オークワフィナ:新世代のアジア系俳優〜主演傑作『フェアウェル』今春日本公開

文=堂本かおる
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 俳優/ラッパーのオークワフィナ(*)が、1月初頭のゴールデン・グローブ賞にて最優秀女優賞(主演作品『フェアウェル』、ミュージカル/コメディ部門)を受賞した。アジア系女優としては史上初の快挙となった。

*実際の発音は「アクアフィーナ」

 快進撃が止まらないオークワフィナだが、よほどアジア系ラップ・シーンに詳しくない限り、俳優として「ある日、突然に降ってきた」ように思える。

 2012年以降、オークワフィナはラッパーとして何本かのビデオをリリースしている 。数本の映画に出演したのち、2018年のサンドラ・ブロック主演作『オーシャンズ8』にてコア・メンバー8人の一人に大抜擢され、コミカルな演技が好評を得た。

 同じく2018年公開、25年振りのオール・アジア系キャストのハリウッド映画として話題を呼び、大ヒットした『クレイジー・リッチ!』にコンスタンス・ウー演じる主人公の親友役で出演。こちらも高く評価された。

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オークワフィナ:新世代のアジア系俳優〜主演傑作『フェアウェル』今春日本公開の画像2 ウェジー 2018.08.30

 特徴のあるハスキー・ヴォイスとコメディが得意なことから、『アングリーバード2』(2019)、『The SpongeBob Movie: Sponge on the Run』(2020)、ディズニー『Raya and the Last Dragon』(2020)など、劇場長編アニメの吹き替えにも引っ張りだこだ。

 そんなオークワフィナがゴールデン・グローブ賞を受賞したのは、意外にもアジア系移民の切ない心情を描いた静かな傑作『フェアウェル』での主演による。同作は日本でも今春の公開が決定している。

日本版『フェアウェル』公式サイト
http://farewell-movie.com/

『フェアウェル』

 『フェアウェル』はコメディとはいえ、大笑いをするドタバタ劇ではない。全編に静かで切ないペーソスが漂い、観客は時には主役のビリー(オークワフィナ)と共に涙ぐんでしまう。だが、映画の最初から最後まで、そこここに、なんとも言えないユーモアがにじんでいるのである。

 ビリー(オークワフィナ)は8歳で両親と共に中国からニューヨークにやってきた移民だ。親の英語には今も中国語の訛りがあるが、ビリーにはない。すっかりアメリカ人、ニューヨーカーとして育ったのだ。

 30歳になっても人生の方向が定まらないビリーは落ち込んでいる。そんな折、中国に住む大好きな祖母が末期ガンとの知らせが入る。

 親戚全員、手遅れになる前に祖母に会うため、故郷に集まることとなった。祖母に不信感を与えないための口実として、ビリーのイトコの結婚式を催すのだ。

 両親はビリーに告げる。

「おばあちゃんはガンのことを知らない。決して本人に告げてはならない」。

 ここからビリーの葛藤が始まる。当人にガン告知をしないのは中国の習慣だが、アメリカ育ちのビリーには納得できない。中国に向かう前も、故郷に着いて祖母と共に過ごす際も、真実の告知こそが祖母のためになるとビリーは苦しむ。

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