同性婚は「自尊心」をめぐる問題でもある/七崎良輔さんインタビュー

文=編集部
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七崎良輔氏

 1月30日の参院予算委員会で安倍首相は同性婚の議論について<わが国の家族の在り方の根幹にかかわる問題で、極めて慎重な検討を要する><現行憲法では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない>と、改めて後ろ向きな認識を示した。

 その一方、電通が1月に発表した調査結果(20歳〜59歳の6万人を対象に実施)では、同性婚の合法化について「賛成」もしくは「どちらかというと賛成」が78.4%にのぼり、LGBTへの理解は若年層を中心に急速に広がっている状況が改めて浮き彫りとなった。

 LGBTをめぐるトピックでも社会では分断が起きている。そんな時代に私たちはどう生き、お互いの価値観を認め合えばいいのか──。

 LGBT当事者として生きてきた苦しみや葛藤を赤裸々にまとめたエッセイ『僕が夫に出会うまで』(文藝春秋)を出版した七崎良輔氏に話を聞いた。

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七崎良輔
1987年、北海道生まれ。2015年、パートナーシップ契約公正証書を結んだ夫と共に「LGBTコミュニティ江戸川」を立ち上げる。翌年、LGBTのためのウエディングプランニング会社「合同会社Juerias LGBT Wedding」を設立。同年、築地本願寺で史上初めて宗派公認の同性結婚式をあげた。2019年には、東京都江戸川区で「同性パートナーシップ証明制度」が導入され、第一号に。現在も同性婚の法整備を目指して活動を続けている。

──ちょっと前の話になりますが、2019年大晦日の『NHK紅白歌合戦』は、どうご覧になられましたか?

七崎良輔(以下、七崎) 氷川きよしさんと、MISIAさんのところですよね?
 まず、氷川さんは「かっけー!」と思いました。演歌の世界で確立したポジションがありながら、「限界突破」されたのが、本当に格好いいなって。
 その前から色々と話題だったじゃないですか。SNSにアップする写真のメイクやファッションがどんどん綺麗になっていったりして。
 それで今年の『紅白』はどんな感じになるのかなと、楽しみにしていたんです。それが想像以上に良くて、感銘を受けましたね。
 前情報を見ていて、もっとホゲた(編集部注:「女性っぽい」の意)、新宿二丁目のママさんみたいな雰囲気になるのかなと思っていたら、全然違った。
 そういうブリブリな感じじゃなく、本当に「素直で自分らしくなった」というのが分かって。

──ふむふむ。

七崎 わざとホゲてゲイっぽくするのではなく、ありのままの美しさのまま「限界突破」された感じを受けて。本当に格好良かった。

──MISIAさんのステージではLGBTの象徴であるレインボーフラッグが掲げられて話題になりました。

七崎 あれも感動しました! ツイッターとかでは「視聴者のために番組の中でレインボーフラッグの意味を説明するべきだったんじゃないか」という意見も出ていますけど、あれはあれで良いと思うんです。
 というのも、私、高校時代にレインボーパレードを見たことがあるんです。でも、実は、そのときはなにがなんだか、よく分かっていなかった。レインボーが何を意味するのか知らなかったし、そもそも、自分がLGBTに属するのかどうかも、まだ理解できていなかったから。
 ただ、大人になって色々と分かってきたときに、「あのとき見たレインボーはそういうことだったんだ!」って思って、すごく救われたんです。自分が高校生だったあの頃から、LGBTの人たちのために動いている人がいたんだ、ありがたいな、って。

──時間差で感動が押し寄せてきた、と。

七崎 気づくとき、理解できるタイミングって、人それぞれ違うと思うんで。だから、『紅白』という全国放送の番組にレインボーフラッグが出て、多くの人が目にしているという状況が嬉しいなって。
 たとえ今回のMISIAさんのステージの意味が分からなかったとしても、いつか「あのときのMISIAさんのステージってそういうことだったのか!」と気づいて救われる人はいるはずだから。

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ロールモデルがいなかった

──戦ってくれている先人の姿が見えると、人は勇気づけられますよね。七崎さんは少年時代にロールモデルとなるような存在はいたのですか?

七崎 私の場合は、そういった存在を見つけることができなかったんです。大人になったら美輪明宏さんみたいになるのかなって思っていた。超おこがましい話ですけど。

──美輪さんは素敵な方ですけど、生き方の参考にするのにはハードルが高そうです。

七崎 『僕が夫に出会うまで』で自分の人生を赤裸々に書いたのは、私の人生を読んだことで、「こういう人もいるんだ」と、誰かの生きる力になれたらなと思ったからです。
 私自身が思春期に自分のセクシャリティことで悩んでいたとき、こういう本があったら救われたと思うんですよね。良いか悪いかはまた別にして、同じセクシャリティの人間が、どんな人生を生きてきたかを知ることができる本。
 私以外にもたくさんの人がこういう本を出して欲しいです。そうしたらあとは、読んだ人がたくさんの選択肢の中から「自分はこういう人生がいいな」と選んでくれればいい。

──本の中では、クラスメイトから「オカマ」とからかわれていた小学4年生のときに担任の先生からすら「七崎くんはぶりっ子してるから、先生から見ても、『オカマ』に見えるよ」「そのまま大人になっちゃったら大変だよ」と言われたくだりが出てきます。
 ロールモデルとなる存在がいることは、周囲に味方がいないこうした状況下では特に心強い存在になるでしょうね。

七崎 そうですね。それにしても当時を振り返って見て思うのは、ありのままの自分を否定されたくはなかったなって。
 「そのままじゃダメだよ」とか「そのまま大人になったら大変だよ」とか「ぶりっ子しないで男らしくしなさい」という言葉は、子ども心に存在を否定されたように感じました。
 この国の社会には「違い」を否定したがる空気を感じますよね。特に、学校なんて軍隊みたい。ちょっとはみ出た子、異質な子を「普通」にさせたがる。それが私は耐えられなかった。

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同性婚は「自尊心」の問題でもある

──学校から社会に出てからもありますよね。七崎さんは同性婚を求める活動をしていらっしゃいますけれど、この議論がなかなか前に進まないのも、「違い」を否定したがる空気のひとつだと思うのですが。

七崎 同性婚が認められていないことによって私たちに生じる不利益というのは、扶養の問題とか、相続の問題とか、色々とあるんですけど、なによりも大きいのは「社会から疎外されている」という思いを抱いてしまうことだと思います。
 たとえば、もしも自分がセクシャリティのことで悩んでいた幼少期や青春時代に同性婚が認められていて、周囲にゲイやレズビアンのふうふがたくさんいたら、セクシャリティについてそんなに悩まなかったと思う。
 それが認められず、社会から自分たちの存在を「ないもの」にされる。そのことがマインド的にはとても大きいということを皆さんには分かってもらいたいです。

──同性婚に関する議論は、大人たちだけの問題ではなく、未来の世代・子どもたちの「自尊心」の問題でもある。

七崎 「ゲイなのに結婚したいなんて、ワガママなんじゃないかな」と思ってしまっていた時期もあったんですけど、そもそも「好きな人ができて結婚すること」って特別なことではないですよね。
 それを国が「男と女だけ」としているのは変なことだと思います。平等にしてもらいたい。
 私は婚姻制度が完璧なものとは思っていないけれども、2015年に夫夫で江戸川区役所に婚姻届を提出して、それが不受理になって戻ってきたときに「自分は結婚することすら認められない存在なんだ」と感じた。私と同じような経験から、自己肯定感を傷つけられてしまっている人がたくさんいる。

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クリスマスパーティーに「理想的な社会」のヒントがあった

──七崎さんが訴えていることはなにも特別なことではないですよね。なんらかの優遇措置を求めているわけでもなんでもなく、ただ「異性愛者と同じように結婚させてほしい」という、それだけです。

七崎 話が飛んじゃうかもしれないですけど、去年のクリスマス、隣のおうちでパーティーをしたんです。それがとても面白くて。
 隣のおうちは日本人と中国人の夫婦。あと、同じマンションにインド系の家族や在日韓国人の方がいるんですけど、その人たちも参加していて。

──いろんなアイデンティティーが混ざっている。

七崎 宗教もバラバラ。韓国の人はクリスチャンで、お隣さんは神道、私たちは仏教で、インド人家族はヒンドゥー教でベジタリアン。
 でも、お互いに違いはなんとも思わないっていうか。お肉が並んでいたからインド人家族は子どもに肉を食べさせないようにしていたけれど、私たちは気にせず肉をテーブルに並べるし。

──いい意味でお互いに干渉しない。みんながそれぞれの「違い」を尊重し合うということですね。

七崎 そう。そんななかに私たちもゲイ同士の夫夫として普通にいるし。こういった社会って素敵だな、社会全体が今日のクリスマスパーティーのようであったらな、って思ったんです。
 「干渉しない」って言うと冷たく感じますけどね。でも、たとえ、善かれと思って「それは違うよ」と言ったのだとしても、その正義感が人を苦しめることもある。
 もちろん自分も間違ってそういうことを言ってしまうことはあります。そういうときはきちんと謝って、このクリスマスパーティーのような世の中をつくっていきたいなって思いますね。

(取材、構成:編集部
 撮影:細谷聡)

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