バカ・ブス・貧乏な「普通の女子」が人生をサバイブする方法~つまり「普通の女子」が災難を逃れて朗らかに生きるには?

文=原宿なつき
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「Getty Images」より

「普通の女子」向けサバイバル本

 『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』(ベストセラーズ・藤森かよこ著)。これは著者・藤森さんいわく、この本は「自分みたいなバカ・ブス・貧乏な低スペック女子向けに書かれた本」だということです。

 でも藤森さんは福山市立大学名誉教授。大学教授なのに「バカ」?「貧乏」? じゃあ自分は一体なんなの? 反射的にそう思う女性もいらっしゃるかもしれませんが、本書のまえがきに書かれているバカ・ブス・貧乏とはこういうことです。

【バカ】
一を聞いて一を知るのが精一杯。学校の勉強もできなかったし、地頭がいいわけでもない。

【ブス】
顔やスタイルで食っていけない。繁華街を歩いていてスカウトされたことがない。

【貧乏】
賃金労働をしなければ食べていけないし、大不況や預金封鎖などの社会的経済的大変動があれば、すぐに食い詰める。

 どうでしょう? この定義であれば、当てはまる人は多いのではないでしょうか。もちろん私も当てはまります。とどのつまり、「特別な才能があるわけではない普通の女性」のことです。

 藤森さんは現在66歳。私の母親に近い年齢ですが、その自己紹介を読めば娘世代の読者も共感することは間違いありません。“名誉教授”という肩書から連想するバリキャリなイメージとは全然違います。いわく、根が怠惰なので一生懸命働きたいわけではないが、玉の輿に乗る器量はないし、かといって清貧にも忍耐にも興味がなく、自分の食い扶持は自分で稼ぐしかないからなんとか男女同一労働同一賃金の職種に滑り込んだ……ああ、志とか目標とか理想のワタシとか自分探しとか全部ここにはなくて、爽快です。

 同じくまえがきに、<無理しないで自然に「ありのままに」生きていけばいい? 「ありのままに」生きていたら、本書の著者はただの廃人だ。>とあります。残念ながら「普通の(低スペックな)女性」がのほほんと生きていると様々な災難が降りかかります。現実を見据えてサバイブしようにも、バカなので「現実を見据える」ことがまず出来ない。さてどうすればいいのでしょう? 読みましょう、この本を。

読者にとって「都合の悪い真実」

 本書の語り口は表面上かなり辛辣で、「あなたはブスなので…」「貧乏だから…」「あなたはバカだから…」といった言葉が頻繁に出てきます。ですが、読者をバカにしているわけではありません。敢えてオブラートに包まず“現実”を提示しています。

 実は私は、中学生の頃からかなりの自己啓発書好きでして、様々な自己啓発書を読んできました。読みすぎて、「自己啓発書を読んではいけない」という自己啓発書まで読む始末……。さすがに胸焼けを起こしそうになったころ、ようやく「読者のテンションだけ上げて、いい気分にさせるだけで、なにひとつ実になることが書かれていない自己啓発書が多すぎる」と気づきました。

 『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』は違います。人生は自分の考えた通りになるとか、いい気分でいればいい現実が引き寄せられるとか、宇宙はあなたの味方だ、といったぬるいこと・耳障りがいいこと・都合がいいことは何一つ書かれていません。

 代わりに、「知りたくなかった都合の悪い事実」がこれでもかと書かれています。たとえばこういうこと。

 人生は厳しい。コツコツと地味な労働を続けていく必要がある。女性が年収500万円を死ぬまでキープし続けるのは困難(有名私大を卒業した女性であっても)。性被害に遭う可能性もある。ルックスで損をすることもある。身も蓋もない現実を、軽快な語り口で次々と突きつけてきます。強姦被害に遭った場合の対処法も現実的でした。

<ほかの業界と同じく、法曹界も男性中心だから、女性の状況への想像力はない。法律は、あなたの味方をしてくれない>(P87)

<強姦された場合は、すぐに警察に行くこと。次に七二時間以内に産婦人科クリニックに行き緊急避妊用ピル(アフターピル)の処方を依頼しよう。これは金額で六五〇〇円から一万五千円くらいまである。副作用はほとんどない。いいですか、七二時間以内です。たらたらしていてはいけない。強姦後の緊急避妊薬投薬には公費援助もあるが、警察に申請しないと援助金は出ない。産婦人科医には強姦された旨の診断書も書いてもらおう。警察に訴える場合に必要になる。>(P91)

 強姦された場合の対処法を、教えてくれる先生は学校にいませんでした。大人になってから、「そういうときはまず病院に行くべきなのか」と知りましたが、自分で調べないとわからないことです。でもこういうことこそ、若いうちから知っておくべきですよね。

学校では教えてくれないサバイブ術

 本書は、耳が痛くなることばかり書かれています。読んで気分が高揚することもありません。ただ淡々と、「地に足をつけて生きること、学び続けることの大切さ」が書かれています。内容が内容ですから、かっちりした文章で書かれていたら、読む人はとても疲れているでしょう。そのための、ブス・バカ、貧乏をはじめとする辛辣なワードを用いての、軽快なタッチが必要だったのかもしれません。

 藤森さんの個人的信条に基づいて書かれているわけですから、「それは違うでしょ」と思う箇所も私にはありました。ですがまた、私が「正しい」わけでもありません。理想論に頼らないこの本を多くの女性、特に若い人に読んで欲しいと思います。

 『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』は、その実、『普通の女の子がこの世界でサバイブしていくために私が必要だと思うことを、愛をこめて書いたので読んでください。』という意味ではないでしょうか。

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