労働者を食い物にするブラック労働組合の実態とは

【この記事のキーワード】
労働者を食い物にするブラック労働組合の実態とはの画像1

「GettyImages」より

労働組合を悪用する人間もいる

 「佐野SAのストライキも再び過熱、労働組合は弁護士にもない強い権利を持っている」では、会社とのトラブルに遭遇した際に、労働組合は、弁護士とならんで頼れる存在であることを述べた。

 弁護士は法律のエキスパートなので、オールマイティな対応が期待できる。だが、経済的な問題で依頼が難しい場合は、必然的に労働組合に相談することになる場合が多い。また、労働組合だけに付与されている権限もあるため、経済的に余裕があるとしても、弁護士に相談した後、労働組合に実務を依頼するケースもまま見受けられる。

 会社とのトラブル対応で、労働組合だけに付与されている特筆すべき権限は、「団体交渉権」と「団体行動権」である。

 団体交渉権とは、会社側の代表を強制的に話し合いの席に着かせる権利。団体行動権とは、一定の条件をもとに、部分的に職場を占拠・仕事を放棄したり、ビラ配りやデモを行うなどして労働者側が有利に働く条件を勝ち取る行為を指す(ストライキなど)。

 言うまでもなく、これらの権限は極めて強力である。特に団体行動権については、正当な範囲内であれば、職場を占拠したり、組合員が仕事を放棄しても刑事・民事において法的責任を問われない。

 しかし、そのことを逆手にとって、企業恐喝や民事介入暴力すれすれのことを行う「ブラック労働組合」も顕在化してきているのだ。

(執筆:松沢直樹)
(監修:宮本督弁護士/中島・宮本・溝口法律事務所)

ブラック労働組合が労働者と会社を食いものにする手口

 では、ブラック労働組合がどのようにして、労働者や会社を食いものにするのだろうか。その手順を追って説明したい。

 正社員雇用が大多数だった時代は、各企業に労働組合が存在した。しかしながら、非正規労働者が大多数になった現在では、社内に労働組合が存在する会社は少なくなってきている。

 現在は「合同労組・ユニオン」という形で労働組合を結成することが多い。同じような業種で働く人が会社を超えて労働組合を作り、組合員それぞれの会社でトラブルが発生した場合は互助活動としてその会社に出向き、団体交渉や団体行動権を発動するというものだ。

 つまり、会社側からすれば、社外の人間が押しかけてきて「話し合いのテーブルに着け(団体交渉権)」と要求してきたり、職場を占拠して要求をする(団体行動権)わけである。当然のことながら合法なので、会社側からすればこのような労働組合は極めて煙たい存在になる。

 あまり知られていないが、労働組合の結成は極めて簡単である。法人登記や、それに伴う税制上の優遇措置を必要とする場合は、各都道府県に設置された労働委員会の資格審査を受ける必要がある。だが、それらを必要としない場合は、実質上、2名以上の労働者が発起人になって規約を作り、労働組合を結成したと公言するだけでよい。

 つまり、2名以上の人物が労働組合を結成したと自称すれば、先に述べた権限をうまく使って、労働相談を持ちかけてきた労働者と企業の間に割って入り、双方から利益を抜くことが可能になるわけだ。

 悪意を持つ人間がこの仕組みに目をつけないわけがない。以下、私がブラック労働組合に関する相談を受けた例を示す。相談者の方の安全を守るために個人名・団体名などは伏せるがご了承いただきたい。

・26歳男性Aさんの例

 以下はAさんから寄せられた相談の内容だ。

――
 勤めている会社の残業代未払とパワハラが著しく、ネットで探した労働組合にコンタクトを取った。

 非常に親切に相談に乗ってくれたので、加盟し、労働組合側が申し入れをしてくれた団体交渉に臨んだ。労働相談の時とは打って変わって、激しいやりとりをする幹部を見て、怖くなったが、残業代の支払を勝ち取ってくれた上に、パワハラも止まったので感謝していたが、寄付金の名目で、回収した残業代をかなりの割合で寄付させられてしまった。

 抗議したものの「労働組合は互助組織だから」という一点張りで、さらに、他の方がトラブルに巻き込まれた時の団体交渉に出席するよう、何度も電話がかかってくるようになった。

 団体交渉のために頻繁に有給を取るわけにもいかず、すでに社内では上司から避けられるような状態になっている。経済的なメリットも薄く、今後会社で働き続けることを考えると、安易に相談するべきではなかったと後悔している。
――
 これは、合同労組(ユニオン)に加盟する際で起こりやすいトラブルである。労働組合は互助組織なので、他の組合員のトラブル解決にも協力しなければいけないのが大前提となる。しかしながら、そのことを加盟時にきちんと説明していないことや、会社を休んででも団体交渉に出席しろというのは大問題である。

 また、寄付金名目であっても、事前の合意がなければ、会社側から回収した未払い残業代の一部を組合に支払う義務などない。こういった点をきちんと事前に説明してくれない労働組合は、極めてブラック労働組合に近いといえるだろう。

・32歳男性Bさんの例

 続いて、以下はBさんが寄せてきた相談内容だ。

――
 長時間残業の上に、残業代をきちんと支払ってもらえない状態が続いていた。労働基準監督署に相談し、是正申告をしたものの、会社はまったく対応を変えず、残業代も支払われなかった。

 加えて、業務中に人格を否定するような暴言を浴びせられ、自分だけはボーナスが支払われないなどといった、あきらかに差別的な待遇を受けるようになった。

 そのため、ネットで探した労働組合に相談したところ、親身になって話を聴いてくれる上に、「どんな手を使ってでも会社側に謝らせる」と約束してくれた。労働基準監督署では、パワハラの取締りは難しいと回答があったので、他に選択枝がないと思い加盟した。

 会社側は一回目の団体交渉を無視。労働組合側は不当労働行為ということで労働委員会に申し立てをしてくれた。だが、申し立ての翌日から組合の街宣車が会社に押しかけてきて、「話し合いの席に着くように」と抗議活動を始めるようになった。

 「法的に解雇することはできないので自宅待機してほしい」という組合の指示に従って自宅待機しているが、出社しない間は賃金が支払われないため、経済的に困る状態になりかけている。

 加えて、組合側の会社に対する圧力がものすごく、無事に解決したとしても、働き続けることが難しいのではないかと心配している。そのことを組合側に相談しても当初の対応とは違い、解決した際の寄付金の支払についてしか話をしなくなった。
――
 これは典型的なブラック労働組合のケースといえる。組合員からの寄付を目的とした団体交渉は、非弁行為(弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関する事務を取り扱う行為)として弁護士法に違反する可能性があり、会社への執拗な攻撃を行うことは、常識的な労働組合ならまず行わない。

 Bさんによると、組合の脱退について質問したところ、恫喝のような発言を受けたという。ここまで来ると司法の介入が必要なので、労働法に強い弁護士を紹介し、紛争解決に向けて介入してもらうことを勧めた。

労働組合の交渉力は諸刃の剣

 労働組合に介入したことで逆にトラブルに至った実例を上げたが、このような労働組合に限らず、得てして労働組合に交渉を任せっきりにすることはトラブルに発展しやすい。交渉力が高い労働組合ほど、「団体交渉権」や「団体行動権」を行使しがちだからだ。

 「団体交渉権」「団体行動権」を行使することは、企業の運営を妨害するに等しい行為を行うわけでもある。当然、労働者側、会社側ともしこりを残しやすい。この二つの権利をできるだけ使わず、労働者の意向を聞いた上で対抗措置を取ってくれる労働組合であれば、もっとも良い条件で解決に導ける可能性が高くなるといえる。

あなたにオススメ

「労働者を食い物にするブラック労働組合の実態とは」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。