「ふるさと納税」お得で人気だったランキング上位の自治体は法改正でどうなる

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「GettyImages」より

 「ふるさと納税」と称される個人住民税の寄付金税制は、返礼品の充実、ポータルサイトの拡充やワンストップ特例(注1)といった制度の制定などにより、その額は増加の一途をたどっています。

 そもそも「ふるさと納税」とは、2006年10 月に当時の福井県知事である西川一誠氏が「故郷寄附金控除」制度の導入を提案する新聞記事の中で

「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」

と、問題提起をしたことがきっかけとなり、現在の官房長官である菅義偉氏が総務大臣就任時に創設を表明したとされる制度です。

 2008年に地方税法第37条が改正され、自分が選んだ自治体に寄付を行った場合、寄付額のうち2000円を超える部分について、所得税と住民税から(一定の上限はあるものの)原則として全額が控除されるようになりました。これにより都市部に住んでいながら、自分の故郷だけでなく、お世話になった自治体や応援したい自治体に寄付が行いやすくなったのです。

(注1)ワンストップ特例制度:5団体以下のふるさと納税であれば、確定申告が不要な給与所得者などは、各自治体に特例の適用に関する申請書を提出すれば、確定申告なしでも住民税の寄付金税額控除を受けられる制度

市税の2.5倍の収入を得た大阪泉佐野市

 この制度が大きく注目を集めるようになったのは、寄付者に対して寄付金額に応じた地元の特産品を返礼品として送付する自治体が現れ、その内容が寄付金額相当、もしくはそれ以上の価値があるように感じる品が増えたことにあります。

 例えば1万円の寄付を行った場合、2000円を引いた8000円が控除額になるのですが、返礼品として実勢価格8000円相当の返礼が届けば、わずか2000円の負担で税金控除と返礼品取得となるのです。これを魅力的と感じる納税者が増え、自分の故郷ではなく、返礼品が魅力的な自治体へ多くの寄付を行うようになっていきました。

 なお返礼品の送付に関しては、制度制定当初から規制はなく、任意に自治体が行っているもので、寄付がなされても返礼品のない自治体も当然のことながら存在します。しかし寄付金を獲得するべく、各自治体はこの返礼品の設定に力を注ぐようになります。農産物だけでなく、工業が盛んな自治体では家電などが、観光業が盛んな自治体では地元の宿泊施設の宿泊券などが返礼品となっています。

 ではここで、平成30年度(2018年)のふるさと納税の受入額が大きい自治体のランキングを見てみましょう。

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平成30年度(2018年)ふるさと納税の受入額

 上位4団体の受入額が年間100億円を突破しています。特に大阪府泉佐野市は人口10万人の小規模な都市で、関西国際空港を擁していますが、2009年には財政破綻が危ぶまれ、2016年には財政非常事態宣言が出るほどでした。なお市税による歳入は2018年度当初予算で約200億円です。そんな泉佐野市が市税の2.5倍の500億円近くのふるさと納税を集めたのは、その返礼品が話題を呼んだからです。

 もともと泉佐野市は関西国際空港を拠点とするLCC「Peach」の航空券を返礼品としたかったのですが、固定料金がないため提供することができませんでした。そこで、2014年にPeachの航空券が購入できるポイントを返礼品としたところ、前年比10倍の寄付を得ました。そこから泉佐野市の返礼品は他の自治体にないほどの品数の豊富さと還元率の高さで話題となります。

 地場産品ではない和牛切り落としが1万円の寄付で2.5kg届いたり、5000円相当のビール1ケースが1万円で届いたりするなど還元率は50%近いものがあふれていました。また泉佐野市のふるさと納税特設サイト「さのちょく」には1000種類の返礼品が掲載されており、ちょっとしたショッピングサイトよりも品数が豊富と称されることもありました。ついにはAmazonのギフト券を高還元率で返礼品として設定したのです。その結果、寄付金を幾何級数的に増加させていったのです。

<泉佐野市のふるさと納税受入額>

2016年度  34億8326万円

2017年度 135億3251万円

2018年度 497億5300万円

 また2位から4位の団体でも、高還元率の商品券や電化製品を返礼品とし、多額の寄付を募ることに成功しました。以下は一例です。

静岡県小山町 Amazonギフト券 クオカード(還元率40%)

和歌山県高野町 日本旅行ギフトカード (還元率50%)

佐賀県みやき町 

フォトアプリ利用権+iPad  (iPadのみの還元率は30〜40%)

音楽フェス参加券+HISギフト券 (ギフト券のみの還元率は30%)

上位4位までの団体がふるさと納税の対象から除外

 このように返礼品の豪華さに注目が集まり、本来の地方創生という大義名分が薄れかけていることに危機感を感じた総務省は、2017年から返礼品に対する「規制」をかけることになります。

 ・返礼品は地場産品に限ること

 ・寄付額の3割以下の返礼品であること

 多くの自治体はこの規制通知に従いますが、泉佐野市をはじめ、財政危機を解消する大きな手立てを失いたくない自治体は「この通知に強制力はない」として、従来の返礼品を送り続けます。

 2018年、とうとう総務省は過度な返礼品を送り続ける自治体をふるさと納税制度の対象外とし、税控除が受けられないようにする法改正を行うことを検討しはじめ、2019年3月に国会にて可決。上位4位までの団体が2019年6月1日よりふるさと納税の対象から除外されることになってしまったのです。

 なお泉佐野市はこの決定を違法だとして、2019年11月に取り消しを求める訴訟を大阪高裁に起こしており現在係争中です(判決は1月30日に言い渡されます)。

 5位の宮崎県都農町の豚肉とうなぎ、6位の宮崎県都城市の豚肉と焼酎(黒霧島)のように高品質で魅力的な地場産品があるところであれば、その売り方次第で100億近い寄付金を得られるのでしょうが、そういった特産品や地場産業のない地域が寄付を募るには、地元民の英知が必要です。そのためのマーケティング調査やデータ解析も行ったことでしょう。

 高額の寄付を得た団体はその英知によって結果を出したわけで、人口減少による税収不足と高齢者のケアで財政が圧迫する中、多額の寄付を募ることができる千載一遇のチャンスを掴んだといえました。しかしそのチャンスは「儲けすぎ」と非難を浴び、ハシゴを外されてしまったのです。

「ふるさと納税」非難の理由

 非難を浴びたのには2つの理由があると考えます。

 ひとつはAmazon、Appleといった外資系の企業の商品を返礼品に使用したことです。寄付で得た多額のお金が米国の企業にまで流れることで、日本の企業に還元されないことが問題視されたのでしょう。また近年は納税が確認されていますが、数年前まではAmazonの日本への法人税納税がほとんどなかったとの疑惑があり、その反感もあったと想像します。

 ふたつめの理由は、都市部にある自治体がふるさと納税によって減収となっていることです。

<2019年度課税における寄付金税額控除 上位10団体>

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2019年度課税における寄付金税額控除 上位10団体

 2016年の控除額の上位3団体は、神奈川県横浜市、愛知県名古屋市、東京都世田谷区です。

横浜市 55億円

名古屋市 31億円

世田谷区 30億円

 横浜市は3年で約80億の「減収」となりました。さらにはふるさと納税での受入額は1億円程度ですから約135億の「ふるさと納税赤字」であるともいえます。

 この赤字の75%は地方交付税で補填されることになっているのですが、川崎市や東京都23区は地方交付税が交付されていないので、この赤字分は全額減収となってしまうのです(ちなみに横浜市には地方交付税が交付されています)。

法改正の影響、2020年以降のランキングは

 地方創生のための施策として実施されてきたふるさと納税ですが、この法改正によって寄付の受入額や控除額がどのように変化するのでしょうか。

 その統計が発表されるのは夏頃になると想定されますが、泉佐野市が「最大で最後の大キャンペーン」と銘打った「300億円限定キャンペーン」という、いわば閉店セールによって2019年度の受入額1位はキープするものと想定されます。さらには、この騒動によって「ふるさと納税」のお得感が多くの納税者に知れ渡ったアナウンス効果により、受入額の規模は前年を大きく上回ることでしょう。

 では、2020年以降のランキングは? ふるさと納税を受け付けるポータルサイトの動向を見ると、地場産の農畜産物を豊富に取り揃えられる地域の返礼品に人気が集まっています。

 牛肉や豚肉を取り扱う佐賀県、鹿児島県、宮崎県、明太子やいちごを扱う福岡県といったこれまで地道に地場産業の発展に取り組んできた九州の自治団体が上位に名を連ねることになるでしょう。

 このように地道な努力の積み重ねが多くの納税者に共感を持ってもらい、寄付が集まるような制度であってほしいと願うばかりです。

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