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しつけで叩くのは逆効果 叩かない子育ての方法と子どもに与える影響

文=中崎亜衣
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「GettyImages」より

 親による体罰禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法の施行が、いよいよ4月に迫っている。昨年12月3日に開催された「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」で厚生労働省は、親のどのような行為が「体罰」になるのかを示すガイドライン案をまとめた。

 その後、パブリックコメントが実施されたが(1月18日締め切り)その時に提示されたガイドラインによれば、たとえば、以下の行動も体罰にあたる。

  • ・言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
  • ・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
  • ・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
  • ・他人のものを取ったので、罰としてお尻を叩いた
  • ・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった

 しかし、「そんなことも体罰になるの?」と戸惑いをみせる親も多い。「体で教えることも必要だ」「叩いちゃだめなら、どうやってしつけをすればいいの?」といった声が後を絶たない。

 現在、子育中の親自身も叩かれたり怒鳴られたりして育った人は少なくないだろう。「叩かない子育て」の方法がわからないというのも無理はなく、こういった声に寄り添い、別の方法を提示していかない限り、体罰の問題は解消されないのではなかろうか。

 そこで、体罰の危険性や、子どもを叩く・怒鳴ることなく育てるためにはどうすればよいのか、保育士や幼稚園教諭の資格を持ち、かねてから「子育てに体罰は必要ない」と提唱、今回の厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」の委員であり、ガイドライン案にも意見を出している高祖常子さんに、話を伺った。

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高祖常子・認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事/子育てアドバイザー
リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわり、妊娠・出産を機にフリーに。2005年に育児情報誌miku編集長に就任、現在は育児情報誌「ninaruマガジン」エグゼクティブアドバイザー。NPO法人子どもすこやかサポートネット副代表理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事マザーリングプロジェクトリーダーほか各種NPOの理事、足立区男女共同参画推進委員などを務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。著書は『こんなときどうしたらいいの?感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。 

体罰で子どもが学ぶのは「恐怖」

――親の体罰が2020年4月から法律で禁止されますが、「子どもは叩かないとわからない」と体罰を肯定する意見も根強くあります。

高祖:体で教えるべきだと、体罰を肯定する親御さんは少なくないですよね。しかし、子どものしつけに、”叩く”や“罰を与える”という選択肢を持つことをやめようということです。

――なぜ断言できるのでしょうか。

高祖:体罰は様々な危険をはらんでいるからです。

子どもが“困った行動”をしている時、親が叩いたり怒鳴ったりすれば、子どもの“困った行動”は瞬時に止まります。しかしそれは、“怖い”から止まっただけ。根本的なことは解決していないということです。

子ども側からしてみると、「怒鳴られて怖かった」から、「叩かれて痛かった」から、その行動を止めただけ。「どうしたらいいのか」を考えたり学んでいないということです。

“怖かった”“痛かった”という記憶はとても残りやすく、「子どもの頃に叩かれて怖かったのは憶えているけど、その時何が悪かったのか憶えていない」という大人の方もいますね。

――子どもには叩かれて怖かったという記憶だけが残り、何が悪かったのかまでは伝わらないということですね。

高祖:かなりの場合、そうですね。スポーツの指導者による体罰にもいえることですが、殴られることによってプレイが上手くなるわけではありません。ミスして殴られたら、殴られないようには頑張りますが、ミスしないようにビクビクしながらでは、のびのびと実力を発揮するプレイはできないでしょう。

また、片付けをしないことを理由に子どもを叩いたとします。子どもは怒られたからその時は片付けるかもしれませんが、冷静に考えてみると、「叩く」ことと「片付けができる」ことに関連性はありません。体罰に片づけを上手にする機能はありませんよね。

もちろん、子どもが良くないことをしていたら親は「やめなさい」「ダメだよ」と叱る(行動を止める)ことは必要です。しかし、叱ることと、叩く・怒鳴ることは別のことです。

――根本的な解決にはならないということ以外にも、体罰はどのような危険性があるのでしょうか。

高祖:子どもを叩くことが日常的になると、体罰がエスカレートしていく危険性もあります。子ども自身は何も学んでいませんから、また同じような行動をします。親によっては「昨日叩かれたのに懲りていない」「私の叩き方が弱かったから効き目がないのか」と思い、ますます子どもを叩くようになる可能性があります。

また、中には「年に数回しか叩いていないから大丈夫だろう」と考えている人もいますが、叩いた時の反動で子どもがどこかに頭をぶつけて怪我をする可能性だってあります。

昨年の初めに大阪で「片づけをしない」という理由で親が2歳の子どもをベランダに締め出した結果、子どもが転落するという事故もありました。思いもよらない事故につながることもあることを知っておきましょう。

――長期体罰によって子どもの脳が変形するという研究結果(福井大学友田明美先生による)も発表されており、「叩く」「怒鳴る」といった行為は、子どもの健全な成長にも影響を与えることがわかっていますよね。

高祖:はい、研究結果によると、体罰は感情や思考をコントロールしたり意思決定する前頭前野を萎縮させるということがわかっています。

また、親に叩かれると、やがて子どもは叩かれないよう親の顔色を伺いながら行動するようになります。体罰は、子どもに自分で考えて行動する機会を奪う行為です。

さらに、叩かれた子ども自身も“暴力”を学んでしまうことも危惧されます。親が「言うことを聞かなかったら叩く」というスタンスだと、子ども同士の間でも「あいつは俺たちの言うこと聞かないから」と手を上げるようになる可能性もあります。

――親の体罰禁止の話になると、子どもが命に関わるような危険な行為をした際に怒鳴って子どもの身体を叩くこともダメなのかという極端な議論が必ず起こります。昨年Twitterで、「道路に飛び出した子どもを母親がビンタして抱きしめる……」という動画が拡散された際も、意見が分かれました。

高祖:飛び出した子どもを「危ない!!」と制止することは子どもの命を守る行為です。でも、その後に叩いたり、怒鳴りつけるのは子どもの命を守る行為ではないですよね。

親御さんもビックリしてつい叩いてしまったのかもしれませんが、叩く必要はありません。

この場合の具体的な対応としては、たとえば、「この道は車が多くて危ないから、これからは絶対に手をつないで歩いてね」と約束したり、次にその道を歩くときは「この道ではどうするんだっけ?」「手をつなぐ」「そうだよね、危ないから手をつなごうね」と、コミュニケーションを取るなどの方法があるでしょう。なぜそれが危ないのか、どうしたら回避できるのかを、子どもと相談しながら習慣化していかれるといいですね。

「叩かない子育て」は、子どもの気持ちや意見を聞くことから

――体罰はダメだと理解しながらも、それ以外のしつけ方がわからないという声も散見されます。暴力を用いずに子どもにわかってもらうためには、親はどのような工夫をすればいいでしょうか?

高祖:まずは、「叩かない・怒鳴らない」と決めることが大事です。体罰という選択肢を持たないということです。

子どもが親の言うことを聞いてくれない時、たとえば「ごはんを食べてほしいのにテレビばかり見ている」「片付けて欲しいのに、いつまでもおもちゃを片付けない」など、自分の気持ちと子どもの行動の間にズレが生じてイラっとする。私も子どもを3人育ててきましたので、その気持ちは十分にわかります。

でも、子どもが親の言うことを聞かないのには、何かしらの理由や背景があります。ですから、まずは、子どもの気持ちに寄り添ったり、子どもがなぜそのようにするのかを聞いてみるところから、解決の糸口を見つけていけばいいのではないでしょうか。

――具体的には、どのように子どもに話しかければよいのでしょうか

高祖:片付けて欲しい場合には、「おもちゃで遊ぶの、おもしろいよね」などと子どもの気持ちを受け止めてから、「でも、食べ終わらないと寝る時間遅くなっちゃうよ」とこちらの要望を伝えてみる。そして、「どうしたらいいかな?」と相談するということです。

子どもがおもちゃを片付けたくない理由が「あと少しで完成するから」だったら、親の時間や気持ちに余裕がある時は「じゃあちょっと待ってるね。完成したら食べよう」と言ってもいいし、夜遅くて忙しい時は「でもね、もう時間が遅いよ。これは壊さないでこのまま飾っておいて、明日帰ってきたらまた続きをやろうか」などと相談したり、解決方法を提示してみるという方法もあるでしょう。

子どもの気持ちを聞いて受け止め尊重し、親の気持ちを整理して伝え、そして相談して折り合いをつける。その方が子どもも、「自分の気持ちを大事にされた」と感じ、その次の行動に移りやすくなります。

親が「ダメ! 片付けなさい!!」と子どもの気持ちを受け止めず怒鳴りつけては、子どもは気持ちを大事にされず、次の行動を要求されるので、「嫌だ!!」と反発したり、気持ちの切り替えができず大騒ぎして収拾がつかなくなる可能性もあります。そうすると、親も余計にイライラして疲れますよね。

――言葉を使い、お互いにコミュニケーションをとって折り合いをつけるというわけですね。

高祖:先ほど、親が体罰をしていると叩かれた子どもも暴力を学んでしまう可能性があると話しましたが、逆に、親子の間で言葉によって困りごとを解決していると、子どももコミュニケーションで解決することを学んでくれます。

――ただ、親に余裕がない場合どうしてもイライラして、「叩きそう」「怒鳴りそう」になることもあると思います。

高祖:そうなんです。余裕がないとイライラしますし、イライラしないのは無理ですよね。疲れている、混んでいる、時間がないなど、自分にとって不快な状態にあると人間は誰しもがイライラするわけです。

アンガーマネジメント(怒りの感情をコントロールするスキル)では、イライラした時やカーッとなった時の怒りのピークは6秒だと言われています。この6秒間、クールダウンをすることによって怒りの気持ちが落ち着いてくると言われています。

ですから、イライラの爆発が「来たな!」と思った時に、深呼吸をする、ゆっくり数を数える、顔を洗う、好きな音楽をかけるなど、自分ですぐに実践できるようなクールダウンの方法を持っておくと良いですね。

家の中なら、(子どもが安全な場所にいれば)少しだけ子どものそばから離れる方法もあります。私の場合、3人の子どもたちがケンカを始めるなどした時は「お母さんイライラしてるからトイレ行ってきます!」と宣言し、クールダウンをしたこともありました(笑)。

――子どもに対峙する親のアンガーマネジメントが重要ということですね。

高祖:あとは、自分がどういう時にイライラしやすいのかを客観的に知ることです。朝が苦手でイライラしやすいのであれば、朝の時間にあまり予定を詰め込まず、夜できることは夜に回してみる。疲れやイライラが溜まらないよう工夫をして、自分の沸点を下げておくことも必要です。

ただ、そうは言っても、日本の場合、母親に育児・家事が偏っているというのが現状です。丁寧な暮らしは大事ですが、食事は手作りが好ましいなど、「~ねばならない」の縛りも強い。国外を見渡してみると、食事は外食が基本だったり、冷凍食品をチンするだけや、朝はシリアルやバナナで十分といった国もありますよね。

「~ねばならない」が多くあるほど、親のイライラは増えます。たとえば、忙しいながらも手の込んだ夕食を作れば、時間もかかって疲れるし、子どもには「おいしいね!」と言って食べてもらいたくなります。ところが、子どもが食事を残したりテレビに夢中になってろくに食べなかったりすると、「一生懸命作ったのに何で!」と怒鳴りつけたくもなる。

子どもとご機嫌に過ごす、家族の時間を楽しくするためにも、可能な範囲で「手抜き」してもいいと思います。食器洗い機などの便利家電を使う、市販のお惣菜を使う、冷凍食品を使う、保育園の送りはファミリーサポートさんにお願いする。一時預かりを利用したり、祖父母に子どもを見てもらうなどして、自分だけの時間を持つことも有効的です。

ただし自分がこだわりっている部分を手抜きすると余計ストレスがたまるので、譲れないことは手抜きせず、可能なことを手抜きすることが大切です。

自分の負担を少し減らして疲れやイライラを回避したり、ゆとりの時間を作っておく。そうすると子どもと向き合う心の余裕が生まれるでしょう。それが結果的に、「親の体罰をなくす」ことに繋がっていくのだと思います。

「家族だから言わなくても伝わる」わけではない

――もし感情をコントロールできず子どもを「叩いてしまった」「怒鳴ってしまった」時は、子どもに対してどのようなフォローをすればよいのでしょうか?

高祖:叩かないと決めていても、イライラしてつい手をあげてしまったということがあるかもしれません。私の講座に来てくれたお母さんで、「叩かないと決めたのに叩いてしまった」と涙ながらに話してくださる方もいました。

もし叩いてしまった時は、「さっきは叩いてごめんね。でもママはもう叩かないと決めたからね」と子どもに伝えましょう。そうすると、「また叩かれるかもしれない」という恐怖を持つこともなく、子どもも安心するでしょう。親がイライラしている時には、子どもから「深呼吸だよ」と声をかけてくれることもあるかもしれません。

親だって子どもに「ごめんね」と素直に謝っていいんです。

――自分が悪かった時には謝ったり、「ありがとう」って感謝したり。当たり前のことですが、家族だからこそ難しいこともありますよね。

高祖:そうですね。「家族なんだから、わざわざ口に出して言う必要はない」と思う方もいるかもしれませんが、家の中で「ありがとう」「ごめんね」という言葉があるからこそ、子どもは友達同士や社会の中で、感謝したり謝ったりする言葉をつかえるようになるのではないでしょうか。

――家族内でのコミュニケーションというと、母親の負担を減らすためには、夫婦で家事育児を分担することも重要だと思います。しかし、夫婦間での言葉によるコミュニケーションがうまくいっていない場合もある気がします。

高祖:日本の場合、友達・恋人時代にはたくさん会話をしていたのに、夫婦になり、家族になると会話が減る傾向にありますよね。でも、親子や夫婦であっても“別々の人間”。家族なんだからと「阿吽(あうん)の呼吸」や「察する」のは無理な話です。

パートナーに対して不満があれば、言葉でコミュニケーションを取りましょう。伝える時も、子どもへの態度と同じですが、「何で気づかないの」「普通やるでしょ」と一方的に怒りをぶつけるのではなく、「私は毎朝こんな状況で、とても忙しい。だから子どもの着替えをやってくれると助かる」と、何に困っていて、何をやって欲しいのかを具体的に伝えることが大事です。気持ちを伝えて問題点を共有することで、一緒に解決策を相談することができます。

あるいは、やらなければいけないことをリストアップし、「どれならできる?」と相手に選んでもらうのもいいと思います。これは選択欲求ともいいます。「○○をやって欲しい」と言われるよりも、「○○と△△、どっちをする?」と言った方が、相手が選択権を持って選んでくれるということです。

――他方で、どうやっても夫とわかりあえず、夫の協力を諦めることでストレスが減ったという女性の声も少なくありません。

高祖:確かにそれもまた、ひとつのストレス回避方法ではありますね(苦笑)。やってくれないことにイライラするよりは、「どうせやらないんだし」と考えてパートナーに期待しない方が、イライラしなくなるかもしれません。

でも、お互いの困りごとを共有せず、コミュニケーションを諦めてしまうと、心の溝ができてしまいます。そんな関係で、夫婦や家族が楽しいか、心地いいかということです。家族それぞれがやりたいことや目標などもあるでしょう。ママが「こんな資格を取りたい。土曜日に半日スクーリングがあるんだけど」などと伝えたら、「勉強応援するよ。その時間は任せておいて」などとお互いに応援していける関係になったほうが、家庭内の風通しが良くなり、家族でいることが楽しくなりませんか。

物事への感じ方やこだわりは、親子間でも夫婦間でも違うもの。イライラすることもありますが、言葉でのコミュニケーションでお互いの意見を共有し、相談し折り合いをつけながら解決することで、家族の時間を楽しくすることができるのではないでしょうか。そんな家族、親子関係なら、叩いたり、怒鳴る子育ては不要になりますね。

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