政治・社会

飲食店が過去最多の倒産!サラリーマンの昼食代にみる景気回復というフェイク

【この記事のキーワード】

「GettyImages」より

 緩やかに回復している――。

 これは、昨年末(2019年12月20日)に政府が示した景気に対する見解だ。あらゆる経済指標が景気悪化を示している中でのこの見解に、滑稽を通り越してゾッとした。

 この見解が示された1週間前の13日には、帝国データバンクが2019年(1~11月)の飲食店の倒産件数が過去4番目の水準に達し、通年では過去最多の倒産件数が予想されることを発表している。

 これは、国民が外食できないほど貧しくなっているということではないのか?

過去最多の倒産を記録

 帝国データバンクの『特別企画:飲食店の倒産動向調査(2019年)』によれば、2019年の1~11月の飲食店事業者の倒産件数は668件に上る。この数字は、過去4番目の数字で、通年では2017年の707件を上回る728件と予想されており、過去最多となりそうだという。

 11月時点で既に過去最多を記録した業態は、「酒場・ビヤホール」の143件と「西洋料理店」の110件。西洋料理店は、一般的なレストランや、フランス料理・イタリア料理店などを示している。また、「中華・東洋料理店」も96件、「喫茶店」も60件と両者ともに過去最多に迫っている。

 トップの「酒場・ビヤホール」については、若者の酒離れや飲み会を敬遠する傾向が影響しているとも考えられるが、やはり単純にサラリーマンが節約しているのだと思える。事業者の規模別では、負債額5000万円未満の小規模事業者の倒産が全体の84.4%でほとんどを占めており、この傾向は2015年から続いている。

 同レポートでは、倒産以外にも事業承継を諦めた店舗を加えれば、実際には統計以上の店舗が閉店していると見られている。

どこが景気回復しているのか?

 サラリーマンの懐がいかに寂しい状態かは、すでに感覚的にもわかっていることだが、それを示す調査も行われていた。

 新生銀行グループの調査※1によると、サラリーマンのお小遣いは1990年の7万7,725円から多少の揺れはあるが下がり続け、2019年にはとうとう半分以下の3万6,747円にまで下がっている。

 当然、お小遣いが少なくなれば、飲み会や昼食代も節約せざるを得ないだろう。

 実際、新生銀行の別の調査※2と合わせてみると、サラリーマンの昼食代は1992年の746円をピークに下がり続け、2019年では男性会社員が555円、女性会社員が581円となっている。なお、前者の統計は男女分けが行われておらず、後者の統計では男女が分けられている。

 この調査結果は、多くのサラリーマンにとって実感できるものではないだろうか。

 私自身、1990年代は会社員だったが、昼食の外食時には、あまり金額を気にしたことがなく、中華から洋食、パスタ専門店、ファミリーレストランと食べたいものを食べていた。

 ところが2010年代には、自分も周りの社員も、いつしかファストフードやコンビニでハンバーガーやパンを購入してオフィスに持ち帰って食べるようになっていた。ファストフードの店内やコンビニのイートインも、ハンバーガーやカップ麺などの軽食で済ませている会社員が多く見られるようになった。

 また、数百円で済ませられる牛丼屋や立ち食い蕎麦屋も会社員で溢れるようになっていた。私も長らく会社員をやっていたが、さすがに近年の昼食事情の貧しさは、過去に体験したことがなかったものだ。私の体感だけでも、日本のサラリーマンが貧しくなっていることがわかる。

※1 新生銀行グループ『男性会社員のお小遣い額は36,747円と過去2番目に低い金額-「2019 年サラリーマンのお小遣い調査」結果について』
※2 新生銀行『ライフスタイルラボ サラリーマンのお小遣い調査 30年白書』

ますます厳しくなる飲食店業界

 会社員のお小遣いが減ったことだけが、使える昼食代を下げているわけではない。やはり消費税の税率が着実にアップしてきたことも影響しているだろう。

 特に今回の軽減税率では、外食すると消費に対する「罰」が10%も与えられる。そのため消費税は「消費罰」とさえ呼ばれている。つまり、景気の悪化で実質賃金が下がり、お小遣いが減ったところに、消費税まで取られてしまうのだ。踏んだり蹴ったりである。

 もっとも、飲食店事業者の倒産件数が多いのは、会社員のお小遣いが減ったことと消費税増税だけが理由ではないだろう。

 因果関係を証明する正確な統計があるわけではないが、店員を募集しても集まらないという人手不足により閉店した店もあるし、バイトテロによりダメージを受けて閉店した店もある。また、軽減税率対応やキャッシュレス対応のレジシステムを導入する資金が足りずに閉店した店もあるかもしれない。

 他にも、最低賃金の引き上げによる人件費負担の増加などもある。あるいは、そもそも人口が減少しているために、相対的に飲食店が過剰に増えてしまったということも考えられるかもしれない。少なくなった顧客を取り合い、過度な低価格競争を行ったことで利益を圧迫していることも大きな原因だろう。

 しかし、これらの原因は、本を正せばすべて景気悪化によるものだ。現在のところ、景気回復のための明るいニュースは少ない。それどころか東京オリンピック・パラリンピックのあとに、さらなる景気の失速が訪れるという予想も多い。

 飲食店事業者にとっては、まだまだ厳しい時代が続くだろう。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。