なぜ男性は、女性の「夫のHがイヤだった」を受け入れられないのか

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Mio:共働き世帯が増えたいまは、そういう運命共同体感も薄くなって、夫婦それぞれがひとりでも生きていけるようになってしまったから、わざわざ相手と折り合いをつける必要がなくなってきているのかもしれませんね。コミュニケーションといえば、私は結婚していた当時、「痛い」だから「セックスしたくない」と夫に伝えても、彼にはぜんぜん通じていないということを日々感じていたのですが、不思議でなりませんでした。

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なぜ男性は、女性の「夫のHがイヤだった」を受け入れられないのかの画像2 ウェジー 2016.05.04

田中:さきほど“男らしさ=勝つこと”とお話してきましたが、日本のエリート校は中高一貫の男子校が多いんですよ。そうすると身近な女性といえば、家族だけ。極端な例になってしまいますが、そうやって同年代の女性と接することなく10代を過ごしてきた大学生から「先生、あの人、女なのに腕に毛が生えているんですけど病気とかですか?」と聞かれたことがあります。

Mio:同じ人間っていうベースがないんでしょうか。人間の上に乗っかってるのは男だけで、女性っていうのは別の生物だと思っているように聞こえます。

田中:ここまでの例は極端にしても、多くの男性にそうした面があると思います。

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Mio:本のタイトルである「夫のHがイヤだった。」は、私が個人的につづけてきたブログとほぼ同じタイトルなのですが、男性はこれを見聞きして苦笑いする人やスルーする人が多いんです。あとは「俺だって妻のHがイヤだった!」と混ぜっ返す人とか。やはり直視したくない問題なんでしょうか。

田中:これはとても大事な視点なんですけど、「意味がわかんない」っていう層が一定数いると思います。

Mio:痛い、というのがわからない?

田中:というより、女性からの男性に対する異議申立がわからないんですね。

 韓国の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)は日本でもヒットしていますが、あれを読めば女性が女性というだけでいかに虐げられているかがよくわかります。でもそれは僕がジェンダーの研究をするなかで、そうした訓練を受けてきたから、それがわかるのかもしれない。

 逆に多くの男性は、それを“自然な秩序”と受け止める傾向が強いんです。なぜなら、自分の秩序の“外”にあることだから。

 「女性はセックスすれば気持ちよくなる」という秩序のなかで生きている人にとっては、痛いとか辛いとかいう申し立てがまったく理解できない。エッチがイヤだなんて、病気なんじゃない? ぐらいがせいぜいです。自己中心的な価値観を疑わないがために、わけがわからないことは全部女性のせいにしてしまうんです。

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