【町中華】飲み干したくなる透明スープの500円ラーメン/五反田・平和軒(東京)

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 最近あちこちで話題の「町中華」。安い・大きい・美味しいの三拍子が揃った、みんなが愛する大衆的な中華屋さんのことを指す。

 昭和の名残のような古い店構えのスタイルは次第に少なくなっているけれど、胃袋を満たしたい人々の気持ちがある限り「町中華」はなくならないジャンルだ。B級グルメを愛する筆者が独自の視点で歩いて尋ねた町中華を紹介していく。

都会のど真ん中にある「昭和」を残す町中華

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平和軒
東京都品川区大崎3-1-16
営業時間 11:00~15:00
定休日 日曜祝日

 今回紹介するお店は品川区大崎にある「平和軒」。

 くたびれた雰囲気の店が多い町中華の中でも、ここは初見の人が「大丈夫だろうか……」とトビラに手を掛けるのを一瞬迷いそうな店構え。店の暖簾の汚れているのは繁盛している証拠だとはよく聞くものの、既に汚れているどころでなく、原型を留めてない。

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 意を決して引き戸を開けると、中にはテーブルがふたつだけ。基本、店主が一人で切り盛りしているので、奥の厨房からガチャガチャと中華鍋の音がしている時には「いらっしゃいませ」の声もない。

 最近は店主曰く「ボランティア」の学生が何人か手伝っているそうで、彼らのいる時には「いらっしゃいませ」といってくれる余裕がある。そんなサービスのなさを店の持ち味として楽しめる人は、何度も通いたいと思うだろう。

 さて、引き戸の向こうはテーブルが二つだけの狭い店と思いきや、違う。左手を見ると小上がりが。これが小上がりというよりも「大上がり」とでも呼びたくなるメインの客席。民放の昼のワイドショーが映っているテレビを中心にうなぎの寝床のような靴を脱いで上がる居間のような客席である。

 テレビを正面から見ることができる席は入口から近いもので、後から来た客は「後ろすみません」と一言添えて先客の背中のところを、よいしょと通り抜けなくてはいけない。これもまた、ほかの店ではやることはないだろう動作である。

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 そして、水もセルフサービス。だから、勝手知ったる常連客は、まず厨房に声をかけて注文。それから、水をコップに入れて靴を脱いで座るのである。

13時で早くもライスが品切れ

 こちらのお店、最近の人気はトマトラーメン。数年前から登場したメニューだがなぜか密かな人気メニュー。どういう都合なのかメニューには「MISO TOMATO」とローマ字で書いてある。ほかにも、炒め物などのメニューが揃っているが、もっとも気になるのは、この店の最高額メニューの肉うま煮。値段は1400円。ラーメンが500円という大衆的な値段の店で、お客はどういう気分の時の肉うま煮を注文するのだろうか。

 今回筆者が注文したのは、町中華の定番、ラーメンとライス。厨房をのぞき込んで「ラーメンとライスで」と告げると店主から、こんな返事が。

「ごめん、ライス終わっちゃった」

 時計を見るとまだ13時。今は昼営業しかしていないのだけれども、それにしても終わるのが早い。こちらのお店、筆者は何度も訪れているのだけれど、売り切れには何度も遭遇している。一度は閉店間際に入店した途端に「あ、もう麺がない」。別の時には「ちょっと待って」と残った麺をかき集めてなんとかラーメンを一人前つくってくれたことも。

 「町中華」に欠かせないのは、マニュルアル化されたチェーン店にはない「今日はなにが起こるのだろうか」というワクワク感。それが、この店には凝縮されているのだ。

 10分ほどでラーメンが運ばれてきた。器には「平和軒」の文字。レンゲにも同じく店の名前が描かれているのが、なんとなくお得な感じである。チャーシューは小ぶりながら2枚。500円のラーメンでチャーシューが2枚というのは、なかなかできないサービスのよさ。それも、グッと味が染みているので食べ応えがある。前述の通り売り切れでなければ、ご飯が欲しくなる男子学生向けの味付けである。

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 レンゲにネギと一緒にすくって飲むスープにも、また驚く。透明感がありながら濃厚。塩辛いわけではなく出汁が濃い。麺を楽しみつつスープも丼の底が見えるまで飲み干したくなる味なのだ。

時が止まった町中華は都会の喧噪を忘れさせてくれる

 一気に麺をかきこんで、ふうっと一息。

 午後1時を過ぎていれば、それほど店も混雑はしない。テレビを見ながらボーッとしている時間はなによりの贅沢だ。つい50メートルも先は山手通り。通りの向こうは五反田のオフィス街の喧噪があるというのに、ここだけはいつまでも昭和な雰囲気である。

 会計は伝票もなく自分の食べた物を申告する方式。店主は調理の手を止めて、お釣りを渡してくれる。その時に目にする厨房に鎮座しているホコリをかぶった黒電話もまた、この店の歴史を語っているよう。

 「ありがとうございました」と、店主の気持ちのいい声を聞いて店を出る。立地は路地裏の「町中華」だというのに、山手線の大崎駅方面へ抜ける近道のためか、けっこう人通りが多い。それが、この店が長く続いてきた理由なのか。

 ご馳走様でした。

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