韓国国内での不満・反発やネット炎上
しかし、それでも韓国国内では不満や反発の声が上がっている。武漢からの帰国者の隔離先となる施設がある自治体の住民たちから「何の連絡もなく決められた」「感染を拡大させたらどう責任を取るつもりだ」という怒りの声が上がり、説明に訪れた市長や知事を前に反対のデモを行い、詰め寄るなどの混乱も見られた。
また、3番目に感染者と確認された50代の男性が、武漢から帰国後、症状が出る前にソウルおよび郊外の各地を所用で移動、友人や知人などと会い、結果的に友人の一人、さらには友人の家族にも感染が確認され、前述の通り「3次感染」の発生につながった可能性が指摘されている。
この感染者の男性に対する非難がネット上を中心に殺到し、何と大統領府である青瓦台のホームページには「男性に処罰を」という声が上がり、これに同意する1万近くの署名が集まっている。もちろん、政府がこれを受理する公算は皆無だ。さすがにこれは感染者の男性が気の毒で、精神的なストレスも心配されるところである。
MERSの際の教訓を活かした形であったとしても、やはり、国民全員からの賛同や評価を受けることは難しいようだ。ましてネット上に膨大な情報や声があふれる現在では、有事に迅速かつ的確に国民へのアナウンスを行っていくことは、どこの国にとっても課題といえることではないだろうか。
支持率回復のきっかけに
韓国政府がここまで対応に必死に力を入れ、国民に向けたアピールをしている背景には、4月に国会議員総選挙を控えていることも少なからず関係していると考えられる。長引く経済の低迷や、停滞する北朝鮮との関係、感情的な外交政策など文在寅(ムン・ジェイン)大統領への風当たりは強くなっている。
今回の一連の対応を見ていると、非難の集中砲火を浴びた朴槿恵前大統領と同じ轍を踏まぬように、ここで4月での選挙の勝利、支持率の回復も含めた挽回をしたいという文大統領の思惑も感じられる。
いずれにしても、「新型コロナウイルス」の全容が解明され、感染拡大が収まらないことには国民の不安も続き、経済や多方面に影響を及ぼすこととなる。一日も早い事態の沈静化が望まれるところである。
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