内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなる

【この記事のキーワード】
内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像1

「GettyImages」より

 「内定辞退セット」が1月20日の『ZIP!』(日本テレビ系)などで特集されたことを受け、注目を集めている。内定辞退セットとは、文房具メーカーの日本法令が出した商品で、封筒と便箋、内定辞退の旨を伝える例文が書かれた下敷きが入っている“レターセット”だ。

 下敷きの上に便箋を乗せると文字が透けるようになっており、文章を考える手間が省けるうえ、誤字脱字のリスクも回避でき、字がキレイに書ける。手間を掛けずに内定辞退を伝えられるセットである。

 先月下旬に発売したところ初版5000部は売り切れ。なぜそれほどニーズが高いのかというと、人手不足による売り手市場により、ひとりの就活生が複数の内定を得ているためだ。

 リクルートキャリアの調査によると、2020年卒の就活生の12月1日時点の就職内定辞退率は65.2%。7割近くが内定を辞退せざるを得ず、内定辞退セットは就活の必須アイテム化するかもしれない。

リクナビは就活生の味方ではなく「企業ファースト」か 就活生の内定辞退リスクを提供するサービスの妥当性

 就職情報サイト「リクナビ」を運営する株式会社リクルートキャリア は8月5日、就活生が内定を辞退する可能性を予測し、企業に提供するサービス「リクナビDM…

内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像2
内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像3 ウェジー 2019.08.09

会社に出向いて内定辞退を伝えるのが礼儀…?

 しかしそもそも内定辞退の際は、手紙を書かなければいけないものなのだろうか? 電話やメールで辞退の意向を伝えれば済むことのように思えるが、もしも悪意を持った第三者が、内定者を装うという可能性もなくはない。ただ、それは手紙でも同じだ。

 となると直接、内定先企業に出向いて辞退することが、間違いを起こさぬベストな方向なのかもしれないが、すると今度は「引き留められる」「対面で辞退を伝えるプレッシャーに耐えられない」などの問題も発生するだろう。

 2019年5月に日本経済新聞が掲載した内定辞退に関する記事が炎上したことを覚えているだろうか。学習院大学が実施した内定辞退に関するセミナーで、同大キャリアセンター事務長を務める淡野健氏が「自分を選んでくれた企業に感謝の心を持ちましょう」「メールの送りっぱなしや電話で完結してはダメ。必ずその企業に足を運ぶことが重要」と、内定を辞退するのであれば直接出向くことを勧めていたのだ。

 同紙が別の月に掲載した調査によれば、内定辞退の連絡方法として「電話」を望む企業が最多。「対面」を求める企業も2割近くあり、内定辞退セットを使用した連絡を良しとしない企業も多いのだろうか。

内定辞退マナーなど言語道断、破綻しつつある新卒一括採用と終身雇用の構造

物議を醸した内定獲得後の「マナーセミナー」 何かと話題になることの多い就職活動(就活)だが、それはまた炎上のネタを投下する人が跡を絶たないということ…

内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像4
内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像3 ウェジー 2019.05.26

 しかし前述したように、第三者が内定者を装って内定辞退をするという事態を想定すれば対面が望ましいだろうが、「企業への感謝の気持ち」や「礼儀」を理由にするのはいかがなものか。

 ネット上では「企業だってお祈りメールを送るだけじゃん」「メールで辞退は失礼だ。もっと礼節を尽くせって会社側の声が背景にはある。人に礼儀を強要する前にあなたは礼儀ができてるか?」と、企業は不採用通知をメールで簡単に済ませているのだから内定辞退セットもそれと同じであると主張するコメントが相次いだ。

 また、わざわざ内定辞退セットを買って直筆の手紙を郵送しなくても、メールで十分だとする意見も多数。内定辞退のテンプレート文などwebで探せば一瞬で見つかる。

 いずれにしろ、複数の内定を抱える学生が多く、必然的に辞退が発生する現状がある。いちいち対面で辞意を伝えるよう要求、さらに引き留め交渉などしていては、企業側の負担もバカにならないだろう。企業側としても簡略化を望むようになっていくかもしれない。

企業優位が崩れることのメリット

 企業と就活生は本来対等な立場であるが、一方的な内定取り消しやセクハラ、内定を出してそれ以上の就職活動を終了することを強要する「オワハラ」などもある。特に、就活中のセクハラ被害は深刻だ。Business Insider Japanの調べでは実に就活生の2人に1人が就活セクハラに遭っていることがわかったという。

 企業優位の就職活動では、学生側が不利な立場に立たされ、被害を受けても泣き寝入りさせられる。しかし人手不足を背景に企業と就活生のパワーバランスが変化していくとしたら、こうした就活を取り巻く諸問題もこれまでより訴えやすくなるだろう。

就活セクハラ加害者は、採用権を持たない社員が多い。身を守る3つのポイント

 就活セクハラが横行する背景には、「公権力すら介入しにくい会社という閉鎖的な空間」「弱い立場の労働者がさらに弱い立場の就活生を隷属させる心理」がある。…

内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像6
内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像3 ウェジー 2019.12.25

「仕事辞めたい」理由の1位に求人詐欺 就活で騙されたと気づいたら

 せっかく入社した会社だから、すぐに辞めたいなんて言えない……6月はそんな悩みを抱える新入社員が増えてくる時期だ。離職中もしくは退職を検討中の2019年…

内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像8
内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像3 ウェジー 2019.06.21

就活売り手市場でも「月給25万に満たない求人が圧倒的に多い」人材紹介のプロが明かす若者就活事情

 内閣府は今月、16歳~29歳を対象に実施した「平成30年版 子供・若者白書」を発表。回答者の属性は、最多が「正規雇用(常勤)」(32.9%)で、「学生…

内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像10
内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなるの画像3 ウェジー 2019.07.06

「内定辞退セットに否定的でも、企業側は受け入れざるを得なくなる」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。