スウェーデン国籍のLiLiCoが「未だに外国人だと感じる」の言葉に、殺到する乱暴な「帰化しろ」の声

【この記事のキーワード】

 

LiLiCo

LiLiCoオフィシャルブログより

 タレントのLiLiCo(49)が1月9日に都内で行われた映画『コンプリシティ/優しい共犯』(1月17日公開)のトークイベントに登壇。映画の内容にちなんで日本に住むスウェーデン人である自身の体験や思いを話した。

 『コンプリシティ/優しい共犯』の主人公は、中国から技能実習として日本にやってきた青年チェン・リャン。技能を習得するために日本にやってくるが、職場環境は劣悪なものだった。チェンは職場から逃げ出し、他人になりすましてあるそば屋で働き始めるのだが……。こうした映画のストーリーに合わせ、LiLiCoは自らの実体験をもとにしたトークを繰り広げたようである。

 LiLiCoは「みんな忘れてると思うけど、私はスウェーデン人なので(笑)」と前置きし、「18歳で(日本に)来て、芸能界でわりとすぐデビューはできましたけど、お仕事をコンスタントにいただくまでは22年くらいかかった」と長い下積み期間あったことを話した。

 流暢な日本語を話すタレントであり、映画コメンテーターとしてもお馴染みのLiLiCo。母は日本人で父はスウェーデン人、スウェーデンで生まれ育った。18歳のとき日本で歌手になることを夢見て、東京の祖母を頼って単身日本へ。なかなか仕事に恵まれずに、下積み時代には5年間も車の中で生活するいわばホームレス状態であったことは本人もバラエティ番組などで何度も話している。2017年には歌謡グループ「純烈」の小田井涼平(48)と結婚し、昨年、スウェーデン・ストックホルムで結婚式を挙げた。

 さて、9日のトークイベントにおいてLiLiCoは、日本で暮らしていく上でビザの取得に苦労していることも明かした。

「(ビザの取得は)日本はすっごい難しい。今でも『日本で何してるんですか?』って聞かれるから毎回泣きそうになる」

「どんなに頑張っても(在留期間が)1年だから。今やっと30年いて、3年とか5年をもらうようになった」

「今でも入国管理局に行くと『あ、外国人なんだな』って毎回感じます」

 このLiLiCoの発言がネットニュースとして流れると、配信記事のコメント欄には、コメントが殺到。「LiLiCoさんは苦労人で気遣いもできる様子が画面からもわかる」「明るいイメージで好感がある」などLiLiCoへの好意的なメッセージも多いが、LiLiCoのビザについて、そして国籍についてあれこれ勝手な意見をぶつける場のようにもなってしまっている。

 LiLiCoは自らを「スウェーデン人」であると明言しているが、では彼女は「日本人になりたいけど、なれない」のだろうか? そのようなことは、彼女は言っていないはずだ。にもかかわらず、「日本人と結婚しているのに、いつでも帰化できるでしょう」「なぜ帰化しないの?」といったコメントは、あまりに素朴すぎる。彼女は「ビザの取得」について話しているのであって、「帰化したい」という願望を打ち明けているわけではない。

 「日本人と外国籍を持つ外国人が結婚したら、日本国籍になるはずだ」という解釈をしている人もいるようだ。実は、そうではない。筆者の友人に日本人男性と結婚して6年の中国人女性がいるが、彼女の国籍は中国のままである。国際結婚で自動的に日本の国籍になるということはないのだ。

 また、帰化申請をしたからといって「はいそうですか」とすぐに誰もが帰化OKとなるわけではない。帰化には国籍法で定められた一定の条件があり(たとえば・引き続き5年以上日本に住所を有すること・素行が善良であること・自己または生計を一にする配偶者その他の親族の、資産または技能によって生計を営むことができること、など)、これらを満たさなければ許可はおりない。

 ただし国籍法が定めた条件に当てはまれば、緩和される場合もあるようだ。2017年に結婚したLiLiCoの場合は今後、「・日本国民の配偶者たる外国人で、婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するもの。」という条件に当てはまることにはなるだろう。

 法務大臣から永住を認められたなら<永住権>というものが与えられることもあり(むろん本人の申請が必要だ)、こちらだと在留期間は無制限となる。永住権だと国籍は外国籍のままだが、こちらもかなり厳しい条件をクリアすることが求められる。

 だが繰り返しになるが、前述のネットニュースは「LiLiCoが帰化したがっている」などと伝えてはいなかった。それなのに、ニュースへのユーザーコメントでは、「自ら外国人であることを選択しているくせに、ビザが大変とか泣き言言うな」「文句言うなら、帰化すればいい」などのコメントも多く見受けられる。こうした考えの押し付けはあまりに一方的すぎる。

 誰にだって大切にしたいアイデンティがある。先に書いた中国籍の友人は、「日本が大好きだけれど、中国人であることに誇りを持っている。だから、今後も国籍変更は考えていない」と断言していた。彼女は自らの意思で、日本で生活し、かつ中国人であることを選択し続けているのだ。ビザの更新が面倒で厳しいことは、承知の上で。

 生きていく上で、どうしても譲れないこと、譲りたくないことはどんな人にもある。もっともLiLiCoが「帰化しない」と決めているかどうかも、まったく定かではない。他人がああしろこうしろと口を出す分野の話ではない、ということだ。「帰化しないのは、日本を大事に思ってないから」「永住権を取ればいいのに取ってないんだから、外国人と思われて当たり前。ぼやくな」などと意見を押し付けるのが、どれほど乱暴なことか。

 多様性を認める社会で生きていこう、というのがグローバルな潮流である。人は国境を越えて自由に移動できる。日本で働く外国人労働者はこれまでよりも増えていく。「日本に長くいるなら帰化」「永住権を取れ」という考え方は、この時代にそぐわないのではないだろうか。

「スウェーデン国籍のLiLiCoが「未だに外国人だと感じる」の言葉に、殺到する乱暴な「帰化しろ」の声」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。