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テレビが女にかけた呪いを解く「それで得するのは一体誰?」

文=原宿なつき
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「Getty Images」より

 先日、友人宅で『グータンヌーボ』というバラエティ番組を観て、びっくりする場面に出くわしました。自宅にはテレビがなくバラエティ番組を観るのは久しぶりでした。出演されていたのは女優の剛力彩芽さん、モデルの滝沢カレンさん、お笑い芸人のハリセンボン近藤春菜さんで、3人は自身の恋愛観を語っていました。

 私が驚いたのは、滝沢さん、剛力さんが「男性を立てたい」と語っていたことです。

 私自身は女性として男性と恋愛をしているけれど、「男性を立てたい」と考えたことがありませんでしたし、友達にもそういった発言をする人は皆無。それに「男性を立てる」ってあまりにも昭和っぽい考え方だと思えたので、「なんで若いテレビタレントさんたちが、『男性を立てたい』発言をするのだろう?」と不思議に感じたのです。

 その疑問に対する自分なりの答えに、『足をどかしてくれませんか。――メディアは女たちの声を届けているか』(亜紀書房)を読んで思い当たりました。

テレビで活躍する女性が「男性が好きな女性像」を演じるのは当たり前

 なぜ女性タレントが「男性を立てたい」発言をしたのか。彼女たちが心からそう思っている可能性もありますが、その一因に「テレビ業界内でウケがいいから」もあるのではないでしょうか。つまり処世術です。

 なぜなら、テレビは圧倒的に男性優位の業界だからです。

 『足をどかしてくれませんか』でジャーナリストの白河桃子さんは、民放労連女性協議会の在京テレビ局女性比率調査を引用し、マスメディアで常識化している働き方を分析しています。

 その調査によると、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、東京MX、NHK(全国)の女性社員比率の平均は22.6%。役員にいたっては4.7%、局長は8.3%だそうです。報道部門、制作部門、情報制作部門の最高責任者の女性比率は、全局合わせても0%。0って! 漠然と「テレビ業界は女性が少ないんだろうな」とは思っていましたが、これほどまでとは知りませんでした。

 『足をどかしてくれませんか』の編者である東京大学大学院情報学環教授の林香里さんは、

<圧倒的に男性優位な社会で生きる女性たちにとって、男性の好みの女性になることは、本能的に身の安全を守る生き残り戦略となる。だから、女性たちに対して、どうしてそんな主体性がないんだ、もっと強くなれ、自分らしくなれ、男性本位のルールなんて無視して自らを解放せよ、と言うのも酷だ。むしろ、これこそ高学歴女性たちによる一つの圧力のように思う。>(p11)

と書いています。

 「男性が牛耳っている業界」で生き抜くためには、「男性に気に入られる言動をする」以外の道はないのでしょうか?

 おまけにテレビをはじめとする主要メディアの提示する女性の表象は、「リアルな女性」ではなく「画一的かつ陳腐」なものに終始しているように思えます。

テレビが女にかけた呪い

 執筆者のひとりであるジャーナリストの治部れんげさんは以下のように指摘しています。

<息子(引用者註:小学生)は私以上にCMのジェンダーチェックに厳しい。彼によれば、多くのCMは「男が偉そうに女に何か説明することが多い。それに女がくねくねしすぎ」という。あらためて見ていると、確かに男性が年上で女性が年下という組み合わせのCMが多い。男性の容姿は多様だが、女性はほぼ例外なく若く細く美しくきちんとお化粧してお洒落な服を着ている。>(P174)

 治部さんのお子さんはとても鋭いと思いました。私もこの点については常々違和感を抱いています。CMのみならずテレビ番組でも、中年男性MCの横には若くて細くてかわいい女性を配置するのが定番です。ゴールデンタイムのテレビバラエティは、まるでこの世の中には、「若くて細くてかわいくて、性的魅力があり、にこにこしているサポート役の女」と「性的魅力のないブスやおばさん(女芸人さんがこの役を演じさせられることが多い)」しかいないと言わんばかりです。極端かもしれませんが、「ヤレる女とヤれない女の二種類しかいない」みたいな。

 また、執筆者のひとりである小島慶子さんは、女装パフォーマー・ライターのブルボンヌさん、林さんとの鼎談で、テレビやCMが画一的な女性像ばかりを映し出すことの弊害を指摘しています。

<エイジズムとルッキズムにさらされすぎて、女性たちは「やっぱり女の子は若くてかわいくておしとやかにしているほうが、圧倒的に得するわよね」って思わざるを得ない。(略)20代の子なんかも、このまま時よ止まれ! って願っちゃってる感じが悲しくて。奇跡の40代とか、つまりはいつでも20代に見える女であることがよしとされる感じは本当に切ない。いつだって自分の人生なのに>(P121)

 テレビばかり観ていると、「若くてかわいい女」と「性的魅力のないブスやおばさん」の二択しか女性はなり得ない、という呪いにかけられてしまうのでしょう。この呪いにかかってしまったら最後、「うるさいおばさん」にならないように気をつけて、自己主張せずにっこり微笑み、老いを受け入れられずヒアルロン酸を打つことになったり、いい年なのに「学生に間違われた!」と喜んでしまうのではないか……と思います。

(もちろん「テレビじゃなくてYouTubeならOK」「素人の配信動画なら呪いはない」なんてことは全くありませんが。YouTubeだってテレビというマスメディアの影響を少なからず受けた作り手がコンテンツを配信していますし、ステレオタイプな表現を再生産する温床になっている側面もあるでしょう。)

女性にかけられた呪いをとく方法 

 さて、残念ですが、私自身もこの呪いにしっかりとかかっています。恥ずかしながら、実年齢より若く見られたとき、喜んでしまったりするのです。でも、幼い頃からずーーーっと、「マイナス○才肌!」という広告や、「若さをもてはやすテレビ」にさらされてきたことを考えれば、無理もありません。日本で生まれ育ってこの呪いにかかっていない平凡な女性って、いるのでしょうか。

 呪いを完全には解くことはできなくても、呪いから距離を置くことはできるかもしれません。呪いから距離を置くための方法は色々ありますが、一つの方法に「この呪いによって誰が得をしているのか」を考える、というものがあります。

 モテる女性、デキた妻、賢い女性だとメディアが褒めるのは、「若くてかわいい」「女子力が高い」「タダ働きを率先してできる」「男性のプライドを立てられる」「男性の浮気は大目にみる」……こういった女性です。でも、女性がそうであろうと努めることでメリットを得るのは、一部の男性ですよね。

 そんな「自分にとって都合がいいばかりの女」を好きな男にモテたところで、嬉しくなさすぎる……むしろ、不快です。自分が上記のような女性であることで得られるメリットなんて、ひとつもありません。不愉快と引き換えにリッチな生活(結婚=お金)をゲットとか……全然喜べないです。

 ただ、私は「女性は男性を立てるべき」の呪いにはかかりませんでしたが、「女性は若くてかわいい方がよい」という呪いにはかかってしまっていました。でも35歳になった今、「若さを維持しようとすることって、最悪の投資だよな」とも思っています。

 ハリウッド女優などを見れば明らかですが、どれだけお金があっても、人は皆、老いていきます。美しさを武器に仕事をする女性たちですら、若々しくいようと頑張ることで得をしているようには思えません。パンパンに腫れたような顔をしている女優さんも多く、物悲しい気分にさせられます。彼女たちが「若さや美」に執着することで得をするのは、美容皮膚科・美容整形外科・化粧品業界などでしょう。もちろん本人が自己満足を得られていればそれはいいのですが、悪く言えば美容業界のカモですよね。

 呪いによって「誰が得しているのか」をじっくり考えた結果、完全に呪いが解けたわけではありませんが、急激に「冷めた」というか、「馬鹿らしい」と思えるようになりました。

 私個人としては、テレビがリアルな女性の声を反映してくれる時代がすぐにくるとは思えないため、娯楽としてのテレビには一切期待をしていません。テレビから聞こえてくるのは「昭和かよ!」とツッコみたくなる発言ばかりで、つけていてもストレスがたまるだけだし、呪いが強化されるだけです。

 娯楽としてテレビを観るくらいなら、よっぽど多様で、人間らしい女を描いてくれている『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』でも観ていた方が精神衛生上いいと思います。「女性としての自信を失いたくないなら、テレビは観ない方がいいよね」というのが現時点での私の意見です。

それでも期待される「女性ならではの気遣い」

 問題はテレビだけではありません。新聞などのニュースを伝えるメディアにおいても女性比率は少なく、男性が興味を持たない(とされる)けれども大切な問題(保育園の待機児童問題やジェンダーの問題)が取り上げられにくい、という現状があります。

 たとえば、2017年アメリカで行われたシスター・マーチ(女性の人権をメインテーマとして行われたデモ。計300万人が参加)に関しても、世界261カ国で大きく取り上げられた一方で、日本のメディアではほとんど報道されることがなかったと言います。

 こういった現状がある中で、女性ジャーナリストたちの横のつながりはとても頼もしく、『足をどかしてくれませんか。――メディアは女たちの声を届けているか』には勇気をもらいました。

 ただ、ひっかかる点もありました。損害保険ジャパンの役員である伊藤正仁さんが「企業にとってのダイバーシティ」について語るというコーナーで、以下のように述べられていたのです。

<私が「女性活躍」が本当に必要だと感じたのは、東日本大震災のときでした。被災された方たちへの電話対応がとても丁寧だったり、コメントを添えて文書を送付したりするなど、女性ならではの気遣いを発揮し、女性社員がいたるところで活躍してくれました。(略)あらためて、保険の重要性、意義を心から理解し、女性活躍や女性の登用は重要であると感じました。>(P223~224)

 「女性ならではの気遣い」か………。いつか、「気遣い」が「女性ならではの特性」だと言われることのなくなるダイバーシティ(多様性)社会が実現する日はくるのでしょうか。それは誰かが勝手に実現してくれるものではなく、私たちが声を上げて作っていかなければならないですね。

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