特集「表現と自由」~わかりやすい答えのない「表現の自由」の出発点として~

文=住本麻子、カネコアキラ
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 「あいちトリエンナーレ」における「表現の不自由展・その後」にまつわる一連の出来事をはじめ、日本赤十字社の献血を呼びかけるポスターへの批判、あるいはヘイトスピーチなど、2019年はこれまでも繰り返し話題となってきた「表現の自由」が特に注目された年だった。

 ネット社会ではめまぐるしく様々な「問題」が噴出し、誰もがその「問題」について語ることができる。しかしわたしたちはそれらひとつひとつについて、どれだけねばり強く思考できているだろうか?

 そんな自問自答のような疑問からはじまったこのいちウェブメディアの企画は、「あいちトリエンナーレ」に端を発した「表現の自由」にまつわる議論の中では後発となったかに見えたとして、図々しくも出発点たらんとすることを目指している。

 「表現の自由」と一口に言ったところで、その言葉はあまりに抽象的だ。問題はいつも具体的なかたちで現れる。法律の問題として、芸術の問題として、フェミニズムの問題として、インターネットの問題として、お金の問題として……それらが組み合わさった複合的な問題として。

 一口に語れないものを無理にひとつにすることはしない。「表現の自由とは何か」という問いに対する答えはいつもひとつではないからだ。わたしたちが用意した4つのインタビュー・対談記事はそれぞれに「一例」である。

 「表現の自由」について探りだせば、おのずと「表現」と「自由」についての根本的な問いへと行きつく。「表現」とは? 「自由」とは?――プリミティブな問いがどれだけ実社会とかけ離れているように思えようとも、遠回りしなければならない。あなたが急ぐなら、なおさら。ときに手を取りあい、ときに対立し、ときにすれ違う「表現」と「自由」について、新たな相貌が見えたとき、はじめてわたしたちの思考がはじまる。
(企画/住本麻子・カネコアキラ)

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性表現の規制をフェミニストは求めていない 堀あきこさんインタビュー
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