連絡を入れるかたちになり、会社が依頼側について調査したうえで仕事を受けるかどうかが決まる。そして報酬も依頼側から直接ではなく、吉本を通じてタレントに支払われるようにするという。

 吉本をめぐる一連の議論のなかでは、タレントとの契約の在り方も問題となった。これについて吉本は、すべてのタレントに「書面での専属マネージメント契約」「書面での専属エージェント契約」「口頭契約(この場合は「所属覚書」を交わす)」の3パターンを選択してもらい、報酬などのルールを明確にするという。

「俺にはおまえら全員クビにする力がある」はパワハラではない?

 一連の騒動で問題となった部分が少しずつ見直されている一方、大崎洋会長と岡本昭彦社長に権力が集中する歪な構造や、それによって生じるパワハラの問題は、すっかり風化してしまった感がある。

 7月20日に宮迫と亮が開いた会見で、ふたりは岡本社長によるパワハラを訴えた。彼らは6月に謝罪会見をしたいと吉本上層部に伝えたが、岡本社長は「やってもええけど、ほんなら全員連帯責任でクビにするからな。俺にはおまえら全員クビにする力がある」と言ったという。

 この問題について吉本側は、アドバイザリー委員会に「危機管理の点でやむを得ざることだった」と報告している。

 このやり取りは今回の問題を象徴していると同時に、今後を暗示するものでもあるのではないだろうか。

トップが責任を取らない組織

 7月22日放送『スッキリ』(日本テレビ系)のなかで司会の加藤浩次(極楽とんぼ)は、「今の社長、会長の体制が続くんだったら、僕は吉本興業を辞める」と宣言した。

 加藤は後日、吉本側がマネージメント契約の他にエージェント契約の契約方式も取り入れることに合意したため吉本に残り続けることになったが、この発言は至極真っ当なものである。

 「闇営業」問題はそもそも、タレントのギャランティの少なさや、事務所のマネージメントの不備に原因がある。

 そうした組織の問題を放置してきた企業トップに責任があることは明白。トップが辞任し新たな人事のもとで組織の在り方を見直すのが通常のやり方だろう。

 しかし吉本の場合は、そうはならなかった。大崎会長、岡本社長ともに「1年間の50%減俸処分」にとどまり、会長職・社長職にとどまり続けたのだ。

会長・社長の留任。背景にある松本人志の権力

 彼らが辞めたとして、代わって指揮を取れる人物が吉本にはいない、という可能性もある。しかしそもそも上層部が固定化し、有望な人材が育成できていないとしたら、それもまた組織として問題ではないのか。

吉本興業は現在、政府や省庁の仕事も請け負う巨大企業であるが、吉本をここまで成長させたのはダウンタウンであると言って過言ではない。そして松本人志は実質、ナンバーワン権力者に近い存在だろう。

 その松本人志が、宮迫らの会見を受けて緊急生放送と銘打った7月21日放送『ワイドナショー』(フジテレビ系)のなかで、大崎会長の進退に話がおよぶと、「それは僕は全力で止めます。大崎さんがいなかったら僕も辞めるので。うちの兄貴なんで。大崎さんがいなくなったら僕は(吉本を)辞めますね」と述べたのだ。

 松本軍団と化している上層部に意見を主張しづらい、という下々の芸人たちの声は、無視された。

 大崎会長はデビュー時からダウンタウンの面倒を見てきた社員であり、岡本社長、藤原寛副社長はダウンタウンの元マネージャーである。

 吉本の経営トップはダウンタウンの人気を背景に権力を握り、松本もまた近しいスタッフが吉本内で力をもつことにより発言力を強めていく。

 「週刊文春」(文藝春秋)7月25日発売号によれば、吉本興業はこの構造を背景に権限が一部の人間に集中し、そこから外れると発言権がなくなる状況だという。

 7月22日に開いた会見で、岡本社長は「タレントさんや現場の人たちと真摯な姿勢で話を聞く」と語り、仕事のやり方を改めると述べた。

 ただ、権力が一部の人間に集中する構造そのものが解消されない限り、いくら心根を改めたところで、社員やタレントが自分の意見を言えない(言いにくい)ことに変わりはないだろう。

 大崎会長と岡本社長がトップにい続けるような状況である限り、反社チェックや契約の在り方を見直すだけでは、風通しの良い組織になったと言えないのではないだろうか。

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