マスクとワクチンを軽視することこそが現代の「マナー違反」

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「ワクチン接種への躊躇」は「世界的な健康に対する脅威」

 つまり、感染症の広がりを少しでも抑えるために、私たちの「マナー」向上が求められているということだ。そうであれば、今こそマナー講師の皆さんの出番ではないか。発信力のあるマナー講師の皆さんが、医療専門家の適切な指導を受けたうえで(この領域はビール瓶の持ち方と違って、間違ったやり方には実害がある)、より身近でわかりやすい言葉で、正しいマスクの着用方法や手洗いなど、感染症リスクを減らすやり方(マナー)を強力に発信していくことは、公衆衛生の向上に効果があるかもしれない。

 もちろん、ただマスクをすればいいという簡単な話ではない。厚生労働省は、インフルエンザの予防方法として次の5つを推奨している。どれかひとつをやればいいというのではなく、すべてを組み合わせることが必要だ。当然、マナー講師の皆さんは、これらも併せて「マナー」として強力に推進していただきたい。

1) 流行前のワクチン接種

2) 外出後の手洗い等

3) 適度な湿度の保持

4) 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取

5) 人混みや繁華街への外出を控える

 この中にマスク着用は入っていないが、マスクについては、「インフルエンザにかかったかもしれない」ときの対策として「咳やくしゃみが出るときはできるだけ不織布製マスクをすること」があって、むしろ咳やくしゃみによる他者への感染リスクを少しでも減らすための補完的な対策という位置づけであろう。とはいえ、正しい方法で着用すればまったく効果がないということもなかろうし、後述のように、外から見えるメッセージにもなる。

 1)のワクチンに関しては、一部の人々にみられる「ワクチン接種への躊躇」が、気候変動やHIVと並んで、WHO(世界保健機関)による2019年版「世界的な健康に対する脅威」トップ10のひとつに選ばれているという事実を付記しておこう。ワクチン接種者が増えれば、その社会全体の感染症リスクを抑えることができる。いわゆる集団免疫だが、ワクチン忌避の人がたくさんいれば、効果は薄れてしまう。単なる個人の選択問題ではなく、社会に対する配慮や思いやりの問題でもあるのだ。その意味で、現代社会においてワクチン忌避は重大なマナー違反であるといえる。

 当然、これは個人にとってだけ意味のあるマナーではない。感染症の広がりは企業にとってもリスクなのだから、これはビジネスマナーとしても意味がある。特に従業員の感染症への対処は、企業のリスクマネジメントとして重要なポイントだろう。感染症の広がりによって事業遂行に支障をきたしたり、大事な顧客を感染症リスクにさらしてしまったりするような企業がビジネスの相手として信用できるか、という話だ。

接客業従事者はマスクを

 2019年12月、小売り大手のイオンは食品加工担当者など、一部を除いた従業員に向けて、接客時におけるマスク着用は原則禁止するという新方針を打ち出した。顧客にとって表情がわかりにくく円滑なコミュニケーションの妨げになる、風邪や体調不良のイメージを持たれ不安を抱かれる、などを理由として挙げている。

 そもそも体調不良の従業員には接客をさせないという前提ではあろうが、感染予防のためマスクをしたいという従業員に着用を禁じるのは労働条件としてどうかと思うし、逆に従業員がマスクをしているほうが安心できるという顧客もいるだろう。

 実際、1月27日になって、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーの両パークで、希望する従業員に対し、マスクの着用を認めると明らかにした。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受けた措置であるという。企業側、顧客側ともに、意見が割れているようだ。

 そうであれば、ここでもマナー講師の皆さんの活躍が期待される。社会が全体として、接客時のマスク着用を当然のものとして受け入れるようになれば、感染症のリスクも多少なりと減少することとなろう。

 最も有効な対策がワクチン接種や手洗いであるとしても、これらは実際の接客時に見えるものではない。しかし、マスク着用は一見してわかる。潜伏期間にも感染力があることを考えれば、接客にあたる全員がマスクをしていてもおかしくはない。感染症抑止に対する総合的な対策をとっている企業の姿勢を象徴的に示すのが接客時のマスクであるとの理解が広がれば、むしろ安心の印ともなるかもしれない。

 前掲のヴィクトリア女王の都市伝説でもうひとつ、重要なポイントがある。それは、マナーを変えることができるのは、それを真に理解し体現できる者だけであるということだ。女王がその晩餐会で自らテーブルマナーを破ることができたのは、主催者であり、かつその場で最も地位が高いからだ。一般の社会においては、マナーを熟知し、それを指導する立場にあるマナー講師の皆さんに、現代の「正しいマナー」として、感染症対策に有効なマナーを広めていただきたいのだ。

 くりかえすが、これらはビール瓶の持ち方やコートの脱ぎ方よりはるかに重要かつ役に立つマナーだ。こうしたマナーであれば、マナー講師の皆さんの発信が炎上するリスクも大幅に減るのではないかと思う。

イオンが従業員のマスク禁止、客は「怖くて行けない」「お願いだからマスクをして!」 

 イオングループが接客時の従業員にマスクの着用を原則禁止したという。ネットでは疑問と反発が広がっており、「感染症が蔓延しそうで怖くて行けない」「お願いだ…

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マスクとワクチンを軽視することこそが現代の「マナー違反」の画像2 ウェジー 2019.12.25

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