男性社会における“いいヤツ”が気づけない、妻の本音

文=有屋町はる
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左/『夫のHがイヤだった。』Mioさん 右/『それでも俺は、妻としたい』足立紳さん

 元夫のセックスに苦痛を感じたことがきっかけで、夫婦関係が破綻しゆくさまを克明に描いた『夫のHがイヤだった。』(亜紀書房)。そして、夫が日々罵倒されつつもどうにか妻とセックスすることに苦心する小説『それでも俺は、妻としたい』(新潮社)。対照的すぎる作品を描いたMioさんと足立紳さんによるセックスレス対談。拒否の背景にある、「セックスは外で済ませてほしい」という妻の真意を問うた、後編。

▼前編はこちら

セックスを拒む女と、セックスを拒まれる男。夫婦間のすれ違いはなぜ起きる?

 近年、夫婦間のセックスレスを題材にした作品が急増している。『夫のちんぽが入らない』『今日も拒まれてます~セックスレス・ハラスメント 嫁日記~』『あなた…

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男性社会におけるいいヤツが気づけない、妻の本音の画像2 ウェジー 2020.02.10

▼中編はこちら

産後クライシスからのセックスレスでも「夫を褒めて育てなくていい」

 夫のセックスに苦痛を感じたことがきっかけで、夫婦関係が破綻しゆく様を克明に描いた『夫のHがイヤだった。』(亜紀書房)。そして、日々罵倒されつつもどうに…

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男性社会におけるいいヤツが気づけない、妻の本音の画像2 ウェジー 2020.02.11

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足立紳さん(以下、足立):前回もいいましたが、やっぱり相手に対する思いやりでしかないですよね。まあ僕自身が妻に、「お前に一番足りないのは思いやりだ」といわれているから、自戒を込めて話していますが。いろいろ思いやって行動しているつもりでも、「あれ? 俺の行動、思いやりとして通じてない……かも?」と思うことはよくあります。

ーー思いやりを実践していても通じないんですね。

足立:妻からすると、僕なりの思いやりは、思いやりの範疇に入らないのかもしれません。人は“思いやり”という言葉を簡単に使いますが、実践するのは相当むずかしいですよね。

Mioさん(以下、Mio):男性がやるサプライズプレゼントの類が、その最たる例ですよね。ある男性の話ですが、「仕事が成功したから、妻の誕生日にサプライズプレゼントとして家賃30万円の家に引っ越しを決めた」というんですよ。いやいや! そんな大事なことをひとりで決めるなんて! と女性は思うじゃないですか。間取りが気に入らなかったらどうするの? 気が進まないのに無理やり引っ越しさせるの? と。だから男も女も相手になにを望んでいるのか聞くことが、一番の思いやりかもしれません。聞く姿勢が足りない男性は多いですよね。

足立:たしかに、妻のいうことを「なんか聞かない」って人は多いかもしれません。

ーーそんな日々の言動のしわ寄せが、セックスにいくんですね。

Mio:一生懸命ピストン運動して、「僕はこんなにがんばっています!」といわれても、「いや、それ気持ちよくないから」と実は思っている。そういう現象に似ています。

拒絶される理由がわからない夫

足立:Mioさんの本の中にも、「夫が上に乗って、顔を真っ赤にして腰を振っている」といった描写がありましたが、そういったところも含めて総じて「こんな男性、本当にいるの!?」と思ってしまいました。

Mio:わたしも、自分だけだと思っていましたが、こういったことをブログに書いたら1日で7万7千アクセスもあったうえ、「うちもそうです」というメッセージも多数寄せられました。

ーー『夫のH~』はそんなブログをまとめた本ですが、ブログ時代に男性読者はいましたか?

Mio:はい。最初は男性から批判がたくさんくるんじゃないかと思いましたが、ほとんどなくて。タイトルを見てシャットアウトする男性が大多数だと思いますが、読んでくれた男性のなかには、「身に覚えがある」というメッセージをくれた人もいます。逆に、「妻のエッチがいやだった、というのもありますよね」というメールが男性からきたので詳しく聞くと、「脇毛が生えていていやだった」なんて返ってきたので、「だったらあなたが剃ってあげれば?」と。

ーー足立さんのお友だちのなかに、Mioさんの元夫のような人がいたら苦言を呈したりしますか?

足立:飲み会で「俺、女房のことを公衆便所としか思ってないからさあ」というようなやつですか? そんなことをいうやつがいたら、その場が白けるだけですよ。まあMioさんの元夫さんもそんなことは一言もいっていませんけど。

Mio:彼は自分のセックスを、公衆便所での排泄行為だなんて思っていないと思います。実際はそういう扱いでしかなかったのに、彼はむしろ「なぜ愛する行為を、妻は拒絶するんだろう」と思ってたんじゃないかな。

足立:そういう男性はいそうですね。自分としては妻を大切にしていないなんて感覚は一切なく、「どうして拒否られるんだろう」と。たとえばMioさんの元夫のようなタイプの男性が『夫のH~』を読んだとしても、自分のことだとは思わないと思います。

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