
『それでも俺は、妻としたい』著者・足立紳さん
夫のセックスに苦痛を感じたことがきっかけで、夫婦関係が破綻しゆく様を克明に描いた『夫のHがイヤだった。』(亜紀書房)。そして、日々罵倒されつつもどうにか妻とセックスすることに苦心する小説『それでも俺は、妻としたい』(新潮社)。それぞれの著者であるMioさんと足立紳さんの対談から浮かび上がる、大多数の夫婦に当てはまるすれ違いの数々。熟年夫婦の理想のセックスを探る、セックスレス対談、中編。
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セックスを拒む女と、セックスを拒まれる男。夫婦間のすれ違いはなぜ起きる?
近年、夫婦間のセックスレスを題材にした作品が急増している。『夫のちんぽが入らない』『今日も拒まれてます~セックスレス・ハラスメント 嫁日記~』『あなた…
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ーーMioさんの元夫は友人の連帯保証人になり借金を背負いましたが、そのことがセックスを拒む材料になっていました。
Mioさん(以下、Mio):借金自体は、本当のところはどうでもよかったんですが、拒否理由にしちゃいました。夫婦は、ふたりで苦労を乗り越えてこその夫婦だと思っていたので、借金の件もわたしは積極的に「ふたりで乗り越えよう」というスタンスでしたが、元夫はイヤがりましたね。
ーーなぜですか?
Mio:楽に解決したかったんでしょうね。親に泣きついていましたし。「夫婦は、お互いに協力しあって何かを乗り越える」といった前提がなかったのかもしれない。「夫婦は安らぎや楽しさを共有し合うもの」というポジティブな面しか見ていなかったのかもしれません。
ーーなるほど。だから仕事後、ソファにどかっと座りビールをプシュッと開けてからの、Mioさんに「舐めて」がいえたわけですね。
Mio:わたしは、「相手がそれを求めるならする」という感覚でした。彼にとっては安らぎですが、私にとっては「このあとセックスを求められるかも」と思うばかりで、とてもじゃないけど安らげない。
スキンシップなんていらない!?
足立紳さん(以下、足立):その描写は思わず笑ってしまいました。僕は口が裂けてもいえない台詞ですよ。いったらどんなことが起こるのか、想像を絶する怖さがあります。
ーーなぜ笑ってしまったんでしょうか。
足立:元旦那さんのあまりのおおらかさに、です。「冷蔵庫からビール取って」くらいの感覚でいっているので。
ーーおおらか! などほど、腑に落ちました。悪気が一切ないんですよね。
Mio:そう。悪気がない。すべてがおおらかなんです。そこが好きでもあったので、「こんなこと、普通はしないよね……」とは思いながらも、「でもこうやってこの人を幸せにすることができるのはわたしくらいだ」と思い込んで応じていました。
足立:やっぱり、痛みさえなければうまくいっていたんですね。夫婦関係が歪んでいくきっかけがないわけですから。
Mio:セックスが苦痛じゃなかったら、いまも夫婦だったかもしれません。いまでも、わたしがうまく伝えられなかったのが、大きな一因だと思っています。いきなり強引に体を触られて「触らないで」というと、「え、なんで?」となる。きちんと、「その触り方がイヤ」といえませんでした。だって、AV女優さんはいきなり強引に触られても気持ちよさそうにしているし、って。
だから元夫が求めてくると、する前に成人雑誌などを見て自分のエロスイッチを高めて「はい、どうぞ!」とやっていました。間違っていましたね。