ポリアモリーな彼の「すべてを分かち合うことで絆が強まる」というロジック

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「Getty Images」より

 先日、アメリカ発のニュースのタイトルに目を奪われた。

 「【海外発!Breaking News】4人の男性を恋人に持つ20歳女性が妊娠 『公平に愛してるし、もっと子供が欲しい』(米)」(参照:テックインサイト

 一夫多妻ならまだしも珍しい一妻多夫状態が発生していることが前面に出ているのだが、ニュースのベースにあるのは一夫一婦的な1対1の恋愛ではなく複数人と同時に恋愛する「ポリアモリー」である。

 筆者は昨年、ロンドンに住む30代のポリアモリー実践男性に話を聞く機会があった。彼の話に移る前に、まず当該記事の内容を少し紹介させてもらおう。

1人の女性を巡る複雑な関係

 ポリアモリーは、複数の相手と性的な関係を含めた恋愛関係を持ち、関係者全員にその事実を正直かつ率直に伝えることを倫理的とする主義を指すと筆者は認識している。

 前掲ニュースで話の中心となる女性は、フロリダ州に住む20歳のトーリーさんだ。彼女には4人の恋人がいて、小学校の幼なじみのトラヴィスさん、中学時代の幼なじみのイーサンさん、高校時代に知り合った相手マークさん、最近出会った相手クリスさんである。

 記事によれば、トーリーさんはすでに高校生の頃にポリアモリーな関係をスタートしている。高校時代にマークさんと交際をはじめ、その2カ月後にトラヴィスさん(小学校の幼なじみ)とも関係を持つようになった。それは、トーリーさんにすでに彼氏がいるのを知っていて彼女に恋をしたトラヴィスさんが提案したことだった。

 現在は、4人の恋人のうち3人がトーリーさんと同居していて、4人が平等に交替でトーリーさんと夜を共に過ごすようになっている。

 さらに複雑なことに、トーリーさんはポリアモリーを提案したトラヴィスさんと現在婚約している。そしてトーリーさんのお腹の中の子は、妊娠のタイミングから、クリスさん(最近出会った相手)の子だということがわかっているそうだ。

 ただしトーリーさんは、生まれてくる子どもの父親は、血のつながりに関係なく4人全員であると考えており、皆で子育てするつもりで今後も子どもを増やしていきたいと話しているという。

嫉妬心は当然ある?

 このニュースで一番気になるのは、男性たちの嫉妬心ではないだろうか。トーリーさんは、平等に4人を愛するように神経を使っているという。また、特に自分だけが男性たちを独り占めにしたいわけではないらしく、男性たちに、ほかの相手も持つように提案している。

 一方、今後夫となるトラヴィスさんは、「もちろん嫉妬は常にあるよ」と話している。ただ、「お互いに話をしていくうちに、理解し合うことができたんだ。とことん話し合うことが健全な関係を保つ秘訣だね」といい、恋敵を知れば知るほど、話し合いをするほど、嫉妬の苦しみから解消されたのだそうである。

 しかし、同時に複数の恋人を持ち、維持することはかなり難しいらしい。アメリカのシンガーであるベラ・ソーンは、最近まで人生2回目のポリアモリーを実践していたが、そううまくはいかなかったという。(参照:MTV) 

 彼女いわく、特に男性の恋人1人と女性の恋人1人を持つと、「この2人はお互いをめちゃくちゃにしてやろうとし始める」のだという。異性とは違いが大きすぎて、同性に向ける以上の嫉妬を抱いてしまうのかもしれないが、そうでなくても恋敵は穏やかでいられないのが普通だろう。

複数恋愛の“乱れた”イメージと異なる言葉

 昨年の夏に、ロンドンの30代の男性で、飲食店に勤務しているポリアモリー実践者に話を聞く機会があった。

 この男性には、10年つきあっているガールフレンドがいる。このカップルがポリアモリーなライフスタイルになったのは4~5年前。ただ、今はお互いに他の男女とは恋愛関係がないということだった。

 彼の口からは、複数恋愛の“乱れた”イメージからほど遠い言葉が続いた。

「意味のあるつながりを探しています。私はただたくさんの人と遊びでデートしたいわけではありません。そのため安易にデートもしない」
「プレイボーイになりたくはないのです。それでは女性に対してまったく敬意を払っていないでしょう」
「僕は僕のガールフレンドと絶対に関係を維持するつもりです。10年つき合っていてまったく愛が衰えることなく、絆は強まる一方」
「10年単位で関係が続いているポリアモリーカップルだっています。普通の1対1の結婚より長続きしているのです」

 一般的な感覚では、ガールフレンドが大切なのになぜ他の女性とも恋愛関係を持ったのか? と疑問に思う。

 彼が他の女性とも関係を持ち、それを恋人に伝えたのは、彼女と遠距離恋愛になってからだという。

 男性は遠距離恋愛の寂しさを埋めたかった。ポリアモリーでは関係者すべてが情報を共有するのがルールなので、普通の浮気であれば感じるはずの罪悪感は払拭され、隠し事をする手間がかからない。またすべてを分かち合うことでより絆が強まるというロジックになる。

 一方のガールフレンドは、単身赴任中の夫が現地妻を持つことを容認するような感覚なのだろうか。そこは彼女に聞いてみなければわからない。

浮気や不倫との違い

 ポリアモリーはそこまでレアケースというわけではない。アメリカでは、ポリアモリー実践者は4~5%と推定されている(参照:OZY)。

 またポリアモリーに限らずとも、2017年の調査では、アメリカ人の5人に1人以上が婚外恋愛などで非一夫一婦の関係にあることがわかっている(参照CTV News)。

 そもそも、結婚相手以外にふと魅力を感じることは、極めて自然なことなのではないだろうか。筆者は独身のため結婚については語れないものの、既婚者の女性から、「夫とはもう家族の関係になってしまったし、何かときめきが欲しい」などと聞くことがよくある。

 実際、非一夫一婦的な関係を妄想したことがある人は81%にのぼるという調査結果が、最近のセクシュアリティの科学研究会で発表されている(参照:INSIDER)。

 婚外恋愛や不倫というと、配偶者や子どもを傷つけて甘い汁だけを吸うような後ろ暗いイメージが強い。だがロンドンで話を聞かせてくれたポリアモリーの男性の「もし僕が素晴らしい誰かに出会ったら、あらゆる可能性を閉ざさない」という言葉にはポジティブな響きがある。

 ポリアモリーが重視しているのはここなのかもしれない。浮気ではなく、すべての関係者の合意のもとに積極的に恋愛するということだ。

ポリアモリー家族の不便と特典

 冒頭で紹介したトーリーさんのように、ポリアモリーな家庭を築いている場合、既存の社会システムにおいて不具合もある。

 カナダの研究によると、たとえば妊娠・出産時に差別や不便を感じている。病院が求めているのは、生まれてくる子どもの父親と母親の名前だけなのだが、3人以上の親の名前を出して理解を求めようとすることで先方が困惑する、対応しきれない、といったことがある。(参照:CTV News)。

 しかしある研究者は、ポリアモリーで親が多いことは、子どもに大きなメリットがあるという。たとえば3人の親が働いて収入を得ていれば、ダブルインカムどころかトリプルインカムになる。また子どもを迎えに行く、宿題をみるといった世話も3人の誰かが交代ですればいので、子どもを手厚く見ることができるし、大人1人1人に余裕もできる。

 もちろんそうした複数の大人たちによる子育ては、必ずしも恋愛関係にあることを必要としない。また、恋愛関係の解消で家を離れ、子に喪失感を与える可能性もある。

 とはいえ恋愛も家庭も、マジョリティのしてきた・しているスタイルが絶対ではない。多様化が進む中、ポリアモリーも数年後にはもっとなじむ概念のひとつになっているのかもしれない。

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