エンタメ

YouTuber「好きなことで、生きていく」から5年 何が炎上し、何が変わったか

【この記事のキーワード】
YouTuber「好きなことで、生きていく」から5年 何が炎上し、何が変わったかの画像1

YouTubeより

 いまや、「子供のなりたい職業」調査にYouTuberがランクインすることは当たり前になった。TVバラエティだけでなく、アニメのキャラクターになったり、音楽番組、ロックフェスにもYouTuberが出演したりことも珍しくなくなり、YouTuberの視聴年齢層も広がった。「好きなことで、生きていく」職業は市民権を得たようだ。

 この「好きなことで、生きていく」は、2014年10月から不定期に行われていた、YouTubeのCMキャンペーンのフレーズである。

 YouTubeへ動画を投稿するクリエイターを募集するために製作されたCM第一弾は、現在も国内トップクラスのYouTuberとして君臨するHIKAKIN、WEBメディア企業AppBank創業者である、まっくすむらい、英会話YouTuberのさきがけとされるバイリンガールの吉田ちからが起用された。

 なお翌月のキャンペーンでは、現在国内登録者数ナンバーワンのはじめしゃちょー、YouTube創成期から活動しているMEGWINなどが名を連ねていた。

 このCMはネットのみでなく、TVスポットや街頭広告でも大量に投下され、一躍「YouTuber」の知名度を跳ね上げた。あれから約5年、「好きなことで、生きて」きたYouTuberたちの栄枯盛衰を振り返ってみたい。

YouTuberの認知度向上、その光と影

 「あのCM」以降、YouTuberの存在は、良い意味でも悪い意味でも世間に周知されることになった。例えば、2015年末には「NHK紅白歌合戦」とHIKAKINを筆頭に総勢68名のYouTuberによるタイアップ動画がYouTube上で公開されるなど、YouTube内でとどまらず、TV業界との連携や進出をするケースが増えてきたのもこの時期だ。

 光が強くなれば影も深くなる。

 当時19歳の少年がスーパーの店頭商品に爪楊枝で穴を空ける動画を投稿した、通称「つまようじ少年事件」が起きたのも2015年のことだ。

 さらに同年、まっくすむらいのAppBank株式会社が、東証マザーズに上場するも、経理部門の責任者による横領事件が明るみに出る。流れで暴力団への資金流出疑惑も発覚し、大きな“炎上”事件となった。

 YouTuber業界が伸びていく一方、彼らに対するネガティヴなイメージも広まっていった。

さまざまなYouTuberの台頭

 YouTube黎明期は、各々の特技、ゲーム実況や商品紹介など、個人で動画投稿を行う者がほとんどだった。しかし「あのCM」からしばらくして、コンビやグループで活動するYouTuberが台頭が始まっていく。

 中学校の同級生が集まった7人組・フィッシャーズ、青山学院大学のお笑いサークル出身のコンビ・水溜りボンド、愛知県岡崎市を拠点に活動する6人組・東海オンエアらのチャンネル登録者数が100万人を超えたのが2016年だ。

 “学生ノリ”でバカなことをやる彼らは、同年代や下の世代の共感を集め、現在もイベントをやればチケットは即日完売、会場には女子中高生が殺到するなど、アイドル並みの人気を誇っている。

 同時に、YouTubeに求められる動画の幅も広がっていった。2009年からニコニコ動画に投稿をしていた、釣りよかでしょうや、さまざまな魚をさばく動画が人気のきまぐれクックなど、これまでと違った新しい趣味系のYouTuberも注目を集めるようになる。

 一方で、自ら「炎上軍」を名乗り、炎上をものともしない振る舞いを武器に知名度を拡大させていったYouTuberたちもいる。

 打上花火をグローブでキャッチするなど身体を張った危険な動画で一躍名をあげたラファエル。テキ屋のくじを大量購入し、不正を暴く動画が1000万再生を叩き出したヒカル。そして本業はプロレスラーなものの、他のYouTuberの悪口で再生数を稼ぐシバターなど、ダーティーなイメージをウリにしたYouTuberが頭角をあらわしたのも同時期のことだ。

 また、2017年夏には、ラファエルとヒカルが中心となり、VALU(個人に株式のような価値をつけるプラットフォーム)を使ったインサイダー取引疑惑を巻き起こし大炎上を起こしている。彼らは活動休止を発表、約2カ月後に復活した。

 「YouTuberがなにかやらかすとスーツを着用して謝罪」のフォーマットができたのも、この頃である(元ネタはおそらくSMAPの謝罪)。そして、とくに事件を起こさず、トップを維持し続けるHIKAKINが、ネットユーザーから聖人扱いされるようになり、好感度を上げる結果となった。

現在

 5年間で大きな変化を遂げたYouTubeだが、「あのCM」に出演していた者たちの現在はどうだろうか?

 HIKAKINやはじめしゃちょーは、いまなおYouTubeのトップに君臨し続けており、さらにテレビ出演や映画など活躍の場面を広げている。一方、MEGWINは18年末に自身のチャンネル「MEGWIN TV」のメンバーからのパワハラ告発で炎上(2019年3月にMEGWINは、逆に元メンバーから脅迫を受けていたという動画を公開)。まっくすむらいは先述した疑惑以降、全盛期のような勢いはない。

 犯罪から痴話喧嘩までを“炎上”と、ひとくくりにまとめてしまう風潮にも疑問があるが、黎明期のYouTuberは、繰り返し炎上しながらもその度にうまく立ち回るヒカルやラファエルといった後続の者たちよりも“炎上”に対しても不器用であるように見える。

 ある意味、ピュアに「好きなこと」で生きていきたかったからこそ、ビジネス的にうまくやれなかった部分もあるのだろう(とはいえ、MEGWINにしろまっくすむらいも、起こした事件はかなり問題なのだが)。

 また、世間の目も変わりつつある。この数年YouTuberがTVバラエティに出演すると、年収をいじられるなど、「YouTuberはテレビタレントよりも格下の存在である」というマウントをとられる傾向があった。潮目が変わったと感じるのは、昨年12月13日に放送された『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)の反響だ。

 ギャルタレントのゆきぽよ(木村有希)らが、YouTuberと交際していると報道された久代萌美アナウンサーに対して、「YouTuberにちゃんとしている人います?」などの、差別的な発言を繰り返し、ネット上でも大きな反発を受けた(なお彼女自身動画サイトVine出身で現在はYouTubeチャンネルを持っている)。

 テレビでYouTuberがバカにされることは今に始まったものではないのだが、この放送に対して、ぶんけい(パオパオチャンネル)らが、ツイッターアカウントにて真っ向から反論したことに注目したい。もはや世代によってはテレビ以上の影響力を持つYouTube。若世代からは「YouTuberをバカにするほうがダサい」という風潮も生まれてきているように感じる。

 また、はじめしゃちょーはYouTuberの代名詞である「毎日更新」の停止を宣言したばかりだ(HIKAKINは先んじて「毎日更新」を取りやめている)。他にも東海オンエアやおるたなchannel、北の打ち師達らも、2019年は軒並み休暇を取得していた。「好きなこと」で生きているYouTuberたちも、働き方を見つめ直す時期にきているのだろうか。

 そして、2019年は地殻変動の起きた年であった。

 たとえば、芸能人のYouTube進出だ。以前からYouTubeチャンネルを持っている芸能人は存在したが、ここ1〜2年でその動きは活発化している。カジサックことキングコング梶原雄太、オリエンタルラジオ中田敦彦のチャンネルは開設1年足らずで登録者数100万人を突破した。芸能人のチャンネルは、構成作家をつけたチャンネルも少なくない。また、人気男女コンビYouTuber・ヴァンゆんが、UUUMから大手芸能事務所・太田プロダクションへ移籍したことも業界を騒がせた。YouTubeとTVとの距離は近づいてきており、「プロ化」が進んでいる印象を受ける。

 HIKAKINは、12月26日に公開された盟友Masuoのチャンネル動画にて、「今後、現在のツイッターアカウントのように、誰もがYouTubeのチャンネルを持つようになるのではないか」と自身の見解を語っていた。

 芸能人やスポーツ選手も自身のチャンネルを持ち、好きなときに好きなことを発信するようになった。そして、近年一般人が生活を公開する「Vlog」も流行しており、HIKAKINの述べたように、誰もが自身を動画発信する時代になるのかもしれない。

 YouTubeはプロと一般人が同じフィールドで戦うプラットフォームとなり、「急上昇ランキング」を見ると、料理動画やコスメ動画、都市伝説を紹介するマンガ動画、カップルの恋愛模様、整形を公表するモデルなど、ありとあらゆる誰かの「好きなこと」が揃っている。

 広大になりすぎて、YouTuberのファンといっても、たとえは品行方正なHIKAKINの視聴者と、過激なドッキリを繰り返すチャンネルがーどまんのファンは、きっと重なっていない。もう誰か1人がこの世界の全体像を見通すことは不可能だ。だからこそ、本連載は、このカオスを紐解いてきたいと思う。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。