脱いでてもセックスシーンがあっても「フェミニズム」な表現はある/石川優実☓吉田浩太監督

文=石川優実
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吉田:石川さんには『女の穴』や、僕が監督する舞台にも出てもらって、そのときに伝えたと思うんですが、僕は俳優に「女性は美しくなきゃいけない」という話をしています。それは、自分を誰かと比較してしまうとダメになってしまう、という意味です。たとえば「自分よりきれいな人がいる」「自分はこういうとこがダメだ」とコンプレックスを抱えてしまうと、女の人って輝けない。強制的にでも、自分に絶対的な自信を持ちなさいという話をよくしています。

ーー稽古中ずーっとわれてましたね。その時期の私は自己肯定感がすごく低かったんです。吉田さんに「無理にでもなんでもいいから自信を持て」といわれ、「???」となっていました。だって、自信って何かを成し遂げないと持てないものだと思ってたから。たとえば売れたら自信を持てるとか、映画主演一回じゃダメだとか、いろんな理由をつけて自信を持とうとしなかった。だけど吉田さんがあまりにもいうから、私は自分と向き合うことに時間を使うようになりました。そこから性について発信するようになったり、#MeTooにつながったりした、というのがあります。自信を持ってない俳優さんが自信を持つと、やっぱり変わりますか?

吉田:ぜんぜん違いますね。基本的に、人の魅力っていうのが色気だと思うんです。自分自身の中心にある感情みたいなものに対して「これでいいんだ」と自分で納得して生きていければ、そこから色気が生まれてくる。俳優に限らず、人間ってそういうものだと思っています。特に女性は、男性社会のなかで差別されたり性暴力に遭ったり虐げられながら生きていると、自分に自信を持てないだろうと思う。もっと自分を解放して生きていければ、それが魅力になるんじゃないかなと思います。それがイコール、エロさ、色気に繋がると思う。

弱い立場になってはじめて気づくこと

ーー「自分はこれでいいんだ」って生きている人って、魅力的に見えますもんね。

吉田:石川さんと最初に会ったのはもう10年も前ですけど、あのときに比べていまのほうが圧倒的に自分のやっていることに自信があると思うし、単純にモテるでしょ?

ーー本当の意味でモテるようになりました(笑)。セクハラしようとする人は寄ってこなくなったから精神的負担もなくなったし、そのぶん自分のことを大切にしてくれる人や、尊重してくれる人を受け入れることができるようになりました。吉田さんは、いまの私の活動をどう見ていますか?

吉田:よくやってるな、と思ってます。自分の作品に出てもらったときは「ダメだダメだ」って演出をしたけど(笑)、ああいうのを経て、いまの活動があるんだったらうれしいです。いま悩んでる俳優に、「石川優実ってのがいてね」っていうこともあります。ひとりの女性として自信を持って生きていくことが大事だから彼女を見習ってほしい、って。悩んでる俳優、たくさんいますから。

ーーありがとうございます! 吉田さんは、元々女性を対等に見ることができる人なんですか? この「元々」というのがポイントで、誰にいわれなくても自然とできる人もいるし、いっくら教えてもまったくできない人もいます。

吉田:僕は、30歳のときに脳梗塞で倒れたんですよ。それまで、監督という立場・肩書きでやってきて、ちょっと調子に乗っていたところもあったんです。それが、病気をして1年間くらい何もできないとなると、まったく人から連絡がこなくなるんですね。そのときに、自分が監督だといって誰かを見下していたことが本当に意味がないと実感しました。病気のときの、何もできない状態の感覚で物事を見なければ、と。人って、本能的には差別しちゃうじゃないですか。それを理性でしないようにしてるんだと思いますね。

ーー自分が弱い側の立場になって気がつけるという人が多いのかな。

吉田:そうならないと気づけない人がほとんどだと思う。

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