「友達に重い話ができない…」「恋愛に興味ないのは変?」さまざまなさびしさを解きほぐす~『さびしすぎ』ない日常への一歩

文=池田智
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”適切”な距離感

 「相手に嫌われたくないから、忙しいのに向こうの誘いに応じてしまう」とか、逆に「連絡が少ないと心配になってしまう」とか。うまく相手との距離感を作るのが難しい……という話をしてみたくて。自分は相手とこういう風に過ごしたいと思っているけど、それがうまく噛み合わないっていうのは、お客様も私もよく直面する悩みなのよね。

中村 人と関わるコストってそれぞれ違うよね。たとえば、LINEの返信ひとつでも、人によってはかなり大変なことだったりする。返事が来なくて「嫌われたのかな」と思っても、実はそうじゃない場合もあるし。

 私は、「コミュ障」と自称するような、自分からコミュニケーションを取ることが難しい人、その結果距離が遠くなりがちな人に対しては、押しすぎないけど縁が切れないように私から定期的に連絡とるようにしてる。

 私は、趣味や楽しいことを共有できる人はいるし、コミュニケーションのコストもあまり感じない方だけど、つらいことを分かち合える人がいなくて。仕事でさまざまな悩みを聞いたり、自身も病気や生活苦を経験したことで、年々、人に話をするハードルが高くなってるんだよね。生活保護とか風俗とか不倫とか、その他背景がありそうなことを「ダメなこと」と一方的に、表面だけ見て話す人は、友達にはなれないかも……。

中村 さっきも話に出たけど、しんどい話を共有するハードルは高いよね。

 今って自己責任社会じゃない。自責を繰り返して、つらい気持ちでいるところに友達に相談して、「そこがダメなんじゃない?」とか、厳しい言葉が返ってきたら、励まされるどころか立ち直れない……。本当は、「それは大変だったね」とか言ってほしい。でも、「受けとめてほしいだけなんて、重たいし求めすぎかも」と思って、結果的になにも話せなくなったりなぁ。

同じ分だけ想われること

 たとえば、友達グループで、自分だけ遊びに誘われてなかったり、友達が自分より、別の友達と話している時の方が楽しそうでつらくなったり。「自分はどのレベルの親しさなのか?」「どれだけその人に思われているのか?」で悩むことがあったりするんだけど。

中村 相手と自分の思いに差があるのではないかと悩むのはわかる。でも、相手の別の友達と親しさを比べてつらくなるみたいなことは私はあんまりないかも。普段グループづきあいしないからかなあ。私は友達とは一対一で仲良くなることが多いので。

 一緒にいる時に「相手は楽しんでくれているかな」と思うことはある。自分だけが楽しいんじゃないか、そうだったら嫌だな、って。でも、会ってくれているからには、向こうも会いたいという気持ちが一応あるのだろうと考えるかな。 私の友達は人に会うコストが高い人が多いのね。だから、「会いに来てくれたからには少なくとも嫌われてはいないだろう」と思う。

 うーん、そこで「会いたくて時間を作ってくれた」と思うか、「無理させてないか」と悩むかの違いはどこにあるんだろう……。

中村 「無理させてないか」と悩むことはもちろんあるよ。というか常にそこに悩んでる。ただ、そこは私がいくら考えてもどうしようもないというか、誘いを受けるか断るかは最終的には本人の選択だから…。あと、「つらい時はドタキャンしてもいいよ」とは伝える。でも、そういう人ってつらくても言えなかったりするんだよね……。そこはすごく難しい。まあでも、だからこそ、会えたからにはその時を楽しもうとはしてる。

 マイナスに考えてしまうのは、「会いにきた」ということを、「相手が選んだこと」だと思えてないということかな。本当は「無理して来てる」というのは自分の考え・不安なのに、相手の方がそう考えていると思ってしまう。自他を切り離せていないのかもしれない……。

 私が病気で会社を解雇されたとき、金銭的にも精神的にも、すごくケアしてもらった人が居たのね。そのうち相手に対して「迷惑をかける一方で、なんの”価値”も提供できなくてごめんなさい」という気持ちになってしまって。でも、それを向こうに言ったら「楽しいときは楽しいし、別に気にしてないよ」と。

 でも、相手のその言葉が信じられなかった。かけている負担の重さに、楽しさの量が見合わないんじゃないか、とか考えちゃって。

中村 そういう時は「私は自分ではそう思えないけど、この人はそう思うらしい」と思うようにしてる。相手が発する、自分では信じられない言葉は、せめてそうやって受け止めるしかないかなと。

 その手放し方、いいね……。そうか、「いいって言うなら、いっか」だよね。相手の言葉の裏側にまで、自分が責任を持たなきゃいけないと思っちゃってたかも。

中村 ケース・バイ・ケースだし、もちろん注視は必要だけど、相手の言葉に関しては本人が言ってくれたことを信じるしかない部分も大きいよね。

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家か職場かという毎日

 自分の家と職場以外に居場所……みなさんにはありますか? 無くていい人もいるし、家と職場の往復じゃ息が詰まりそうって人もいるかな。私は趣味のコミュニティとか、バーなどの飲食店とかが中心。行けば決まった人がある程度いて、疲れたらいつ帰ってもいいっていう空間が好きで。

中村 私は、家と職場以外の人間関係の基盤としては、SKE48やディズニー、声優関係のオタクとか、メイドカフェ研究から生まれたつながりとか、手伝ってるNPOのスタッフとか、高校の時の塾の仲間とかがあるかな。あと、物理的な居場所としては、東京ディズニーシー。ぶらぶら散歩して、行きつけのバーラウンジでお酒飲みながらバーテンダーキャストと喋ったりとか。

 コミュニティが難しいのは負担になる側面もあるところ。昔、大きめの社交ダンスのサークルに入っていたことがあって。みんな面白いし親切な人で、話したり飲みに行ったりしても楽しかったのに、最終的にわずらわしくなって離れてしまったことがあったんだよ。いい人が集まっているところでも、関わり続けるのにも体力がいる。私の場合は、コミュニティ内の相関図というか、パワーバランスを意識する場面が出てくると、途端に離れたくなってしまう。

中村 私もつながりが強固というか凝集性が高いコミュニティは苦手で……。わりとコミットしてもしなくてもいいコミュニティにいるかも。コミュニティの成員があまり固定されていなくて、人の出入りが流動的なコミュニティというか。そして、無理に一緒に何かしなくてもいいというか。そういう意味でも、趣味とか好きなものでゆるくつながるのはいいよね。それでも向き不向きはあったりして。

 今、ハッシュタグ付ツイートで「自分に合う居場所が見つけられるかはガチャ」って書いてくださった方がいるけど、本当にそう。時間やお金、コストもかかるよね。

中村 生活の中にあるものから見出していく方法もあるよ。行きつけのカフェの店員さんと顔なじみになるとか。お店に行くたびに話してると、向こうも覚えてくれて、その店に寄るのが日々の楽しみになったりする。

 どうやって話しかけたらいいかわからなかったら、とりあえずおすすめ商品を聞くといい。向こうも商売だから、商品について質問されたら嫌な顔はしないはずで、そこから会話を始めるのは意外とハードル低いと思うんだよね。

 私も「物理的な居場所を作ろう」と思ったことがあるんだけど、収益や維持の方法を考えると現実的には飲食店になる。もちろん、居場所としての機能を強く意識して運営している飲食店が、既にあることは知っているよ。でも、そういう店があっても、そこを居場所と思えない人もいることを考えると、別の方法がもう少し必要なんじゃないかと思って。

中村 そう考えると、特に目的もなく集まれて、何もしないでいい場所が必要なのかも。最近、友人がやっている、思想・建築・デザインを架橋しながら批評活動を展開するメディア・プロジェクト「Rhetorica(レトリカ)」が「おうち性」という言葉を提唱していて※3。「“誰かの実家”のような独特の居心地」という意味みたいなんだけど、私の解釈としては、無理に何かをしなくても、とりあえずただそこにいることができる場所のことなのかなと思う。

※3 “おうち性”に関する展示をやるよ(7/20-8/8)|seshiapple|note

 「実家」に私を含めいいイメージを持っていない人もいるだろうけど、「気軽に行ってダラダラできて、いることを否定されない場所」ということかー。

中村 開かれているけど、いてもいなくてもいい場所。隣の人と話してもいいし、逆に黙ってその場にいるだけでも居心地が悪くならない場所。私は5年に一度、「レロ会※4」という自分の誕生日にかこつけた交流会をやっているのだけど、レロ会には「おうち性」を持たせたいと思ってる。難しいけどね……。

※4 レロ会

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 あちこちに広がっていく話を、橘さんは最後に「『自分は何がほしいのか』を考えてみることで、さびしい気持ちを見つめ、ひいては”さびしすぎない日常”を目指せるのでは」と締めた。

 自分の弱い部分や、うまくいかなかった過去についても、隠さず話しながら議論を深めていく2人。50人超の参加者は真剣に、しかしくつろぎながら耳を傾けていた。

 イベント終了後、参加者たちが自主的に懇親会を行ったり、SNSやブログで感想や意見をつづったりと、それぞれが「さびしさ」について語りあっていたのは、中村さんと橘さんが少しずつお互いをさらけ出していたからかもしれない。

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