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長時間労働、外注先へのしわ寄せ、ハラスメント…ブラック企業の「今」

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生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。皆さんは「ブラック企業大賞」をご存じでしょうか? ここ数年は毎年ネットニュースなどでも取り上げられるこの賞は、「ブラック企業大賞実行委員会」が主催しているもので、昨年末に第8回ブラック企業大賞2019が決定し発表されました。

 委員会が「ノミネート企業一覧&選考理由」を公表し、その中からWeb投票も考慮の上で、その年の「ブラック企業大賞」が決められます。入賞すると授賞式もあるのですが、もちろん参加した企業は無いようです。

 企業からすれば不名誉なことを「賞」として授与する発想はブラックジョークに思えます。しかし実は「企業一覧と選定理由」には、労働関連の事件や裁判が年ごとにまとめられてあるので、いまどんな問題が増えているのか、また、業種による傾向などのトレンドを掴むことができます。労働者にとっても人を雇う経営者や部下を持つ立場の人にとっても非常に参考になると考えられます。

 これらの内容も踏まえ、筆者が注目したブラック企業の「今」を、労働者目線でお伝えしていきたいと思います。

若い社員が犠牲になる

 かつて仕事に起因した自殺といえば、責任の重い立場の人というイメージがありました。しかし最近は入社間もない社員やまだ20代という若い層の自殺が話題になります。

 こうした問題には、長時間労働と上司とのトラブルが付き物です。過労死ラインとなる月80時間の残業、さらに上司との関係に問題を抱えている場合、本人も周囲も注意が必要です。自殺まで追い込まれなくても、精神疾患なども増えているので、公になっていないケースも含めると職場でなんらかの重篤な問題を抱えている人は大変な数だと考えます。

 最近は長時間労働、サービス残業、メンタルヘルスに関する問題などが発覚すると、労働基準監督署からの是正勧告が入るのですが、勧告によって一発で解消する企業は少ないと思われます。労働基準監督署が動くと、全てが解決すると期待してしまう人にも注意を促したいです。

 また、労災認定や是正勧告を公表しない企業もあり、これも問題になっています。

フランチャイズ、業務委託などにしわ寄せがくる

 ブラック企業といえば、社員に対する冷遇などが考えられますが、近ごろは、フランチャイズ先、外注先など、他社の社員とブラック企業の問題が増えています。

 例えば、トップが大手企業であっても、フランチャイズ契約で零細企業に業務を任せているケースは多く、また、自社の業務を社員ではなくフリーランスや別の会社に外注するケースも増えています。

 トップは、フランチャイズ契約先や外注先の労災など多くの責任を免れることができると考えており、リスク回避の目的で外注を増やす企業は今後増えていくと思われます。これらの働き方をする場合は、合法的に守られていない自覚を持つ必要があります。

 一方で、フランチャイズの企業が立ち上がったり、フリーランスがユニオンを作るといった動きも出始めています。今後、企業は自社の社員でないからといって好き勝手にできる時代ではなくなる気配はあるものの、まだまだだと思います。

#MeToo運動が話題でもまだまだ起こり得る

 世界的に#MeToo運動が注目されている中、「職務上の優越的地位」を利用した性暴力による自殺という事件も起こっています。性暴力やセクハラは、被害者が声を上げられずに過ごしていたり、そのまま退職してしまうケースも非常に多いでしょう。

 声を上げれば、次なるハラスメント、セカンドレイプなど、問題が深刻になるのではないかと不安になるのも当然です。告発にはたいへんな勇気やエネルギーを要するのです。

 ハラスメントはどこにでも起こり得ることだと考え、問題を感じたら早い段階で動く必要があります。

まとめ

 いまはインターネットなどで知識や情報収集ができるようになり、従業員を守るための法改正も重ねられ、かつて以上に相談窓口も整備されてきたと思います。でも、多くの方が勘違いされているのが、何かあってから労働基準監督署などしかるべき相談窓口に出向いても、即刻解決はしないということです。

 労働基準監督署は、問題の人物を解雇することも逮捕することもできません。会社の制度を変えたり、異動をさせてくれるわけでもありません。。裁判に持ち込まないと「勝ち」はないと考えるべきです。

 よほどの大企業や大問題でないかぎり、マスコミへのタレこみも簡単には取り合ってもらえないでしょう。そうこうしているうちに、時間が経過し自分がむしばまれてしまっては元も子もないのです。

 いまは1つの企業で定年退職まで勤め上げるのが美徳ではありません。「逃げる」という選択肢があることを常に覚えていてほしいと思います。

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