
2/23まで大阪、2/27から福岡で公演「FORTUNE」
劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。
人気アイドルを多数有するジャニーズ事務所が、舞台にも力を入れていることはよく知られています。アイドルとしての立ち位置を全面に押し出した自社プロデュース作品も独自の魅力あるものですが、その枠に収まりきらず、純粋なひとりの舞台俳優として演劇ファンからも強く支持されているのが、V6の森田剛。
森田剛は故蜷川幸雄や宮本亜門、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、鄭義信(チョン・ウィシン)など著名な演出家の手掛ける作品の数々に主演しています。その森田の直近の主演舞台が、現在全国公演中の「FORTUNE」です。
森田剛の際立つ存在感
「FORTUNE」は、イギリスを代表する世界的な劇作家サイモン・スティーヴンスの新作で、今公演が世界初演。森田は2014年にも、スティーヴンスのローレンス・オリヴィエ賞受賞作「夜中に犬に起こった奇妙な事件」で主演を務めています。演出のイギリス・グローブ座の準芸術監督ショーン・ホームズはこれが日本での初演出で、演劇界では大きなトピックである話題作です。
悪魔と契約し魂を売り渡して欲望をかなえるゲーテの「ファウスト」を、現代のロンドンに置き換えた物語。森田演じる気鋭の映画監督フォーチュン・ジョージは、幼いころに自分と母を捨て去っていった父親の死がトラウマになり、成功を手にしながらも、精神のアンバランスさを抱えています。
売り込みにやってきた若手プロデューサー、マギー・マーロウ(吉岡里帆)に好意を覚えるも、すでに結婚しており自分の仕事ぶりにもプライドを持っている彼女はフォーチュンの思いを拒否。心の喪失感を埋められないフォーチュンは、バーで出会った謎めいた女性ルーシー(田畑智子)と、自身の魂を引き換えに12年のあいだ何もかもが思い通りになるという契約をかわしてしまいます。
舞台上には大掛かりなセットがなく、端にダイエットコーラがつめこまれた小さな冷蔵庫があるのみ。空虚なはずの空間は、森田の存在感で埋め尽くされていました。